マガジンのカバー画像

詩まとめ

149
詩のまとめです。感情が滲み出てくるような詩を書きます。
運営しているクリエイター

#詩的散文

【詩】泥のように眠、れず

【詩】泥のように眠、れず

頭痛。溶解しない沈殿。
もう一生分眠ってしまって、僕は、眼を瞑る口実を見つけられない。
見ないことを選べず、ただ見ることしか出来ない光景を前に、夢を、いつか見ていたことを思い出しながら、
沈殿して往かない意識を、重々しく、頭の重さそのもののようにもたげている。
泥のように眠っても、眠っているから、泥のようであること、なにも気にしなくてよかったのに、眠りにつけなければ、ただ取り残されるのだ、存在、泥

もっとみる

【詩】四季

きみが流したはずの涙が、瞬く間に蒸発してゆく、青い空と、そこで白く輝く太陽の光が、まるで神聖であるかのようにきみを照らしていて、その光景をぼくは、ただ見ていたのだ、あのとき。
ぼやけていった、
はっきりと映らない、きみの表情は、記憶のなかで霞んでいった。
「一粒の雨も、降ってなんかいないから、だから、誰も傘を差し出してはくれない」、何の疑問を持つこともなく言い放ったきみのこと、なにもかも綺麗に思っ

もっとみる

【詩】祈跡

ぼくは出来るだけ誠実でいたかったから、きみが今まで辿ってきた道を知りたいと思った。きみが何を考えて、きみが何に苦しんでいるのか、きみが今何を思って、ぼくのことを見ているのか、そのすべてを余すことなく知りたいと思って、けれどもそれらすべてはアスファルトで舗装された道路みたいなものに過ぎないのだときみが言った。きみが見せてくるこれまでの軌跡を綺麗だとぼくが思っても、きみもそう思ってからぼくにそれを伝え

もっとみる

【詩】慟哭

泣き方の分からないきみが、顔いっぱいに水を被ったり、しきりに瞼を開いたり閉じたりしてみたり、痛くなりそうなくらいその綺麗な瞳をこすってみたり、唐突に大声を上げてみたりする、けれど、それでも一向にきみの瞳から涙が溢れることはなくて、そんなきみはとてつもなく苦しそうに地面に蹲っていた。
蹲っているきみが言う。涙なんて所詮ただの水滴だと。一方で、人一倍、その涙の透明さに恋焦がれながら。
自分の泣いている

もっとみる

【詩】蒸発する夢

シャワーを浴びて、身体のありとあらゆる汚れが洗い流されていって、そのたびにわたしは綺麗な自分に生まれ変わることができるのだと、そんな風に思えなくなったのはいったいいつからだろう。
そしてもはや生まれ変わる必要もないと口で言ってしまうくらいに落ちぶれたわたしは、今日も綺麗なものに眉を顰めて、綺麗でないものに冗長な言葉を付け加えて肯定する。みんなそれぞれいいところがあるだなんて能天気な言葉に吐き気を催

もっとみる

【詩】ふたり

この世界がきみときみの好きなひとのふたりだけだったらいいのにね。きみはそう思いませんか?ぼくは思います。ぼくはきみの世界のなかにいなくてもよくて、きみもきみの好きなひとだけを愛すことができるから。そうなればきっと、きみには「愛の形」なんて言葉も要らなくなる。なにも口にすることなくきみは、きみの好きなひとに好きだと伝えることができる。いくらきみが色んな愛を定義して、ぼくに好きだと言っても、ぼくにはそ

もっとみる

【詩】書架と夜景

綺麗なものは綺麗なのだと決められていて、綺麗でないものもまた綺麗でないのだと元から決められているから、だからきみたちは、煌びやかに広がる星空だとか、都会の街に立ち並ぶビル灯りだとか、そんなものばかりを見て、それを夜景だと言った。
ぼくは、どこかの夜景の下で恋を謳っている誰かを想像しながら、誰に勧められるでもなくひとりでベランダに立って煙草を吸う。そして途端に意味を持ち始めた星空や、灯りが映って光る

もっとみる

【詩】輪廻

ぼくが鈍い光を放つ線路の上で粉微塵になったとき、その瞬間ぼくは幼い少女になり、少女になって毒水を飲んで喘いで行き着いたさきは、生まれたばかりの赤ん坊だった。記憶もないまま、自分がどうしてここにいるのかも分からないまま、ほんの少しの欠片にも満たない自我さえ奪われて、それでもぼくに分かるのは、ぼくが神様に嫌われているということだけでした。
100歳まで生きるように言ったそうです。今にも風に飛ばされてし

もっとみる