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#詩
台風の後の夜を散歩する
ラジオを聴きながら寝っころがっていると、カーテン越しに月明かりが見える。窓を開けるといつの間にか空は晴れていて、台風はもういなくなっていた。
手近にあったリトルトゥースのシャツ(もちろんラスタカラー)を着ると、外に出てみる。
雨風に清められ澄み切った空気に脳がさわさわとする。湿度を含んだ町から上を見上げると月がかすんで見えて、水中から太陽を見るみたいにゆれている。
人も車もなく、町は静かで、
ビニール袋が落ちた日
翠色と踊りながら
オレンジジュースを煽って
笑い声をあげようとしたところ
ビニール袋が落ちる
昨夜の喧騒がまだ部屋には残っていて
口に残った味を確かにしようと
冷蔵庫を開ける
オレンジジュースはからっぽだ
へたりと腰を床に落とすと
ぼくはトンネルに囲まれていて
これが絶望ではなくどこにも向かえる希望なのだと
四指に力を入れて体を引き摺る
擦れる膝に感覚がなく
妙に冷静にそれを不思議に思っていると
ふるえるこども(詩)
雪が散らつく水辺に桜が咲いている。溶けつつある雪の間から顔を見せる緑を見れば春の始まりを思わせるが、梅は疾うに散り、桜も咲き腫れた今は、春の最中なのである。季節外れの雪と流行り病が、知らない名前を紡ぎだす。
こわいものにはひとつずつ、名前を付けましょう。そしたらそれは手のひらの中、あなたのものです。
学者さんたちが名前をつけていく。あなたは、君は、こちらは、これは、
ぼくは、わたしは、と名前