マガジンのカバー画像

君に伝えたい百の言葉

389
あなたに伝えたい言葉が残っている。見失っても、百個積んだ先に何かがあるかもしれない。光を追う者のエッセイ集
運営しているクリエイター

#習慣

足裏の北極星

そのときが訪れた。 昨日までは疑いながら、図っていたのだけれど 今日だ、と確信する。 * シャンプーとか洗剤の、詰め替えのタイミングって難しいと思う。 わたしはいつも、「まだいける」と粘ってしまうのだけれど 「次の液体を出すのが大変な状態」で使い続けるのはストレスなので、そうなる手前で詰め替えるようにしている。 コンディショナーは、今日まさにそのタイミングだった。 シャワーを浴びながら、そのままボトルを洗う。 少し悔しいけど、頑張れば使えただろうコンディショナーの塊が

晴れた日、午後のカーテン

左手の指輪を忘れた。 ここのところ、もう何年になるだろう。 ずいぶんと長いあいだ、左手の中指に指輪をしていた。 指輪を忘れると、寂しい。 なんだか、落ち着かない。 忘れないように、いろんな工夫をした。 財布にしまったり、鍵と一緒にキーホルダーにくっつけたり。 忘れてしまった日には騒いで、リボンを巻いてもらったこともある。 だから、細心の注意を払っていた。 左手の中指は、わたしのポラリスだった。 迷っても帰ってこられるように、幼い魔法がかかっていた。 わたしは、いまでも

ドレッシングをかけすぎても、ハイチュウをみっつ食べても。

最近、サラダが美味しい。 前世は、草食動物だったんじゃないか、と思うくらい。 味覚が完全に戻ったわけではないので、「味そのものが」という感覚ではなくて、 葉っぱが身体に染みるなあ、としみじみしてしまう。 * すべてのものから異臭がする、という史上最悪な状態を少し抜け食べられるものが増えてきた。 何が良いかって、ドレッシングを選べるようになった。 それぞれの味の違いがわかる。 シーザーとか、 キャベツ用ドレッシングのなんか酸っぱい?のとか、 焼肉のタレのフルーツっぽい味と

くすぶる火

実は、禁煙している。 何が、”実は”なんだよ と、人は言うかもしれないけれど わたしとしては「実は」以外の切り口を見つけることができない。 実は、禁煙している。 禁煙して、もう1ヶ月ほど経つ。 喫煙歴は15年ほど。 仕事中はほとんと煙草を吸わないけれど、息抜きの数本と、あなたと喫煙所でおしゃべりすることを大切に生きてきた。 ある日、病院に行ったら「禁煙しましょう」と言われた。 次にできることはそれだ、というようなことをやんわりと伝えられ、「わかりました」と言うしかなか

いつか、遠くへ行ってしまっても

昨日眠ってしまったのは、まくらのせいだ。と思っている。 実際のところは怠惰なわたしのせい、というのはわかっているんだけれど まくらの吸引力というか、新しいこのまくらは、もふもふしている。 使い古して、べたんとなったアイツとは、ぜんぜん違う。 包まれている、と思う。 それは、許されることに似ている気がした。 買ってよかった、と思う。 長年の付き合いのまくらを手放して、IKEAで500円のまくらを買ったのは、数日前の出来事だった。 ずいぶんと悩んだ。 いや、悩んでいた。

まっすぐな靴底で歩きたかった

階段を歩いているとき、前をゆく人の足元を見る。 スニーカーの靴底が、斜めにすり減っていた。 わたしはそれを、懐かしい気持ちで見つめる。 ああ、そうだ。わたしもそうだった。 * いまでも、わたしの靴底は内側のほうから薄くなってゆく。 それでも、昔よりはずいぶんマシになった。 20歳を少し過ぎるまで、わたしは極度の内股歩行だった。 いまでは、あの頃の比べると「極度」ではなくなったのだと思う。 あの頃までのわたしは、ずいぶんとひどい歩き方をしていた。 子供の頃は、ずいぶん

まとい、守られて

友達からの荷物に、ピンクの容器が入っていた。 ずっしりと重く、BODYSHOPのロゴ 詳しい説明を見ると、「濡れた身体をマッサージするように」と書いてあったので、ボディ用のスクラブみたいなやつだと理解した。 二十代の頃は、そういうのがとにかく面倒な人間だったと記憶している。 パックも嫌いだった。なんかべとべとするし。 大切なときや、特別なときに使うもの、に対する向き合い方が、とにかくへたくそだったとも思う。 この1枚のパックを、わたしは一体いつ使えばいいのだろうか。 そんな

