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『海の向こうでこんなこと言われた』#2

「I'm just a fan today.」

その『NINAGAWAマクベス』。
初日の夜は来客が多くて気が付かなかったが、2日目、3日目共に楽屋口の外で我々の楽屋入りを出迎え、終演後はバスが出るまで手を振り見送ってくれる婦人がいた。

2日目、帰りのバスの窓からその人を見て誰かが

「あれ、ヴァネッサ・レッドグレイヴじゃないか⁉️」

「んなわけないだろう」と誰もが思った。
英国演劇界の重鎮中の重鎮・ヴァネッサが
楽屋口に「立って」待っている筈がないじゃないか!

3日目、楽屋入りの時にも彼女はいた。
ナショナルシアターの楽屋受付の男性が外に出てきて彼女と何か話している。歩速を緩めて聴き耳を立てる。

「そんなところに立っていないで、中に入って下さいよマダム。楽屋へご案内して皆さんに紹介しますから」

『いいえ、私、今日はファンの一人だから』

そう言いながらも我々ににこやかに会釈。間近に見てハッキリした。
ヴァネッサ・レッドグレイヴその人だった!

昔「トロイアの女」と言う映画であまりの迫真の演技にのけ反ったあのヴァネッサが、3日続けて我々の芝居を観て、その上、入り待ち・出待ち!?

後で聞いた話だが、『NINAGAWAマクベス』初日を観て彼女は全ての友達に「観に行きなさい‼️」と電話をかけまくったそうな。

のちに縁が繋がったらしく、2年後の『近松心中物語』ヨーロッパ公演の時には、各幕冒頭に芝居のあらすじを解説する英語ナレーションを彼女が担当してくれた。落ち着いてしかも抑揚に富んだ素晴らしい語りだった。

ヴァネッサ・レッドグレイヴ出演のおすすめ映画

「もうひとりのシェイクスピア」
エリザベス1世(女王)役で出演
ちなみに、若い頃のエリザベスを演じたのは、
実娘のジョエリー・リチャードソン

Wikipedia

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