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5年目の”別れた日”

バレンタインの日に彼女と久しぶりに会った。

受験もひと段落して、やっと幸せなキャンパスライフと二人の時間を過ごせると思っていた。

先に受験を終えた彼女は、既に髪を茶髪に染めていて、東京へ物件探しに行ってきた直後だったらしい。

手作りのクッキーとお土産をもらった。

地元の小さなレストランで食事をして、卒業旅行の予定を立てようと思っていた。

食事が運ばれてきて、いただきますとご飯を口に入れようと思ったけど、

先に口を開いたのは彼女だった。

そういえば、今日の彼女はなんだか冴えない顔をしていて口数も少なかった。

嫌な予感がした。

その言葉を聴いたら目の前の彼女はいなくなって、これまでとこれからの幸せは全てなくなってしまうと思った。

でもそんなことには誰にも同情をされず、彼女は言葉を発した。

”わ”

”ブーッ ブーッ ブーッ ブーッ ブーッ ブーッ ブーッ ブーッ”

彼女が言葉を発した瞬間、空から突然一定間隔の音が鳴り出した。

すごく不快で、脳みそが弾けてしまうような煩さと振動を兼ね備えていた。

突然、目の前も真っ暗になった。

そこでやっとこの不快音が”現実の音”だと気づく。

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着信音の先は大学の同期だった。

まだ外は明るくて、どうやら向暑はるは昼寝をしていたらしい。

今この音の先に繋ぐのはやめて、後でごめん気づかなかったと言い訳でもしようかと思ったけど、

その手段はこの間使ってしまったので、他に言い訳も見つからずに仕方なく出ることにした。

”いまひまー?”

ひまー。

”ドライブいこー”

いいよー。

”向かうねー”

はーい。

寝起きで頭も働かないし、とりあえず彼の意思に従おうと思った。

この瞬間、今年の”別れた日”は友達とドライブをすることが決まった。

もう5年前のことなのに、今でもこの日になるとあの時の言葉を思い出す。

夢の中でも思い出してしまうくらいには、まだあの言葉に呪われ続けているらしい。

この世界線の住人じゃなければまだ付き合ってるのだろうか。

今は何をしているのか知らないし、きっとどこかで幸せになっているはずである。

それならそれでいい気もする。

そんなこと考えていたら、彼が迎えにきた。

ドライブと一緒に、この呪いも一緒に連れ出してほしいと願った。


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