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あたたかな旅

友達から荷物が届いた。

宛名を確認してみたら大好きな人の名前だった。
少し前に、わたしからも荷物を贈っていた。
あなたもわたしも大好きな、ポケモングッズ。

大好きからの荷物は、やっぱりあなたもわたしも大好きなもので、スターバックス福袋みたいな中身だった。
スタバのタンブラーとコーヒー豆、紅茶とメッセージカードが、やさしく詰め込まれていた。

あなたへの荷物を贈るとき、わたしは勝手ににっこりとしていた。
受け取るときも、そう。
あなたにも、そんなやさしさが訪れているといいな。
わたしの自慢の友達だから、きっとそんなふうに思ってくれているに決まっている。
勝手な確信は、わたしをさらにあたたかく、いさましい気持ちにさせた。

白いタンブラーは、どんな気分のわたしにも寄り添ってくれるような、すっきりとしたデザインだった。
蓋にについている銀色のセイレーンが、ほんとうにかわいい。
真ん中が少し細くなっていて、手が小さいわたしにも持ちやすいのが嬉しいし、
洗いやすいデザインも、やっぱり嬉しかった。

年末に別の友達からもスターバックスのタンブラーをもらっていて、
こっちは青とピンクのラメが、うきうきさせてくれる。


手元に、タンブラーがふたつ。
これは、合図だ。
始まりと変化を告げる、鐘が鳴る。


わたしは使っていなかった古いタンブラーを捨てた。
元彼に買ってもらったやつで、とりあえず連れてきてしまった代物たちは、もう長年使われていなかった。

そしてわたしは、タンブラーにティーバッグを落とした。

いままでは、ティーポットでお茶を淹れてマグカップで飲んでいたけれど
「あたたかくして過ごしてね」というメッセージに誘われ、わたしはタンブラーでお茶を飲むことにした。

わたしは、お茶の温度が変わってゆくことを愛していた。
熱くて飲めないお茶が少しずつ冷めてゆくその過程が、美しいと思っていた。
いまでも、そう思っているわたしもいる。

タンブラーのお茶は、びっくりするくらいにあたたかさを保ってくれた。
お茶を淹れるときの何度かに一度は、淹れるだけで満足してしまってすっかり冷めたあとに飲んだりしていたのだけれど
タンブラーのお茶は、ずっとあたたかい。
淹れたてのやさしさを、守ってくれている。


タンブラーを抱きしめて、わたしはひとり頷く。
タンブラーのことは「水筒」だと思っていたから、外へ出かけるときの相棒だと信じていた。
外へ、
旅へ、
冒険へ
歩みだすことに不安はあるけれど、「いつものタンブラーでいつものお茶を飲めること」は、わたしを勇ましくさせてくれた。

家の中でも、同じだった。

パソコンの前に座って、物語を紡ぐ
ゲームの世界で冒険をする
そんなわたしの歩みを、タンブラーはずっと見守ってくれているような気がしている。
だいじょうぶだよ、ここにいるよ。
そんなやさしさを、わたしは勝手に受け取っている。
友達が託してくれた「あたたくしてね」という願いと一緒に。


わたしは今日も、お気に入りのタンブラーと旅を続けている。
新しいタンブラーがふたつ。
気分で入れ替えて、どちらもやさしくて、お茶はずっとあたたかくて。

ありがとう、
わたしの日常は、ずいぶんあたたかく、やさしくなったよ。






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