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「デンマーク人はなぜ4時に帰っても成果を出せるのか」を読んでみた
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要点
デンマークは「幸福度の高い国」であるのと同時に、国際競争力ランキング世界1位の「ビジネス先進国」だ。デンマーク人は豊かな「ライフ」と仕事の「成果」を両立している。
デンマーク人は午後4時までに仕事を終わらせて帰宅する。勤務時間中は仕事に集中し、効率よく片付けていく。
タイパを高める働き方のポイントは「仕事の付き合いはしない、させない」「意思決定に関わる人数を減らす」「ダブルチェックをしない」「退社時間を決める」などである
デンマークの組織では、相互の「信頼」に基づいたマクロマネジメントが行われている
要約
幸福なビジネス先進国・デンマーク
>素敵な矛盾に満ちた国
世界トップクラスの「幸福度の高い国」デンマーク。おしゃれな北欧雑貨やメルヘンな街並み、充実した福祉制度、そして心地よさを意味する言葉「ヒュッゲ」など、デンマークは「豊かで幸せな国」というイメージがあるのではないだろうか。しかし、これはほんの一面である。
実はデンマークはIMD(国際経営開発研究所)の調査において、2022年、2023年と2年連続で「国際競争力」世界1位に選ばれている。(日本は2022年が34位、2023年は35位であった。)
国際競争力ランキングは「経済状況」「政府の効率性」「ビジネス効率性」「インフラ」の4つのカテゴリーから評価されるが、デンマークは「ビジネス効率性」で4年連続1位を獲得している。(2023年の日本の「ビジネス効率性」は47位。)デンマーク産業連盟のアラン・ソーレンセンは、デンマークの高い国際競争力は「状況変化に対する企業の迅速な対応力、モチベーションの高い社員、高度なDX」によるものだと指摘する。つまり、デンマーク人は「時代のニーズを読み取り変化に対応する力がある」といえる。
ふだんはのんびりしているデンマーク人だが、いざ変化が起こったときは驚くような機動力を発揮する。「幸福な国」デンマークは、実はすごい「ビジネス先進国」なのである。
古いシステムを切り捨てる大胆さ
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デンマークは「デジタル競争力」も群を抜く。電子政府ランキングでは2018年から3年連続ナンバーワン、そしてデジタル競争力ランキングは2022年に1位を獲得している。
デンマークはキャッシュレス社会であり、どこでもカード払いもしくはスマホ払いができる。最近では「カードレス化」も進んでおり、健康保険証や運転免許証の提示など、本人確認もスマホのアプリで対応している。
日本でもキャッシュレス化が進んでいるが、デンマークとは決定的な違いがある。それは、先進技術を取り入れる際、デンマークは古いシステムをバッサリと切り捨てるところである。
日本では顧客への配慮から、新しいシステムへの移行時には旧来のシステムと併用させるのが普通だろう。
一方、デンマークは古いシステムをすっぱり捨てて、新しいシステムに「乗り換える」のだ。
例えば、行政からの手紙はオンラインのみで、郵便ポストに届くことはない。そのため著者が自宅ポストを覗くのは、日本から手紙や小包を送ったと連絡を受けたときだけだそうだ。
「ライフ」を楽しみながら成果を出す
「国際競争力」と「デジタル化」が進んだ国と聞くと、ビジネスライクな国という印象を持つかもしれない。
だが実際は、デンマークの暮らしは静かで落ち着いている。24時間営業の店はほとんどなく、首都コペンハーゲンは緑豊かで、暖かい季節には人々がごろんと寝そべって日光浴をしている。
コペンハーゲンは、フォーブスの2023年の調査で、世界主要都市のなかの「ワークライフバランス」1位に選出されている。
その理由について「コペンハーゲンに暮らす人びとはヒュッゲ(心地よさ)を大事にし、リラックスして人生の喜びを感じることに時間を使っている」と記されている。
さらに「年間5週間の休暇、フレックスタイム制、夫婦合わせて52週間の育児休暇の提供」など、プライベートライフを尊重する職場の実態にも触れている。
プライベートを犠牲にしなくても、仕事で成果を出せるのはなぜだろうか?
次からは、デンマーク人が「ライフ」を楽しみながら高い仕事効率を誇る理由を、「時間」「人間関係」の観点から解説する。
必読ポイント!
デンマーク流「タイパ術」
>私たちは何のために働くのか?
私たちは何のために働くのだろうか?
