春跳詠蘭

小説を書きます。

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  • 一次創作

  • 臆病者がひとりごちる

    臆病者めの大きなひとりごと。すべてひとごと。みてくださった方、ありがとうございます。

  • 一次創作 三題噺

最近の記事

過去に生きる男

 ある男は、ひどく打ちひしがれていました。それはもうけちょんけちょんに、いや、けちょんけちょんはなにか明るく跳ねるような語感がありますのでこの男にふさわしくありません。けしょん……けひょん……そう、へひょんへひょんに、打ちひしがれていたのです。  男はこれまで献身的に実母の介護をしておりました。しかし、実母は男をまるで拷問官のように思ったまま、死んでしまいました。男には、男にとって唯一無二なパートナーと、それは愛らしい子どもがおりましたが、些細な、犬も食わないような諍いで、離

    • 傷と被害妄想の狭間で

      ようこそいらっしゃいました。臆病者めにございます。 ここでは臆病者めの足らぬおつむの内臓をつらつらどばばと書き殴っております。一人間もどきの一考え方に過ぎないものでございます。ご自身と合わないと感じられたり、不快だと思われたら迷わず踵を返してくださいね。貴方の時間は貴方のものですから。 本日は、「傷と被害妄想」の話。 皆様の中には、誰かの言葉や行動に深く傷ついたり、特定の誰かではなく、「社会」や「空気」、「風潮」に心を抉られたりの経験が、大なり小なりあるのではないでしょうか

      • 三題噺【セピアレター】

        『いきあたりばったり』からの収録です。 【色褪せた手紙、コーヒー、文庫本】 ……………………………………………………………………………… 拝啓 ※※※様。 お身体の方はいかがでしょうか。 私は、特にかわりもございません。 そちらはこちらとはずいぶん勝手が違うでしょう。 慣れないこともあると思いますが応援しております。 さて、今回筆を執りましたのは ほかの何でもない、あの事です。 そう、あの事なのです。 あなたに隠していた、あなたが気づいていたであろう、あの事。 もったいぶっ

        • ねぇねぇ、なぁぜ?

        過去に生きる男

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        • 一次創作
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        • 一次創作 三題噺
          8本

        記事

          三題噺【茜紅】

          『いきあたりばったり』の掲載作品です。修正しています。 【花、アクリル絵の具、家族】 ……………………………………………………………………………… 放課後。 茜色の教室。 瓶に入った花。 独特のにおいがする、美術室。 私は別に美術部員じゃない。 ただ、開いていたから入っただけ。 書きかけのデッサンが壁の前に並んでいる。 本当の美術部員たちはたまたま出払っていてここにいない。 そう考えるのが筋だろう。 デッサンはどれも上手で嫉妬する気も起らなかった。 どれも「写実的」で「現実

          三題噺【茜紅】

          三題噺【日常の一コマ】

          『いきあたりばったり』掲載作品です。一部修正しています。 【学校、光、ペン】 ……………………………………………………………………………… 「筆箱忘れた……!!! 」 「えーーー! あんた何しに学校に来てんのよ(笑)」 「だってー。いれたと思ってたんだもん」 「ばっかだねぇ。しょうがない。この私が貸してあげよう」 「ありがとうございますうううううううっ! 神様仏様ぁぁ!」 「おはよー。あれ、なんで拝んでるの…?」 「おはよう。いや、この子筆箱忘れたから、ペンを貸してあげよう

          三題噺【日常の一コマ】

          【レンアイ観】

          『いきあたりばったり』掲載作品。一部修正があります。 ……………………………………………………………………………… 恋って、綿菓子みたいなイメージがあるの。 ふわふわふわふわ。 甘いオーラをまとって現れるの。 でも、その綿の中には鋭いとげが潜んでいて、ちくちく刺してくるの。 だから思わず、痛い、って、泣いてしまうの。 でもあの人は気が付かないの。 私がなんで泣いているのか。 恋なんかもうしないって、恋するたびに思ったの。 もうこりごりだって。 もう傷つきたくないって。 逃げ

          【レンアイ観】

          三題噺5 【暇つぶし】

          『いきあたりばったり』掲載作品です。一部修正しています。 【時計・エアコン・密室】 ……………………………………………………………………………… とある国のとある小さな町で事件は起こった。 住人のいざこざしか起こらないような町の事件は、平和な日常にあき始めていた住人にとっても警官にとっても久しぶりの刺激だった。 警官といっても、年老いた男性と少し若い青年の二人っきり。 そんな二人が意気揚々と交番を出たのはつい三十分前。 (この町には警察署なんてものはなかった。) 小さな

          三題噺5 【暇つぶし】

          三題噺4 【流されて】

          『いきあたりばったり』掲載作品。一部修正しています。 【曇り、風、洗濯物】 ……………………………………………………………………………… ふわりと流れた風に、香りを感じた。 それは新しい緑の香り。 それは朝日の柔らかな香り。 それは香ばしいパンの香り。 ……という季節も過ぎて、じめじめとした季節がやってきた。 雨続きで気分も滅入ってしまう。 重たい雲は空を覆い尽くして、太陽を隠してしまっていた。 曇り、という天気に位を付けるとしたら、これは紛れもなく曇りの王様だ。 kin

          三題噺4 【流されて】

          三題噺3 【街の中へ】

          『いきあたりばったり』掲載作品。一部修正しました。 【桜、服、猫】 ……………………………………………………………………………… ボクは今日も歩き回る。 夜の街は昼とは違う顔を見せる。 ネオンの光と香水の香り。 人の服も昼より華やかな気がする。 キラキラ光るドレスにスーツ。 宝石のついたネックレス。 ぐるぐる巻きの髪の毛。 髪の毛も、心なしかキラキラしている。 ボクは服装にはうるさいたちだと思う。 今日であった人間の服は 正直に言って ダサい。 ボクには理解のできない服装だ

          三題噺3 【街の中へ】

          三題噺2 【永遠に、永遠に】

          【ジャム、海、メモ帳】 『いきあたりばったり』掲載作品です。 ……………………………………………………………………………… 朝、目が覚めるとイチゴの香りが鼻をかすめた。 外はもう明るくて、鳥たちの会話も落ち着きを見せ始める時間。 ベッドから起き上がった私は、うさぎのスリッパをはいて、リビングへと向かった。 「おはよう。よく眠れた?」 いつものように私が起きるタイミングに合わせて焼きたてのパンとおいしそうなイチゴジャムがテーブルに並べられていた。 「ありがとう。今日もいい天気の

          三題噺2 【永遠に、永遠に】

          三題噺1 【あくび、新幹線、あられ】

          『いきあたりばったり』掲載作品です。若干修正しました。 【あくび、新幹線、あられ】 大きいあくびをしてしまった。 あまりにも退屈すぎたのだ。横にいる部長の話が。 お互いスーツを着込んで狭苦しい新幹線の中で、しかも背もたれにももたれられない俺の気持ちがわかるか。 いや、わからないだろう。 くどくどと会社の理念を述べているようで、よく聞けば自分がいかに偉いかを語っただけの話は程よい眠気を誘う。 そんなわけで俺の精神はそこそこにギリギリだった。 そんな中で、あくび。 部長は明らか

          三題噺1 【あくび、新幹線、あられ】

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          おはこんにちばんは。 はじめまして、春跳詠蘭と申します。 この度noteをはじめました。 過去には、comicoのベストチャレンジで「いきあたりばったり」を連載していましたが、終了するということで、こちらで物書きができればと思っております。 どうぞよろしくお願いします。

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