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季節を纏うように生きる

外の景色は、身に纏う色を確かに少しずつ変化させている。


規律正しく並んだ向日葵が重そうな頭を垂らし、右へ左へと風に揺られる季節だ。

目には少し痛いくらいの眩しい黄色が、ビルやマンションやらで殺風景な視界に華やかな彩りを加える。

田んぼには、稲の苗が植えられ、毎日着実に、空に向かってぐんぐんと伸びてゆく。

春頃には一斉に刈り取られ、茶色の地肌が見えていたのに、今では一面に緑の絨毯が敷かれている。

太陽の光に当てられ、艶やかな緑が風になびくと馬のたてがみのようだ。荒れた海原のようにも見える。

春には薄桃色の花を腕いっぱいに咲かせていた桜の木も、今では緑の葉をたわわにつけて、他の木々に紛れるようにして、ひっそりとたたずんでいる。

風は、そんな夏の匂いを運んでくる。

空気の温度は、風の匂いは、どこからやってくるのだろう。

きっと、たくさんの生き物の囁きやため息、そして笑い声を、少しずつ集めてやってくるに違いない。

だから毎日、違う匂いがするのだろう。私は、夏を愛している。


夏が仮に暴走して、春や秋を傷つけてしてしまったとしても。

目立ちたがりな夏が、桜の咲く時期をいたずらに変え、トンボが空を舞う時期を少しばかりいじってしまったとしても。

私はその中に春を見つけ、またある時は秋を見つけ、冬には夏をほんの少し恋しがりながら生きていきたいと思う。

四季のなかで、私も四季を身に纏うように生きていきたいと思う。

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