摂食障害の長い長いトンネルを抜けて~元摂食障害当事者からのメッセージ~328
「陽子、何か頼もうか?私も全部飲んじゃったし、喋ってると喉が渇いちゃって」
「そうだね、何にしようか。私さぁ、ちょっとお腹減ってきちゃったんだけど、何か食べてもいい?」
「えっ、もちろん。それなら、私も何か食べようかな……」
陽子につられて咄嗟に言ってしまったけど、人前で何かを食べることにはまだまだ不安な気持ちがあった。だけど、もし陽子と一緒に何か食べることが出来たら、ほんの少しでも前へ進むことが出来るかもしれない。ここは、勇気を出して何か頼んでみようかな。
「紗希、私に気を使って付き合わなくてもいいからね。あっ、ごめん、もしかして目の前で何か食べてるのを見るのも無理だった?」
「ううん、全然そんなことないよ。目の前で陽子が食べてても大丈夫だし、それに、私もほんの少しずつでも『普通に』食べられるようになりたい、って思ってるの。だからね、一緒に何か食べてみるものいいかなぁ、って思って。何か、逆に気を使わせてしまってごめんね」
「私は全然。気なんか使うタイプじゃないからそんなこと考えないでいいって。それなら何食べようか。私はやっぱりスイーツとか、甘い物が食べたい感じなんだけど、紗希はどうする?」
「そうねぇ……どうしようかな」
二人でしばらくメニューを眺めていた。最近は、お店でパフェを食べることが出来るようになってきたから、今日もパフェにしようかな。ケーキもおいしそうだけど、やっぱりほんの少しでも安心して食べられる物の方が落ち着いて食べられる気がする。ふと、『成功体験』という言葉が頭に浮かんできた。
「決めた!私、チョコレートパフェにしよう。紗希は決まった?」
「そうね、私もパフェにしようかと思ってた。陽子と同じでもいい?」
「もちろん!じゃあ決まり。すいませ~ん」
何と言うか、陽子のさっぱりとしていて優柔不断なところがない感じが昔から好きだったし、今の私にとっては救われる思いがした。
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