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ライブハウスにコーヒーを

ライブハウスで、同窓会と誕生会を開催した。

わたしたちは軽音部の同期で、となりには現役のライブハウススタッフの友人が座っていた。
わたしも20代の多くの時間をライブハウスで過ごし、
それは、パーティー会場や居酒屋を予約するよりも、至極当然の流れだった。

あれやこれや企画を詰めて、
誰も来なかったらどうしよう、という不安を乗り越えて
1ヶ月前にはすべての詳細を決めて、フライヤーの準備をして、なかなかに完璧だった。

そして、当日をイメージする。

ふたりの友人のライブ時間をきっちり確保して、気まずくなったときのためにNintendo Switchも用意して
おしゃべりをしたり、音楽を聞いたり、ゲームをしたり、
わたしたちは大学時代と変わらない時間を過ごす。

そう思ったときに、足りないものがあった。

コーヒーが、足りない。
コーヒーを、飲みたい。

19歳になったばかりのとき、初めてライブハウスでライブをした。
20歳になったとき、「ライブハウスでライブを打ち合わせする企画担当」になった。
例年使っているライブハウスが使えなくて、町田駅のライブハウスにぜんぶ電話して、厚木から下北沢まで電話しまくったのに、どこも受け入れてくれなかった。

「町田駅の反対側にライブハウスがあるよ」と教えてもらったのは、最後の希望だった。
仲良くしていた町田ACTのお兄さんから教えてもらったのが、
町田WESTVOXーーーそののち、20代の大半を過ごすことになったライブハウスだった。

就職活動をしなかったわたしは、言葉通り路頭に迷っていた。
WESTVOXで週に何度かアルバイトをしていたのだけれど、店長が「仕事ないなら、うちで働くか?」と言って拾ってくれたことには、感謝しきれない。

WESTVOXは、スタンディングキャパが250くらいの広さだったけれど、50人くらいをテーブル椅子に座らせることができた。
というと、ライブハウス界隈でいうと「ちょっと変わった規模感」なわけなんだけど、それ以外に変わったことがあるとすれば、コーヒーを提供していたこと。だと思う。
それも、アイスのみならず、ホットも。

アイスコーヒーは、ドリンクバーと同じ仕組みで提供ができるので、まあアリっちゃアリなんだけど、
うちは、烏龍茶と同じマシンで出してたんだけど、ウーロン茶より原液が高価なのよ。
だから、他のライブハウスにはあまりないでしょ?

加えて、ホットコーヒーって
いやあ、忙しいとき頼まれると面倒だったな…
コーヒーメーカーで淹れていた。

もちろん、1杯ずつなんて摘出できないから、1杯頼まれたらサーバーにどかっと落として、残った分はスタッフで飲んでいた。

なつかしい。
ああ、本当に懐かしい。

仕事が終わると、裏で編集作業をしている店長のデスクに、コーヒーを置く。
「西さん、コーヒー飲みますか?」って訊くこともあれば、
勝手に、「余ったんで置いときまーす」って言うこともあった。
西さんはいつも、ブラック。

仕事後にスタッフ3人で飲むこともあった。
それぞれのカップに、コーヒーを淹れる。
ふたりに「コーヒー飲むみますかー?」「ブラックでいいー??」と尋ねる。
田村さんは、だいたいブラック。
古屋さんは、「いつもの」
お砂糖はんぶんと、牛乳。
わたしは、少しだけ牛乳を落とす。

あれだけ一緒にいたのに、何を話したかは覚えていない。
ただ、仕事帰りにみんなで飲むコーヒーが好きだった。

コーヒーが足りない、と思った。

ライブハウスでのんびりおしゃべりするんだったら、コーヒーだった。
いやわかってる、世の中的にはお酒なんだろうけど
でもいまは、コーヒーな気がしてならない。

30代も半ばから後半、土曜日の昼間、夕方には解散の健全な集まりで
わたしたちが求めるのは

いや、わたしが求めるのは、きっと。

そして、スターバックスの「コーヒートラベラー』の存在を思い出した。
1箱、約12杯分。
ホームパーティーにしては量が多すぎるこれを、使うならきっと、いまだ。

ライブハウスに、飲み物の持ち込みは厳禁だってことはわかっていたけれど、「これわたしが買って持ってくけど、ライブハウスのドリンクチケットと引き換えOKにするし、現金で売れた分はライブハウスの収益にしてくれて構わない。ついでに、スタッフに1杯ずつサービスする」という、強気な条件交渉で、持ち込みに成功した。
つまり、わたしには何の利益もないのだけれど
コーヒートラベラー、使ってみたいじゃないか。

何より、ライブハウスでコーヒーを飲みたかった。
あの日、ライブハウスのバーカウンターに立っていたころみたいに。
店のコーヒーを勝手に飲むみたいに。
あのときみたいに

町田WESTVOXは、閉店してずいぶん経つ。
もう、あのころのみんなにはほとんど会わない。
煙草も辞めてしまった。

でも、「ライブハウスにコーヒーが足りない」と思ったわたしは
間違いなく、WESTVOXの松永だった。
「小動物」と言って可愛がってもらい、いちばん年下で、いちばん生意気な
あのころのわたしだった。

もう、小さいのは背ばっかりで、後輩も増えたけれど。
「コーヒーを飲みたい」というのは、あのころのわたしの魂の叫びで、音色で
これからもずっと、消えないと思う。

そしてまた
自分のイベントを企画するときは、コーヒートラベラー、買うと思う。



スタバで働いてる友達に聞いたら、「年のため予約すると安心」とのこと
町田のスタバで予約したんだけど、駅ナカのスタバは取扱ナシって言われたので、
パリオのスタバで予約しました。
ってことで、予約をオススメ!
ダンボールに入っていて保温性はないので、アイスにしました。


(同窓会で感じた、いちばん大切なこと)






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