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短歌

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「滄」同人季刊誌用短歌
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2020年7月の記事一覧

ホロコースト生き抜きし人の前腕に刻まれてをり囚人番号

我の今なりたき物はモビールの如くにただ風受くる物

紺色は黒に近いか青なるか夫と語りつサンマ汁食ぶ

雨音のうらに鳥の鳴き声のなければいちにち雨と知りたり

ぽっぽっぽー、はとぽっぽー
学童ら三人(みたり)歌ひすぐ
団地バス停雨上がりたり

彼方より近づく者あり目を凝らす
五歳の我がぬいぐるみ持つ

ホオズキを腕いっぱいに抱へゐてベトナムの人通り過ぎゆく

* 赤坂二丁目辺りのこと。あれは明らかにお花の稽古の帰りの女性だった。ベトナムの方だ。ベトナムの方がお花をされるのが嬉しい。

エレベーター籠の降りたるその合間隣屋に聞く猫逝きしこと

かつきりとした居場所など無きが良し犬ひたすらに我を慕ふ日

ドルビーに雀(すずめ)鶯(うぐいす)聴こへくる児童公園三丁目かな

* 「かな」= 「です」(古語)
* ドルビーって言うと「両方から聴こえる」「ステレオ」です

坂を降り坂を登りてトマト食(た)ぶことを語れり夫(つま)との散歩

石川島播磨の会社に勤めたし「わじま」「はりま」の韻の良ければ