三題噺【日常の一コマ】

『いきあたりばったり』掲載作品です。一部修正しています。

【学校、光、ペン】
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「筆箱忘れた……!!! 」
「えーーー! あんた何しに学校に来てんのよ(笑)」
「だってー。いれたと思ってたんだもん」
「ばっかだねぇ。しょうがない。この私が貸してあげよう」
「ありがとうございますうううううううっ! 神様仏様ぁぁ!」
「おはよー。あれ、なんで拝んでるの…?」
「おはよう。いや、この子筆箱忘れたから、ペンを貸してあげようかなって」
「あー(笑)なるほどね。朝から元気だねぇ」
「いつでもどこでも元気っ子!!! それがこの私なのだぁぁ!」
「はいはい。わかったから。とりあえずシャーペンと赤と青があったら足りる? あと、消しゴムか……。あ、消しゴム一個しか持ってないや」
「あ、私消しゴム三個くらい持ってるよ。貸してあげるね」
「ほんと!? ありがとーーー! この御恩は忘れませぬ!」
「そんな大げさな~。これで今日は乗り越えられそう?」
「いけるいける! ありがと!」
「あ、もうそろそろ先生が来るよ。席に座ろー。」
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「きり~つ。気を付けー。れーい」
「はーい。みんな苦手な古典の授業ですよっと。欠席は…なし。優秀ねぇ。今日は前回の続き、源氏物語の桐壺のとこよ~。冊子開いて~」
( 古典の授業って眠いんだけどなぁ。光源氏がいつ出てくんのかもわかんないし)
「えーっと……。ここからね。じゃあ十二行目から。ここで使われている、「の」の文法的意味は————」
(やば……。ねむ……)
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「見事に爆睡してたね。ペン貸した意味ある?」
「だってあれは!!! いつまでたっても光源氏が出てこないのが悪いんだもん!!!」
「光源氏? もう出てきてるよねぇ?」
「とっくの昔にね」
「うっそだぁぁぁぁぁぁぁ!!! だってイケメンな男の人はまだでてないでしょう!?」
「イケメンな男の子いるじゃん。その子だよ、光源氏」
「イケメンな男の子? ……え。あの子!?」
「そうだよぉ。いまやってるのは、光源氏のお母さんが亡くなる所だよぉ」
「なにそれ聞いてない!!!」
「あんたが寝てるからでしょ!!」
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「きりーつ。きょーつけー。れー」
"Hello! (こんにちは!) Everyone! (みなさん!) Let`s start ! (さぁ、始めましょう!) Please open your textbook page on 23! (教科書23ページを開けてねー!)"
(もうすでに何言ってるのかわからない……。とりあえず教科書を開けるんだよね。ページてゅえんてぃすりー? 12? 3? あ、23か)
"OK, this topic is very popular! (さぁ、今回のトピックはとても人気よ!) Today`s topic is "blood type".(今日のトピックは「血液型」) Many Japanese people like connecting the blood type and their personality. (多くの日本人は血液型と性格をつなげるのが好きね)"
(あ……。もういいや。落書きしとこ)
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「今回はちゃんと起きてたね。熱心にノートとってたじゃん」
「えへへへ~。聞いて! 私の傑作!」
「あらあら……。…………猫?」
「違うよーーー! これは、光源氏!!!」
「あら、間違えちゃいました~。ふふふ」
「何ほのぼのしてんのよ!!! てか落書きじゃない! ほんといい加減に授業受けなさいよ!」
「ひぇぇぇぇっ! ごめんなさいぃぃぃ!」
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「きりー。きょーっけー。れー」
「はーい。おねがいしますー。じゃあ今日は、二次関数の最大値・最小値やろかー」
( 二次関数の最大最小とか…………楽勝)
「じゃあー。教科書の47ページの例題といてみろー」
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「どう!? ちゃんとまじめに授業受けてたでしょう?」
「そうだね……。なんであんた数学だけはできんのよ……。なんかむかつくわー(笑)」
「得意科目があるっていいよねぇ。数学ができるなんてすごいなぁ」
「また今度教えようかー」
「ありがとうーーー」
「あ、次体育だし、移動しよー」
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「きぉーっけ。れー」
「今日はこないだと同じように、準備運動した後にパスやって。で、先生が笛吹いたら集合してねー。じゃー体育委員、あとよろしくー」
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「よっしゃー! 今日はこれで終わりなんて嬉しすぎるっ……!」
「だねー。先生の会議で午後カットとか嬉しすぎるわー」
「そうだねぇ。どっか遊びに行く? 今からならまずご飯かなぁ」
「あ、その前に! ペン、返してね!」
「あ、わっすれそーだった! もちろんもちろん! ほんとに助かったーありがとっ!」
「いえいえ。まぁ、落書きに使われたりもしたけどね」
「かわいかったねー。あの猫ちゃん」
「だからあれはー、猫耳した光源氏なの!!!」
「なんで猫耳なのよ(笑)あんたのそういう変なとこ好きだわー」
「ううう……。もぉっ! 行くよ!」

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