1ヶ月後には、我が者顔でオフィスを歩いてる

わたし、仕事辞めても大丈夫かもしれない。 そう思った日のことを、覚えている。 「仕事を辞めても収入があるから」とか、そういう話ではなくて 「別の仕事に変えても大丈夫」のほうが、適切な表現かもしれない。 家賃や光熱費を払うための収入がなくなってしまうのは困るし、それを得るためには「雇われること」がわたしにはまだ必要だった。それはいまも変わらない。 前職は流行病の影響でうっかりクビになってしまったので、これは前々職のときの話になる。 初めてのオフィスワーク。 務めて1年が経

あたたかな旅

友達から荷物が届いた。 宛名を確認してみたら大好きな人の名前だった。 少し前に、わたしからも荷物を贈っていた。 あなたもわたしも大好きな、ポケモングッズ。 大好きからの荷物は、やっぱりあなたもわたしも大好きなもので、スターバックス福袋みたいな中身だった。 スタバのタンブラーとコーヒー豆、紅茶とメッセージカードが、やさしく詰め込まれていた。 あなたへの荷物を贈るとき、わたしは勝手ににっこりとしていた。 受け取るときも、そう。 あなたにも、そんなやさしさが訪れているといいな

ピアノとわたしの1年間

そろそろだな、と思っていたら今日だった。 本日、2021年1月22日 ピアノ日記の1周年記念日でした。 1年前の今日、 はじめて、SNSに自分のピアノを公開しました。 いままでバンド活動で音源を載せてきたことや、へたくそな弾き語りを載せてみたことはあったけど、「ピアノ1本」っていうのは初めてで。 でも、できないわけがなかったの。 わたしは音楽活動の中で、「朗読+即興ピアノ」のスタイルでライブをしていた時期があったから、あのときのピアノをそのまま弾けばよかった。 それ

新しい季節を迎え撃つ、準備をしている

朝起きたら、窓を開けて煙草を吸う。 という習慣は、今でもわたしに根付いている。 無職になったときに、 そしてそれは、外出を控えていた時期のことだったので、せめて窓を開けて、天気や外の空気を感じよう。と思って、始めた習慣だった。 最初の頃は春なのに寒くて、 いまは、寒さと共に春に向かう季節へと変わった。 暑い夏も、寒い冬も わたしは、窓を開け続けた。 どれだけ短い時間でも、わたしは外を見つめる。 季節ごとに、そして毎日かすかに違う匂いがするといえど、 毎日同じ場所を見つ

「当たり前」と「憧れ」でまとった服は、 あなたに適切なものですか?

「疲れちゃったんだって」 それは、同居人がつぶやいた”友達の近況”だった。 そうか、ちょっと様子がおかしいと思っていたんだ。 そういうことだったんだね。 疲れちゃった、っていうのは 「頑張った」ってことだと思う。 別に身体をすごく動かしたわけじゃなくても、 毎日を繰り返して「何もしてないよ」と自分では思っていても 何も思考しない日なんて訪れなくて、思考や発信、選択は時としてわたしたちから奪ってゆく。 時間、体力、気力、 名称や事象は様々だけど、わたしたちは何かを消耗しな

固形チーズの思い出

うとうとしていたら、眠っていたらしい。 そろそろnoteの更新準備を始めたい時間だと気づき、毛布を跳ね除ける。 起きたらまず、口をゆすぐ。 それから、飲み物を準備して、煙草に火をつける。 わたしは、ぼやりとしている。 同居人が、いくつかのことをわたしに話しかけるけど、消え入りそうな声で「うん」とか、「そう」とか「ありがとう」と言うのが精一杯だった。 まだ、脳が覚醒していない。 「冷蔵庫にチーズが積んであるけど、気にしないでね」 チーズ?? わたしの脳は、急に速度を上げ

スマッシュブラザーズが教えてくれた、「勝ち負け」の世界で生きてゆくこと

「もう、君とは遊ばない…」 唇を噛みながら、そう告げた日を覚えている。 しかしながら、その悔しさは薄れる。 感情って、どうして同じ形を維持できないんだろう。 維持すべきではない、人間の本能だろうか。 遊ばない、なんて言いながら怒っても、時間が経てばまた一緒に遊ぶ。 そうしてある夜、わたしはつぶやいた。 「わたし、強くなりたいんだ…」 * Nintendo Switchというゲーム機と暮らして、数年になる。 最初は兄から借りていたのだけれど、おもしろすぎて手放したくな