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「教師」にとって3月は、最高の月である。卒業式を筆頭に、承認と感謝の気持ちが学校中に広がる。どんなにブラックな勤務体系であっても、子どもの問題行動や保護者対応に悩まされたとしても、この時期を迎えると、「来年度も頑張ろう!」と思わされてしまう魔法の月が3月である。

しかし、今日は朝からいつもと違う雰囲気であった。こんなに騒々しい職員室は、未だかつてなかっただろう。

飛び交う意見は、もちろん「休校に向けてどのような対応をすべきか。」である。教育委員会も「検討中」とのことだったので、「とにかく、今日から休校となったと想定して、できる限りの準備をしよう。」ということになた。

教室に行くと、子どもたちも休校の話題でもちきりだ。落ち着いて朝の会をする雰囲気でもないので、早速説明をした。

「まだ、みんなで話し合っている途中だから、決定した説明するね。」

と、現在の状況を話していると、いつもあまり手を挙げることのない子どもが話し出した。

「先生!今日の予定を変更して、係活動を入れてほしいんですけど。」

その子は、新聞を書いて貼り出す係活動を女子二人でひっそりと楽しんでいた。二週間ほど前からは、クラスのオリジナルアルバムを作ることをみんなに提案して原稿を書いてもらっているのだった。しかし、まだ数人原稿を出していないので、時間を取ってもらいたいということだった。

僕は、このような申し出が大好きだ。少し迷ったふりをしながらも、「どうしてもやりたいことがあるなら!」ということで、全体に賛否を問うと、全会一致で可決された。

係活動の時間、新聞係の二人が集めた原稿を持ってきて、

「先生、これから原稿のここ(紙の真ん中あたり)に穴を開けてまとめようと思うんですけど、どうしたらいいですか?」

という質問をされた。僕は、「事務室にリボンがあるから、それを切って穴に通せばいいんじゃないかな。」と何気なく提案した。二人は、

「分かりました。もらいに行ってきます!」

と言って、事務室へ向かったようであった。

まとめ方を聞いた本当の理由

放課後の職員室。隣の教室の先生と世間話をする中で、係活動の話題になった。僕が、「今日で休みに入るかもという話をしたら、新聞係の子たちが、係活動の時間がほしいって言ってくれたんですよ!」と嬉しい報告をした。すると、

「そういえばあの子たち、リボンが結べないから結んでほしいと頼みにきましたよ。『先生が来る前に早く!』って相当焦っていました。」

と笑いながら話してくれた。その話を聞きながら、

「あれっ。クラスアルバムの原稿は、僕が持っているのに、リボンはまだついていないぞ?」

と不思議に思った。詳しく話を聞いていくと、新聞係は、クラスアルバムの他に僕へのプレゼントを作ってくれていたことに気が付いた。僕のところにわざわざ質問をしに来たのは、プレゼント用アルバムを完成させるためだったのだ!

このような出来事があるから教師はやめられない!今年も3月の魔法にかかってしまいそうである。

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