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新しい季節を迎え撃つ、準備をしている

朝起きたら、窓を開けて煙草を吸う。
という習慣は、今でもわたしに根付いている。

無職になったときに、
そしてそれは、外出を控えていた時期のことだったので、せめて窓を開けて、天気や外の空気を感じよう。と思って、始めた習慣だった。

最初の頃は春なのに寒くて、
いまは、寒さと共に春に向かう季節へと変わった。

暑い夏も、寒い冬も
わたしは、窓を開け続けた。
どれだけ短い時間でも、わたしは外を見つめる。

季節ごとに、そして毎日かすかに違う匂いがするといえど、
毎日同じ場所を見つめることに、唇を噛んだ朝もある。
朝ではなくなってしまったことも、たくさんある。


今日は晴れていて、なんだか気分がよくなって、
まだまだ寒いけど、いつもより少し長めに窓を開ける。

そしてわたしは、”忘れていた”と気づく。

6月の雨の日、誓ったではないか。

これからまた、忙しい日々がいつか来るかもしれない。
もしかしたら、禁煙する日もくるかもしれない(予定はないけど)
引っ越して、換気扇の下(喫煙所)から外が見えなくなるかもしれない。
それでも、この気持ちを、ずっと覚えていたい。
雨が降るたびに、いや、何回かに一度でもいい。
雨が降っていて、
もしわたしがふさぎ込んでいるような未来が来たら
雨音に耳を傾ける余裕すら失う日がきたら、
ざあっと強制的にカーテンを開けて、5分でいい。
雨を見つめて、正気を取り戻したい。

※2020/6/13「雨をずっと、見ている」より


9月になったとき、わたしはこのエッセイのことを思い出していた。

“正気”と、あの日のわたしがいった、その意味を、なんとなく理解できているつもりだ。
「大丈夫だよ」と思いたかった。
大丈夫にしたかった。
でもきっとあのときは、「何をすれば大丈夫になるのか」あんまりわかっていなかったと思う。
いまは、ちょっとわかる。
なんとなく、「生きる気力」みたいなもので、かんたんに言ってしまえば前向きな気持ちで、わたしはいまそれを、持ち合わせている。

※2020/9/25「雨の約束」より


そしてまた、春に向かう季節になって
わたしは、あの日の雨を思い出している。

あの日の、わたしのこと。

「大丈夫だよ」と思いたかった。
大丈夫にしたかった、わたしのこと。
「生きる気力」を掲げながら、季節の匂いを感じ取り、天気に一喜一憂する余裕を持ち合わせたい。
そう願った、わたしのこと。


不安は、ずっとある。
6月のわたしにも、9月のわたしにも
そして、2021年を迎えた1月のわたしにも。
何かに、追い立てられているような気持ちは、形を変えてずっと寄り添ってくる。

それでも、気力とか余裕を頼りに
目的地がないままの地図を掲げて、
わかっているのは「ここではない」ということだけ、何かを求め、彷徨う魂だけ。
わたしは、安寧よりも彷徨い続けたかった。
たぶんまだ、何かが足りない。


落ち込んだり、手を動かしたりすることを繰り返して
名前のついた不安をひとつずつ解消したら、次の不安が現れて
モグラ叩きみたいな毎日かもしれないけれど、

覚えていたい。
あの日、キッチンに座って誓った、わたしのこと。

覚えていたい。
名前のついた不安を、ひとつずつ片付けてこられた、わたしのこと。


わたしは今日、
新しい季節を迎え撃つ、準備をしている。





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