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播磨陰陽道

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#近世百物語

近世百物語・第百夜「天寿・そして死後の世界へ」

近世百物語・第百夜「天寿・そして死後の世界へ」

 近世百物語も百話目となりました。これですべての物語を終わりますが、私の霊体験は、日々、し続けていることもあり、これで終わりではありません。また、続きを書くかも知れませんが、今の時点で皆さんにお話しして問題のない部分はこれで終了することにします。

 さて、今まで多くの先輩や師匠が亡くなりました。もちろん、曾祖父も祖母もかなり昔に亡くなりました。生きていれば、このようなことは起こりますが、私はそれ

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近世百物語・第九十九夜「つくも神」

近世百物語・第九十九夜「つくも神」

 百年に、ひとつ足らぬは、つくも神と言うことで、今回、とうとう九十九夜になりました。近世百物語も残すところあと僅か、よろしくお願い致します。

 さて、〈九十九神〉と書いて〈つくもがみ〉と読みます。これは器物が百年を前にして物之怪に化ける現象を意味する言葉です。
 百年近い間、人の世にあって大切にされると、ある時、人にその姿を見せようとします。これが良い方向に働けば幸いをもたらします。しかし、悪い

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近世百物語・第九十八夜「多い人と少ない人」

近世百物語・第九十八夜「多い人と少ない人」

 ある時、喫茶店に友人たちと入ったら、出されたコップの水がひとり分だけ多かったことがありました。
「数え間違いだったのだろう」
 友人と言いながらお茶を注文すると、奇妙なことに気づきました。ひとり多いのです。喫茶店に入って来た筈の人数より、今、目の前に座っている筈の数が多いのです。何度、数えても同じです。しかし、誰が多いのか分かりません。他の人が数えても、やはり、ひとり多いのです。そしてその人も、

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近世百物語・第九十七話「天に登る闇の柱」

近世百物語・第九十七話「天に登る闇の柱」

 この世には、天に昇る闇の柱のようなものがあります。地面から空に向かって黒い闇のような柱が立つ現象です。多くはハッキリと見えません。ただ暗いとか、その部分だけ寒いか、湿気があるとか、人によっては陰気な感じがするだけかも知れません。
 これにはサイズと言うものがありません。太くも見え細くも見えます。細いように感じるものも含めてすべてが地表から天へ向かって、永遠に思えるほど長く長く伸びています。この柱

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近世百物語・第九十六夜「祓いの鐘」

近世百物語・第九十六夜「祓いの鐘」

 私の使っている霊器と呼ばれる〈七つ道具〉には、祓い鐘・火打ち石・祓い刀・石笛・奪衣婆の壷・霊符・烏帽子があります。これらは祓いの現場で使う霊的な道具です。この中の〈奪衣婆の壷〉については第九十一夜の中に書きました。霊符については近世百物語・第八夜と第四十ニ夜と八十四夜と第九十一夜の中にも書いています。
 祓い鐘は祓いに使うための鐘です。これはいわゆるチベタンベルです。本物のチベタンベルは世界に五

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近世百物語・第九十五夜「手形足形」

近世百物語・第九十五夜「手形足形」

 何度か、ガラスに付いた凍った手形を見たことがあります。ある夏の暑い夜のことです。飲み物を飲みほして、しばらくそのままにしていたコップが、テーブルの上でピキッと音を立てました。気付いてコップを見ると、向こう側から誰かが触ったような手の跡がありました。それは子供の手のような、とても小さなサイズでしたが、ガラスの表面に凍りついていました。

 これもまた、別な真夏のある時の出来事です。あまりの寝苦しさ

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近世百物語・第九十四夜「播磨御式神内」

近世百物語・第九十四夜「播磨御式神内」

 播磨御式神内は播磨陰陽道で使う武術です。この武術は霊術とセットになっていて、われわれ播磨陰陽師は武術を大切にしています。それは武家の子孫だからであり、霊的なものを扱うには武術が欠かせないからです。
 私は、幼い頃から柔道や合気道を学び、播磨御式神内の伝承を受けました。子供の頃から大東流合気柔術も学びました。播磨御式神内は合気道と同じ流れをくむ武術なので、合気道、大東流合気柔術、播磨御式神内と古く

