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【 商品企画 】日本製商品の値段が高いのは「賃金の高さ」と「意識の高さ」です。

高コストであることを認め、強みにするマインドを持つ。


東京・蔵前にあるレザー縫製工場のオリジナル商品は、一定層のファンを獲得していて、催事に出ればしっかりと販売数、売上を作る。そこそこの高単価(メゾンの1マーク下くらい)なのにも関わらず。その好評の仕組みを知りたくなったボクは、商談で伺ったのに、ついインタビューで質問責めに(魅力ある人・ものに出会うとすぐ編集者モードに)。笑

その縫製工場の社長との会話(取材?)で「ウチらは、地代・給料・物価が高い東京のど真ん中で物づくりしているんだから(いろいろ削減しても)コストが高くなって当然だと割り切っているよ。逆に東京のど真ん中で物作りが出来ていることをプライドにして、どう商品に反映させるかに一生懸命だよ」と話してくれたことが一番強く残っている。

雑誌の仕事時代を通しても、コスト高であることをあれだけはっきり言ったのは後にも先にもあの社長だけ。横柄というニュアンスを除いた強気さは、誤魔化しがなく納得できるものだった。

日本の職人だから作ってもらえる企画・デザインもある。


弊社ハンドサムズが運営するアパレル小物ブランド「SABLE CLUTCH/セーブルクラッチ」は、ZOZOTOWNにオリジナルショップを展開し販売。
現在は、国内生産100パーセント。日本製にすごくこだわっているわけではないのですが、総合的にみて、結果、メイド・イン・ジャパンに。

商品の企画がある程度固まってきたら、国内取引工場と海外工場(中国)に見積りを打診するが、企画商品の仕様・素材を確認した海外工場はやんわり作りたくないアピールをしてくる。笑 ココの仕様をやめて、素材をコレに変えたら低コストで出来ますけど、、、な感じで。

決して海外工場がダメってことじゃない。大量に生産すれば工場の方々の手も慣れくるので上手いです。ただ、手が慣れる前に作り終わってしまう発注数量だとどうしても粗が出てくるというか、お互いのためじゃない。

セーブルクラッチの企画は、実際に使って惚れ込んだ素材を、ファッションとしての見え方、モノとしての機能面、どっちも調子良いんで使ってみませんか?みたいなスタンスがある。ただ、そういう素材ってちょっと小難しくて扱いにくく、縫製工場泣かせ、裁断工場泣かせ、なものが多い。

だけど、国内工場の多くは、生産効率を下げる素材にも真剣に向き合い、打開策を見つけ、完成品へと仕上げていく。企画、マーケティングした人たちの労をすごく汲み取ってくれる印象がある。

ONE&SHOULDER BAG(M) - CORDURA/SEMI CLEAR

アウトドアシーンでもよく採用されるこの生地は、シリコンコーティングを施して耐水・撥水・防汚に対して優れた機能性が魅力のため、間違って針穴を1カ所でも開けてしまうとOUT。気を遣う。そしてお客様に使ってもらうまでは、裏面のポリウレタンコーティングもきれいな状態にしておきたい。そういう穴やキズがないか最終検品にも細心の注意が必要だし時間もかかる。海外の効率化優先にそぐわない商品。笑

作業工賃以上に「いいものをつくりたい」意識が断然高い

セーブルクラッチにとっては非常にありがたい心意気が日本の工場、職人さんにあり、企画側の仕様書には書かれていない細かなフォルムを組み込んでくれたりもする。海外の一時的な縫製スタッフでは気づけない。

長年チャレンジしながら物を作り続け、使う人のことを考えて作ろうとする職人さんだからこそ、提案したいこともあり商品に反映してくる。
一時的なスタッフに作ってもらうもの、生涯職人に作ってもらうもの、仕様書と素材が同じでも、出来上がったものの「価値」はまったく違ってくる。

オシャレさを感じさせるやや透け感のある素材は一枚仕立てだから意味がある。
裏地をつければ作りの粗を隠せるが、ファッション性が損なわれてしまう。

例えばフォルム。素材の特性を見抜き、アール位置を調整し、より物が入るよう、また、大量に物を入れてもファスナー開閉しやすいようにしてくれた。企画段階では、サイドの縫い合わせ部分は(正面から見て)直線の仕上がり予定でしたが、なめらかで滑る素材で苦労しながら、ややアールがかった(真ん中よりやや上部分)フォルムを生み出してくれた。数ミリ単位の調整。それにより、見た目のデザイン性と使い心地を両立させた。

ショルダーバッグは荷物を入れて持つと、両方のサイド(本体とベルトの付け根)が中央に近づいてくる。そのときにサイドが直線だと、極端に言えば「V」の文字のような形になるが、アールを付けることでカバンらしいフォルムになり、持ったときの見た目の印象が全然違うのだ。

日本の最低賃金が他国に比べて高いから、だけじゃない!高コストだからこそ、日本の工場の物づくりは「より、いいもの」に仕上げようとする姿勢、意識の高さがあり、コスト以上の価値がある。

技はヨーロッパで勝負できても、アジアの作業工賃と常に比較される


ハイブランドが、特に大切にしているコレクションラインなどをお願いするヨーロッパの職人さん(例えばレザー職人とか)たちの作業工賃は桁が違う。それがブランドバリュー含めて高プライスに反映されている。
ただ、アジアは低コスト工場も多いので、日本の工場は常にその低コストと比較される現状。せっかくヨーロッパ工場に引けを取らない技術があっても
だ。そういうのに気づいていくと、日本製のほうがお得感がある気がするし、微力ながら応援していきたい。

日本製の良さ、日本の職人の良さ、なかなか伝えにくい、言葉にしにくいと思っていたので。単に日本製=安心感だけじゃなく、商品クォリティにも反映があるということ。昔に手がけた吉田カバン別冊の記事を書いていたら「日本製」「メイド・イン・ジャパン」が気になって、この機会に書き出ししてみた。

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