お金を稼ぐことや働くことの目的を考えていくと、「自分の人生で大事にしたいものは何か」という根源的な問いに行き着く。
人生は「時間」でできている。どんな人生を生きたいかは、どんな時間を使いたいかと同義である。
あなたが「時間を忘れて」喜びを感じるとき、あるいは日常生活で機嫌が良いと感じるのはどんなときだろうか。
そこを丁寧に見つめていくと、自分が大切にしたいと思っているものが見えてくるはずだ。
生産性を高める働き方のポイント
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ここでは、デンマーク人の働き方から学べる「時間の使い方」のポイントを抜粋して紹介する。
(1)仕事の付き合いはしない、させない
自分や周りの人のプライベートを尊重するデンマーク人は、「仕事の付き合い」をしないし、させない。同僚や部下を飲みに誘うことはなく、こちらから誘っても断られる可能性が高い。
仕事は午後4時に終了し、その後はフリータイムだ。
昼食は30分で済ませ、勤務時間中は仕事に集中する。
「仕事より大切なものがある」と思っているデンマーク人は、4時以降はきっちりプライベートモードに切り替わるのである
(2)会議のアジェンダと終了時間を設定する
デンマークでは会議のアジェンダと終了時刻を決めておき、時間内に結論を出すよう努力する。結論が出なくてもその日は打ち切って、別の機会に改めて行う。
また、会議の時間は50分など敢えて中途半端に設定して、自然と時間に意識が向くようにするといい。
(3)意思決定に関わる人数を減らす
日本の組織は、意思決定のプロセスに関わる人数が多い傾向がある。一方、デンマークの組織は基本的に少数で意思決定を行い、中間管理職の承認を飛ばすこともある。そのためスピーディーに意思決定が実現する。
「意思決定の人数を減らすことができないか?」と考えることは、仕事効率化の大事な視点である。
(4)ダブルチェックをしない
デンマーク人にとって「ダブルチェック」は無意味なタスクの代表だ。彼らは基本的にマイクロマネジメントをしないため、上司が部下の仕事を細かくチェックすることはない。
「ダブルチェック」によってミスは減るかもしれないが、時間コストという面では「高い」と言わざるを得ない。
ケースバイケースではあるが、「ダブルチェックをするより、一人ひとりが責任を持って仕事をする方が効率的だ」というのがデンマーク人の考え方である。
(5)退社時間を決める
デンマーク人は午後3時を過ぎると帰宅モードに入る。彼らが効率的に働くのは、終了時間がキッカリ決まっているからだ。
「終わり」を意識して、1日の時間の使い方を考えるのである。
「午後4時帰宅」に隠されたカラクリ
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ここまで読んで、「本当に午後4時までにすべての仕事を片付けられて、且つこの働き方で国際競争力を維持できるのだろうか?」と疑問を抱く人もいるかもしれない。
実は、ここにはカラクリが隠されている。
午後4時に仕事を終えて切り上げる人もいるが、終わらなかった仕事を家に持ち帰る人もいる。家族団らんの時間を過ごした後、子どもが寝静まった夜間や早朝に“残業”をするのである。
デンマーク人は勤勉で、自分の役割をしっかり果たそうとする。デンマーク人が午後4時に帰宅するのは、家庭での自分の役割を果たそうとするからだ。そして、処理しきれなかった業務はファミリータイムの後に片付ける。家族も仕事も両方選ぶ、それがデンマーク人のワークスタイルである。
生産性を上げる「人間関係」
>フレキシブルで失敗に寛容なデンマーク人
著者の印象では、デンマーク人は「石橋を『造りながら』渡る」タイプである。目的が見えてきたらとりあえず前に進み、橋が必要であれば色々な方法で造ってみる。もちろん上手くいかなかったり「無駄」が発生したりすることもあるが、この「軽さ」がデンマーク人の強みなのだという。
この国民性はビジネスでも発揮されている。彼らは「決定」したプランに固執せず、途中でやり方を変えた方がいいと思えば躊躇なく変えてしまう。プランはあくまでプランであり、変わる可能性を最初から想定しているのだ。
また、デンマーク人は「失敗」にも寛容だ。リーダーは部下の失敗に寛容なため、社員は自分を信じて動くことができる。
組織のトップであるヘリーネは、部下が失敗してトラブルが発覚したら一緒に問題解決にあたるが、部下を責め立てることはない。彼らのミスは意図的でないとわかっているから、怒ることはないのだという。そして同じようなトラブルを起こさないように、どうしたらいいかを一緒に話し合う。
「信頼」に基づいたマクロマネジメント
デンマークの職場では、「信頼」に基づいたマクロマネジメントが行われている。翻って日本の職場の多くは、「不信」をベースにしたマイクロマネジメントが根強いように見える。
たとえば、上司は部下に逐一の報告を求めたり、逆に部下は上司に承認を要求したりする。一見、細やかなコミュニケーションであるが、相手を本当に「信頼」していたら不要なやり取りではないだろうか。
承認や確認は仕事の本質ではない。だが私たちは、仕事よりも上司から「承認される」ことや部下を「コントロールする」ことにフォーカスしがちである。互いを信頼し合うことは、仕事効率化の大きなカギであることを心に留めておきたい。
フラットな職場
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一般的に、デンマークの組織には上下関係がない。役職は「地位」というより「役割」であり、上司と部下の関係性もフラットだ。たとえば、業務を主体的に回すのは部下であり、上司は彼らのファシリテーターである。
約20人の組織のリーダーであるケネットは、部下を「各分野のエキスパート」と考え、全体の進捗は眺めながらも細かい業務に介入することはない。彼は自身の役割を「みんなが良い関係を築きスムーズに仕事ができるように、職場に良いカルチャーを生み出すこと」だという。
リーダーの役割は、メンバー一人ひとりに自分の役割を自覚させ、組織の機動力を高めることである。
それにより、よりダイナミックな「効率」が生まれるのである。
すゝめ
要約では、生産性を上げる「時間」「人間関係」にフォーカスしたが、書籍では国際競争力を生む「仕組み」についても詳しく解説されている。
そのポイントを一つ明かすと、転職前提のキャリア設計だ。個人のみならず、企業も数年ごとに転職する人材を「変化を受け入れられる人」と評価する傾向があるという。
また、デンマーク人は仕事を
・「お金を稼ぐ手段」ではなく、
・自分の成長機会やアイデンティティを形成する大切な要素として捉えているそうだ。
自己成長のために軽やかに新しい道へ進んでいくデンマーク人は、理想的なリスキリング人材ともいえる。
彼らのワークスタイルをそのまま真似ることは難しいかもしれないが、考え方や行動を取り入れることで、これからの時代に適したビジネスパーソンに近づけることだろう。
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