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近世百物語・第九十三夜「青い波のたつ池」

近世百物語・第九十三夜「青い波のたつ池」

 トラウマなのかについては分かりませんが、何かの刺激を受けるとフラッシュバックのような記憶を映像として見ることがあります。何かに驚くと必ず同じ映像を見るのです。それは青い波が立つ池の映像です。水面には無数の光の点のようなものが写っています。どこなのか? いつの記憶なのかについては思い出すことは出来ません。
 ただ、かなり子供の頃からずっと見ているので、幼い頃の記憶であることだけは確かなようです。私

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近世百物語・第九十ニ夜「悪夢」

近世百物語・第九十ニ夜「悪夢」

 何度か悪夢のことについて書いていますが、悪夢そのもののことはあまり書いていません。誰でも小さい時は、何かに追い掛けられる種類の悪夢を見ます。私も小さい時は化け物だとか幽霊だとか得体の知れないものに追い掛けられる夢を見ることがありました。怖ろしい夢を見るたびに、眠るのが怖くなりました。近くに怖ろしい姿をした幽霊がたくさんいるような悪夢も見ています。どこかから落ちる夢も見ました。それはそれは怖ろしい

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近世百物語・第九十一話「悪霊の壺」

近世百物語・第九十一話「悪霊の壺」

 私は〈奪衣婆の壷〉と呼ばれる霊器を持っています。これは悪霊を入れて置くための壷です。悪霊を入れる霊器はどのような形だとしても全体的に〈奪衣婆の壷〉と呼ばれています。だから自分の持っている壷をそう呼んでいます。しかし、私の持っている壷の彫刻は、奪衣婆と言うより〈懸衣翁〉のようです。表面にあるのは、お婆さんの彫刻ではなく、長い髭のはえたお爺さんの彫刻だからです。奪衣婆のことは辞書に、

——三途の川

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近世百物語・第九十夜「シガラミ」

近世百物語・第九十夜「シガラミ」

 人は、土地のシガラミに縛られて生きているような気がします。しかし、その土地の風習だとか風俗には無関係に、私には霊的なシガラミがついてまわります。
 私は人工的な土地へ行くのが好きです。それは開発された埋め立て地のような場所です。人工的な土地で安心するのは、霊的なシガラミそのものがないからかも知れません。
 大阪南港のコスモスクエア駅周辺に行った時、
——寺も墓場もなく、しかも、神社も祠さえない土

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近世百物語・第八十九夜「コックリさん」

近世百物語・第八十九夜「コックリさん」

 コックリさんは正式な霊術には含まれていません。正式な伝承も何もありません。ただ整理されていない、しかも、それほど古くないやり方が、子供たちの間で流行っていただけです。何の修行もしない子供にでも出来る程度の技法ですので、〈霊術〉と呼ぶより〈子供騙し〉と呼んだ方が正しいのかも知れません。
 私がまだ小学生の頃はコックリさんが大流行していました。当時はコミックの『恐怖新聞』や『うしろの百太郎』なんかが

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近世百物語・第八十八夜「祝詞」

近世百物語・第八十八夜「祝詞」

 子供の頃から〈祝詞〉をあげて育ちました。それは播磨陰陽道の伝承者として当然のことでした。だから、少しも不思議には思っていませんでした。と言うより、
——他の人も、みんな祝詞を知っているものだ。
 と、勝手に思い込んでいました。
 子供の頃の思い込みは誰にでもあります。それが奇妙であろうとなかろうと、自分の中ではごく自然なことでした。

 さて、時と場合によって、祝詞をあげると雨が降ることがありま

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近世百物語・第八十七夜「霊道」

近世百物語・第八十七夜「霊道」

 死んだ人々の霊の通り道を〈霊道〉と呼びます。霊道が、人家のない森や山奥にあった頃は良かったですが、最近はそのような自然な地域が開発され、山奥ですら人家が出来つつあります。住めば、当然、家の中を霊道が通ることになります。
 マンションなどの賃貸に霊道がある場合は引っ越せば済みます。しかし、購入した時は難しくなります。住む人は一生懸命頑張ってお金を貯めて夢のマイホームに住むのです。しかし、霊道の通っ

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