『曲亭の家』 西條奈加 2021
三冊続けて、江戸時代に実在した人物を主人公にした小説を読んだ。
私が、読んだ順番に挙げておくと『ミチクサ先生』の夏目漱石、『若冲』の若冲、『曲亭の家』の曲亭馬琴と嫁お路である。
(夏目漱石は、ほぼ明治の人であるが、慶応三年生まれである)
三冊読了しての感想は、皆、死を恐れているのだなということ。
現代よりも、死が身近にあったのは確かであろう。
そして、程度の差はあれ死が創作の原動力という観点で小説が書かれている。
『ミチクサ先生』には夏目漱石の妻が、『若冲』の若冲の腹違いの妹(創作上の人物)が登場しているので、当時の女性の境遇や生き方を感じることも少しはできるが、三冊目に読んだ『曲亭の家』は、曲亭馬琴の嫁お路が主人公であるので、はっきりお路の口から女性の幸せについて知ることができる。
現代と江戸時代の時代的背景の違いはあっても、女性の境遇はあまり変わっていないのではないだろうか。
家のことをすべて采配し、育児も仕事もして、介護もする。
(今、少しずつ変わり始めているのは、男性にとっても喜ばしいことと思う。
今年の春ドラマ『悪女わる』のストーリーの中で、男性が管理職にならなくてもいいということにほっとした男性もいます。というアンケートの声が上がっていた)
女性がいないと家は回らない。でもそれをほとんどの男性は認めていない。内心で思っていても口に出して女性に感謝の言葉を伝えることはほぼない。
幸せの形もまた、人によってさまざまだ。いまさら夫を責めるつもりはないが、いま手にしている幸せに、いつ気づいてくれるのだろうか。
『曲亭の家』 西條奈加
曲亭馬琴は超大作『南総里見八犬伝』の著者である。
そして、『南総里見八犬伝』執筆の途中で失明した曲亭馬琴の口述筆記をしたのが嫁であるお路であった。
ちなみに原稿料(潤筆)が支払われるようになったのは、曲亭馬琴とその実質師匠である山東京伝のおかげである。
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