短歌三十首 【2023年10月まとめ】
【10月自選五首】
人らしく在りたいだけの吾亦紅どうして普通になれないんだろう
月白の空のふところ 何ひとつ障害のない生き方ってあるの?
Good night. 小さなきらめき抱きしめてネオンテトラの群れにまぎれる
この眼鏡外したらわたし鳥になる 知っているのはあなただけでいい
「開け胡麻」のごと開く裁縫箱にはくるみボタンの花園がある
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くちづけも睦言もあしらってBubble,貫きとおすわたしの純情
虚ろなる瑕を責められても微笑みを絶やさずダイヤモンドは割れた
はてしなく晴れわたる空に捧ぐよう紫苑が揺れる 君を忘れない
お見舞いの帰途、秋日和 コンビニで知るガリガリ君のあおいやさしさ
丸洗いしたクッションのワンちゃんが並んでくったりしているベランダ
伊賀越えで通りし近江の南端に坐する磨崖仏 寄り添ふ卯の花
なみだ河いつかの契りは流れゆき ただ有明の月のみぞ澄む
魔がさして摘み取った花はあだに散り疼ぐ心に宵闇が迫る
勝敗の決したはじめてのリレー後にみなが天高く笑む年長児
園の個人マークが姉弟おんなじで私はリスの母親らしい
子ふたりの手を引き歩くふるさとの小径を先導する道をしえ
ルリカケス 茜が夜に溶け出して 瑠璃、黒へうつろふ空の羽根色
BBC湖国のニュースを見ればつい気に留めている琵琶湖の水位
いつもより早く起きたし梨を剥きしゃりりと食めばからだに沁む秋
日当たりのよいベランダで羽休めしている蝶がふるわす秋の律
左手の母指球にあった疣のこと思い出してときどき撫でる
吾子の手で破壊されたミニカーから飛び出してくるバネの晴れ晴れしさ
この空が燃え尽きたってぼくたちはまた新しい地図を描ける
手をつなぎいっせーので飛び越える きみの生きづらさ 母のふがいなさ
牛乳と希釈タイプのコーヒーがまじわっていく 私はひとり
夏雲の頂からすべりおりたらきみに射抜かれて羽が消えちゃった
◎おどろく三首
感嘆符を「びっくり!」とおぼえし吾子は幾多のおどろき母に伝へたり
秋のあはれ そこはかとなき空に舞ふ木の葉の錦が織りなす気付き
秋来ぬとおどろく荻の風吹けど濡るる袖にさへ月やどるまじ
◎短歌ユニット『俄雨』さんの出題
万能な呪文はなくてこの瑕を花束にする人がいる夜
光陰は脱皮のはやさ すこしずつ七彩になるきみの羽衣
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