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日本の自給率は守れるか?“協同組合”の重要性を説く


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昭和40年以降、下降の一途を辿っていた日本の食料自給率が、ついに令和2年に37%を切りました。(下記図表は農林水産省HPより参照)そこに追い討ちをかけるように、ウクライナ危機が勃発しました。

日本の食料自給率の推移


燃料費、飼料、肥料の価格高騰で、農家の方々への逼迫が懸念されます。

自給率が高いとされている野菜についても、実はその“種”のほとんどは、供給を海外に依存しているのが現状です。(日本の“野菜の種”の自給率は8%

では、日本の食料自給率は、どうすれば守ることができるのか?

食料自給率を向上させるためには、農家の方々の所得向上、生活の保障が重要になってきます。東大・鈴木宣弘教授は、“農産物の買い叩き”を研究する中で、“協同組合の重要性”が明らかになったそうです。

鈴木教授の研究については次回の記事で触れますが、本記事では、鈴木教授から協同組合の役割についてご意見を頂きました。


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■協同組合が理想的に機能している国、モデルとなる国はありますか?

スイスは生協が中心的な役割を果して、「消費者-生協-農協-農家」を結んで、農産物のホンモノの価値を支えるネットワークを拡大できて、スーパーも安売りしにくくなり、小規模農家も守られています。

自給率もそれなりに維持されています。
政府の政策も、環境に優しい生産への支援が、大きくなっています。

■“協同組合の重要性”に気付かれたのは、何がきっかけだったのですか?

私が行政マンから転身して30歳で研究を始めて、最初に構築したのは酪農の需給モデルでした。「酪農協の独占を前提にした先行研究」に対して、「生乳市場は完全競争であることを前提としたモデル」を提示しました。

そのモデルを研究会で報告した際に、私の報告を途中で制止して「では、飲用乳価と加工原料乳価に輸送費だけで説明できない差があるのを、どう説明するのか。それが説明できないなら、報告を続けさせない」と著名な先輩(独占モデル論文の著者)から指摘されて、立ち往生しました。

自分には研究は無理だ、やめよう」と一度は落ち込みましたが、「このまま終わっていいのか」と考え直しました。

しかし研究では、完全競争でも説明できない、独占でも説明できない、「“不完全競争”の現実」をどうモデル化するのか、途方にくれる日が続きました。そしてついに、“農家が農業協同組合に結集する”ことによって、販売においては“一定の市場支配力”を持ち、“買手の買い叩きに対抗しうること”をモデル化できたのです。これが、協同組合の重要性に気付いたきっかけかと思います。

■スイス以外にも、協同組合が強い国はありますか?

「農協が強い国」というのはあまりなく、政府の政策の充実が“農家継続や自給率の高さ”に大きく寄与しているのが、欧米の姿です。

世界的には、“日本の農協の共同販売は頑張っている”という評価があります。特に、東南アジアの国々から。

■日本の農協の共同販売は、世界からどのような点で評価されていますか?

多くの国で農産物を買い叩かれ、生産資材は高く売りつけられ、高金利でお金を借りさせられています。日本はまだ、農協の共同販売と共同購入と金融・共済で、対抗しています。いま、それを崩そうとされていますが。拙著『協同組合と農業経済:共生システムの経済理論』の、農協潰しのところで触れています。

■農協が強い国が少ないように、世界では“協同組合の重要性”もあまり研究されていないのでしょうか?

そうですね。我々の研究によって、具体的に「共(協同組合)」の交渉力の存在がどれだけ経済的利益の向上に貢献しているか、「共(協同組合)」が強化されれば、どれだけ社会全体の利益を高められるかも具体的に数字で推定できるようになりました。

これまで、協同組合による市場成果の実証分析は、農産物の買手が農協の場合には、独占企業の場合よりも生産量と生産者価格が上昇し、経済厚生が高まるというHelmbergerらの理論モデルに依拠して、農協のシェアが高い地域では、その価格がヤードスティック(基準)となって経済厚生が増加する効果=「ヤードスティック効果」の実証分析として、「農協のシェアの高さと生産者価格に相関があるかどうか」の検証をする程度の研究しかありませんでした。

そこを考慮しても、一般的な寡占市場(少数の企業が生産や販売市場を支配している状態)をモデル化し、かつ、消費者価格の変化も組み込んで、消費者を含む経済厚生の変化を実証し、シミュレーションもできるという我々の研究展開は、理論的にも、実証的にも、非常に画期的なものと位置付けられます。

■世界では「農協が強い国」が少ない理由は、なぜでしょうか?

日本の農協が発展した理由のひとつは、日本は、政府が農業政策を農村部で実施するルート、例えば、農家に補助金を出すのを農協を通じてやらせる、という政策装置を活用しました。そのため、農協への農家の結集が進んだと言えます。

つまり、政府が農協を農村への指令ルートに使おうとしたことが、結果的には、農協の力を強めてくれたと言えます。他の国では、そういう事例はあまりないと思います。

■「多くの国で農産物は買い叩かれている」とのことですが、国民が政府を頼りにできない時に、協同組合は“弱者を守る共同体になり得る”、という認識でよろしいでしょうか?

「協同組合は弱者を守る共同体になり得る」、そのとおりです。

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食料自給率の目標

世界の食料自給率

(上記図表は農林水産省HPより参照)

昨今では、水道事業も民営化が導入されるなど、私達の生活に“自由化”の波はどんどん押し寄せてきています。しかし、“自由化”を推し進めることだけが正解でしょうか?

上記図表にもあるように、他国では食料自給率が200%を超える国がある中で、日本は37%次世代の担い手が減り衰退した産業では、「再興しよう」と試みた時には、後継者を育てられない問題に直面することが多々あります。

農業は食だけではなく、その地域の文化や伝統も継承しています。
今回の鈴木教授のお話をお聞きして、農業を守るためにも、“協同組合の存在を守ること”、“協同組合の重要性について再認識すること”の必要性も改めて実感しました。鈴木教授、取材のお時間をいただきありがとうございました🌱🌱

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【参考文献】
鈴木宣弘著『協同組合と農業経済:共生システムの経済理論』

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