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日テレドラマ「レッドアイズ」に見るキャンセルカルチャーの行方

この記事は
①レッドアイズの個人的な感想
②タイトル通りレッドアイズを通してみる現代社会の話
の二本立てとなっております。

日テレドラマ「レッドアイズ 監視捜査班」について

愛する人の命を奪われた元刑事×天才的な頭脳を持った元犯罪者たちが、国内に500万台あるといわれる監視カメラを駆使した科学捜査によって、凶悪な連続殺人鬼に迫る。スリリングなサイバークライムサスペンス!

レッドアイズ 監視捜査班 日本テレビ公式ウェブサイトより

このあらすじと、主演がKAT-TUNの亀梨和也さんということもあって
「ははーん、これは内部に裏切り者がいて実はそいつがラスボスのパターンのやつだな?」
「トンチキアクションドラマだな?怪盗山猫のように!」
という明後日の方向の期待を持って見始めてしまったので、結果的に思ったよりスタイリッシュでマイルドでストレスフリーな物語構成だったのが、個人的にはちょっと物足りなかったです。
黒幕は視聴者からしたらほとんど面識なく思い入れのない状態での登場だったし、内通者もなんかこう、いてもいなくても大差ないような雰囲気だったのが、もっとアンコントローラブルな球が来ると勝手に思い込んでいた身にとってはちょっと薄味に感じられたといいますか……それはターゲット層が広いということで、別に悪いことではないんですが。

レッドアイズに見るキャンセルカルチャーの行方、或いはSNSが生んだ報復社会

面白かったのは悪役の特徴的な台詞である。

「もっと自分の感情に正直になったほうがいい」
「自分の感情を開放するのです」

これらをモットーとして、カウンセラー鳥羽率いる矢印一派は次々と人を殺すわ、テロを起こすわ、やりたい放題やっていくのである。
また、鳥羽は自分の復讐を終え「とっくに恨みは消えた」と言いながら、その後も蠣崎をはじめとする「救われない人たち」に手を差し伸べてはその心を救い、報復殺人へと導いている。

以上の描写から、レッドアイズは復讐劇における定番の「復讐は許されるべきなのか(べきではない)」というメッセージ性と一線を画す作品ではないかと思った。
すなわち、「自分の感情に正直になるべきだ」という鳥羽の思想が先にあり、その思想に基づいて他者が行動した結果が報復殺人として立ち現れるのである。

最近もまったく同じ光景を目にしたばかりである。
ある思想によって市民を煽動する行為というのは現代社会において絶えず繰り返されている「炎上」そのものだ。
そして炎上の果てにあるキャンセルカルチャーこそ、まさに報復殺人と同様に立ち現れる実害なのである。
もちろんキャンセルカルチャーだけではないのだが、本稿執筆の数日前に大河ドラマの考証スタッフから降板する羽目になった事案が筆者の念頭にあった。

大河考証降板事案をはじめ、行くところまで行きついてしまったキャンセルカルチャーは現代日本ネット社会における転換点になっていくと思う。
そのタイミングでレッドアイズという「思想による煽動行為と、個人はどう戦っていくのか」というメッセージ性の強いドラマが放送されたことは偶然ではないだろう。

そう考えると、このドラマがKSBCという情報技術を利用した科学捜査班の物語であったことにも合点がいく。
現代社会において、私たちは個人でありながら、ほとんど常に誰かとSNSを介して繋がっている。あなたが常に誰かを見ているということは、常に誰かがあなたを見ているということだ。

作中では殺人犯の面々が鳥羽の思想によって救われたと語る描写が何度も出てくる。
考え方を変えること、思想を知ることはその通り人を救うこともある。
しかしそれはただひとつの正義ではまったくないし、人を傷つける免罪符になど到底ならない。

どんなに苦しくても、どんなに残酷な世界でも、私たちは踏みとどまらなきゃいけない

私たちはどこまで「自分を見失わないで」いられるのだろうか。
SNSが身近にしてしまった、相互監視と報復がデフォルトの社会において。

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