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#短歌
短歌十八首 【2024年9月まとめ】
【9月自選五首】
まつさらなおえかき帳にぐるぐるぐる、あかい太陽、太陽たるきみ
むつちりと干し柿食ひちぎるやうに引き剥がしたる古傷がある
時雨月こぼれてしまふ胸のうちガラスビーズを拾ひ集めて
バス停のベンチに坐る老女の背 コミュニティバスのまるみに似たり
薫衣草かをりゆたかに紫のくもゐの庭に咲きほこるかな
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だんごむし空を飛ぶつて云ふの
短歌二十一首 【2024年8月まとめ】
【8月自選五首】
リビングでだめになる午後 母と子でクールなペンギンさんを取り合う
藍色のカーテンぜんぶ捨てたのに思ひ出はまだ空き部屋に巣くふ
ぱ、い、な、つ、ぷ、る、うしろ姿にいつまでもとらはれてゐる夏の青天
湿原に沈む秘めごと数ふなかれ 少女の影は迷宮に消ゆ
しろたへの波が寄すればいざよひの月こそ出でめ袖はぬらさじ
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土曜日の朝六時
短歌二十二首 【2024年7月まとめ】
【7月自選五首】
くちびるにふれてわたしの夏が来る ひと匙すくふコーラフロート
波跡をきみの泪の跡としてそよと夏宵ゆつくりたどる
吸ひ殻のやうに捨てられうつほにてただ残映となりゆくわたし
頼りなさ ひとり暮らしのキッチンで野菜炒めをつくるくらいの
一年の成長を知る 並びゐてタンバリン打つ子は誇らしげ
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いちねんせい ふでばこの裏にこつそ
短歌二十二首 【2024年6月まとめ】
【6月自選五首】
むしゃくしゃを蹴り飛ばしたら真夜中のドライブスルーですき家に寄ってく
ふたたびの逢瀬に染めるかんばせをいかなる花の色にたとへむ
天の河ひつくりかへして土砂降りの涙としてゐる星祝の夜
終わらない夏に憧れブルーハワイぶちまけるように飛び込む 飛沫
あとがきも余すことなく読みをへて閉ぢたる本のため息をきく
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ひょっとしてあな
短歌十四首 【2024年5月まとめ】
【5月自選五首】
いっこ、にこ、たいせつそうに数えては路傍の石を貴石にしてゆく
あらたしき言葉を吸ひこむ 図鑑見てしーらかんすとくり返してゐる
泣きつかれしみいる甘さいつだってぼくの味方のフルーツオ・レ
はないちげ紅碧に咲く とほき日にきみとうずめし秘密の在り処
揺らく夢 ゆるされぬ夜に欠けてゆく月におぼゆる人のおもかげ
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春の道 吾子
短歌十首 【2024年4月まとめ】
茜さすうすむらさきのランドセル吾子のせなかはすこしおおきく
川辺には緋寒桜、見上ぐればわたしの春がリライトしてゆく
アスファルトつよく蹴りだし飛び立った背にはおおきなおおきな翼
ひるさがり耳朶のにこ毛が陽に透けてまどろむ吾子のぬくもりを抱く
花柄のたまのれん一緒につくったね 思い出は消えない祖母の家
雌伏する星霜を経し三柱は焔と凍りの竜を背負ひて
じゃがいもはじゃがいもらしくごろごろと
短歌二十一首 【2024年3月まとめ】
【3月自選五首】
ひるがえる白のカプリーヌ、花の陰翳、反時計回りのデジャ・ヴュー
靴ずれがなおらないままヒール履き歩調が乖離してゆく春寒
それいゆつておいしさうねといふひとの瞳のなかに咲いてゐる花
春の闇ものやはらかくひろがりて白く妖しく梅の香ぞする
まどひきて今もまどへり雪の果て月が満つれば若芽生ひそむ
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特別なログインボーナスとして
短歌二十首 【2024年2月まとめ】
【2月自選五首】
お手本のとおりきれいに折り目つけぱふりとひらく四角の正しさ
たどたどしい英作文のように、訳:あなたが好きですずっと前から
そうやって虜にするの新しいピアスに気づくあなたの指先
言えないよきみの背中が遠ざかる春時雨ふる三月の嘘
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ふるさとの畦道ゆけばそよ風にあの子の茶色いしっぽが揺れる
六歳の娘のあはきをとめごころスカー
短歌八首 【2024年1月まとめ】
【1月自選三首】
何も得ぬ人生だと思いたくないから北限を目指して歩く
遠き日の歌がきこえる てのひらで溶ける風花の涙のつめたさ
冬の夜の月かげ澄みて水底によこたふきみに花を咲かせり
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おさなごの今日のできごと聞きながら実家で囲む鍋はあたたかい
教えてよ懇々と胸の奥底できみが育てた夢のかがやき
太陽光発電パネルが整然と並ぶ田んぼの跡地にた
短歌九首 【毎日お題まとめ⑤】
◯ハロウィン
Trick or Treat? 菓子の籠持ち黒レースのヴェールの下で紅き舌なめずり
◯Apple
512ギガのうち本当に大切なものはどのくらいですか?
◯ケーキ
ひとり時間しあわせはここにあるから びわ湖ブルーのケーキを食べる
◯白
きれいねと言ってあなたがふれたから白いリボンは蝶々になった
◯文学フリマ
再就職して「母」でない私になり文学フリマ
短歌十二首 【2023年12月まとめ】
澄み昇る月かげ木の間のあはひより冬に磨かるる君をぞ照らさむ
独り立ちして思い知ることがある きつねうどんの透きとおるだし
星屑にまぎれたまま生きてきたのに射手が狙いし紅き心臓
喪った恋を引きずる 板チョコに齧りついたらあふれる甘み
いつの間に似てきたのだろう弟の背恰好に父の面影
不確かなことほど心を締めつけて眠りを浅くする冬木立
イヤフォンで聞くきみの声しらしらと解けない魔法のように降
短歌二十三首 【2023年11月まとめ】
【11月の自選六首】
冬の陽に桃いろほころぶ返り花 わたしのなかにふたつの心音
草の穂がささめく空は澄みわたりあなたの名前にこめた秋の香
兆しすらないまま君はいなくなり小さな鍋で食べる湯豆腐
童心のやはきところとしてあらむ ウーパールーパーのましろき膚
若冲の白象の目のやさしさできみはカンバスに雲を描けり
どくけしそうばかりが溜まっていくかばん 意外と世界はやさしいと知った
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短歌三十首 【2023年10月まとめ】
【10月自選五首】
人らしく在りたいだけの吾亦紅どうして普通になれないんだろう
月白の空のふところ 何ひとつ障害のない生き方ってあるの?
Good night. 小さなきらめき抱きしめてネオンテトラの群れにまぎれる
この眼鏡外したらわたし鳥になる 知っているのはあなただけでいい
「開け胡麻」のごと開く裁縫箱にはくるみボタンの花園がある
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