傍の下で(妄想化学遊戯Lev5)
ある日の夕方、夫々の場所から、創生の地にて・・・。
月明かりの下、2人は息を潜ませ森の中で静かに身を隠していた。その時、華が枯れ枝を踏む。その音が辺りの静寂を打ち破る。それに道探が唇に人差し指をさせる仕草を華に見せ私語(ささめごと)で会話をする2人。
「し~~~ぃ、静かに・・・ぃ」
「ね~~ぇ、彼此(かれこれ)、15分位い経つはよ・・・、本当に来るのぉ?」
「大丈夫、心配しなくてもぉ、獲物は来るさぁ」
「なら良いんだけど・・・ぉ、でも、道探が夜の依頼を受けるなんて珍し~~~ぃね・・ぇ」
「ん、仕方ないんだぁ、今回の獲物は夜しか活動しないからねぇ、しかも、超~~~ぉ、警戒心が強い」
「そうなのぉ・・・・・・」
「だから、静かにお願いしますねぇ」
華はちょっと不貞腐れ気味に言う。
「解ってるわよぉ」
そして、静寂が支配する。それから僅(わず)かばかりの時、遠くの方から落ち葉や小枝を踏む足音が近付いて来た。身体から足にまで白い羽毛に覆われ、地面を引き摺る程の長さの尾。名前の由来となった、頭には特徴的な鶏冠石(けいかんせき)を持つ今回の獲物、鶏冠鳥(けいかんちょう)。首を上下に動かしながら歩き、数歩進むと止まり頭を頻(しき)りに右左(みぎひだり)と動かし辺りを見回すそれを繰り返し、仕掛けた餌に近付いて行く。それを確認した道探が、華に指で獲物の後ろに回り込む様に指示を出して、華も指で丸を作り答える。華は籔に身を隠し静かに少しずつ近付いて行く。餌を啄(ついば)み啄み時折、辺りを警戒する獲物、じりじりと近付く華、正に達磨(だるま)さんが転んだ状態・・・。やがて、獲物の射程に近付いた華は、発信機を打(ぶ)ち込んだ。それに驚いて鶏冠鳥は奇声を上げた。
グギーーーーーーャ、クギャギャ、バサバサ、クギャギャガァ、バサバサ、ギーャ、ギーャ、バサバサバサバサ、ギーーーーーャ
その状況を見て、道探が茂みの中から飛び出し鶏冠鳥に襲い掛かる。それを素早い動きで交わす鶏冠鳥。
「なぬッ、か、かわされた・・・ぁ」
道探は、右足を滑らせながら鶏冠鳥に視線を這わせた。それを観ていた華が言う。
「あいつ、可也、速いわねぇ」
「まっこてぇ、速すぎじゃねぇ」
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