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摂食障害の長い長いトンネルを抜けて~元摂食障害当事者からのメッセージ~420


「陽子、今の私にとっての幸せって、もしかしたら『何もない』ことなのかもしれない。痩せることに拘らない、痩せることに囚われない、食べることに悩まない、食べることに迷わない、嫌なことが特にない、困ったことが特にない、辛いことが何もない……そんな、特別なことが何もなくても、穏やかで、とりとめもない日常が淡々と過ごせること。そんなことが私の幸せ、のような気がする。私、もう何年も特別なことがあり過ぎて、疲れちゃったの。だから、平凡でも、つまらなくてもいいから『何もない』穏やかな日々が続いてくれれば、それでいい気がするの」

「そっかぁ、『何もない』ことかぁ……確かに、何事もなく穏やかに毎日が過ごせれば、それが一番の幸せかもね。何が起きるかわからない世の中で、特別なことがない、ってことがある意味『特別』なのかもね」

「そう、そうかもしれない。ねえ陽子、私ね、摂食障害を克服したい、って思った頃から、いやもしかしたらもっと前からかもしれないけれど、私から『痩せること』を取ってしまったら何も残らない、『痩せること』を失ってしまったらどうしたらいいのかわからない、何をすればいいのかわからない、何を目指したらいいのかわからない、みたいにずっと思っていたの。それまでずっと痩せたくて、痩せたくて、痩せたくて『痩せること』に拘って『痩せること』だけを追い求めていたから、それがなくなってしまったらどうやって生きていけばいいのかわからない、くらいに思っていたの。だからね、摂食障害を克服するためには『痩せること』の代わりになる『何か』がなければいけないんじゃないか、って思ってたし、かと言ってその『何か』が何なのか、ずっとわからなかったの。だけど、きっと何もなくてもいいんだよね。もちろん、何か目指すものとかがあった方がいいのかもしれないけれど、でも『何もない』ならそれでもいいのかな、って。『痩せること』の代わりは何もなくても、辛いことや苦しいことがないのなら、『何もない』穏やかな日々が続くのなら、それでいいんだし、それが今の私の幸せなのかなって、そんな気がしたんだ」


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