築90年の邸宅リノベに、DIY参加して変わった「仕事と暮らしへの向き合い方」(後編)~ハンディハウスプロジェクト10周年インタビュー vol.2
結成から10年になる、ハンディハウスプロジェクト連載企画。
ハンディ流の家づくりを行なったプロジェクトオーナーさんたちの暮らしに変化はあったのか!?オーナーさんに会いに行って直接インタビューしてみました。
今回は、2015年に、築90年になる逗子の邸宅を改修した塚越さんご夫婦と、担当したハンディメンバー加藤の対談、後編。実際に住んでみてから、塚越さん家族がどんな風に感じたり暮らしに変化はあったのか、お話を聞きました。
自分の手で家を作ることは、責任感と寛容さ、そして職人へのリスペクトを生み出す
加藤:このインタビューで特に聞きたかったことがあるんです。ハンディはオーナーさんと、設計から施工まで一緒にやって、最後完成したときに打ち上げも一緒にやる「妄想から打ち上げまで」っていうのをコンセプトに掲げて活動しています。
暁さん:うんうん。妄想から打ち上げまでやったね。楽しかった。
(写真)完成後の記念写真。4チームのメンバーと塚越さん家族とともに。
加藤:この期間って、“新しい家に住むための準備体操”と思って提案してるんです。しっかりとした準備体操ができれば、初めから愛着が持てるだろうし、家への理解が深まって暮らしも豊かになるんじゃないかと思って。実際、塚越さん家族は住んでからどうでした?
暁さん:僕個人で言うと、結局、自分で手を動かして家を作ると、家への責任を自分で引き受けた気持ちになったね。大工さんに作ってもらったというより、自分で作った家になるから、メンテナンスとかも自分でするようになりました。
ーーけっこう直したりしてるんですか?
暁さん:はい。3年前の台風で、竹垣が20メートルほど倒れたんですよ。まだ保険に入れてなかった頃に起きたので、誰かに頼むと100万円くらいかかってしまうことがわかり…。どうしたかっていうと、自分で編んだんですよ、竹垣を。
園生さん:え?自分でやるの?ってびっくりしちゃった。
暁さん:3か月ほどかかりましたけどね(笑)。でもハンディと家づくりしたからこそ自分ができることもわかってきて、これだったら自分でやれるかなと思ってやりました。
園生さん:家を完全にお任せで作ってもらってたら、こういう発想にはならないかもね。すぐ電話してるよね、住宅メーカーに。
加藤:電話で「どうなってるんですか!?」って聞いちゃうやつですね。できることとできないことが見えてくると、「壊れてもなんとかなる」みたいな、家に対する寛容さも生まれますよね。
暁さん:それはすごいあるね。
加藤:僕たちにとっても、オーナーさんが寛容でいてくれると、いろんな提案がしやすいですね。チャレンジしてみたい提案があったりするときに、何か問題が起きて不具合が生まれるっていうマイナスよりも、やってみてプラスに働くほうが圧倒的に大きかったりするんですけど、オーナーさん側に寛容さがないと提案できなかったりする。「もしうまくいかなかったら直せばいい」くらいに思ってくれると遊び心も生まれますね。
ーー自分で作ると色々マインドも変わりそうですね。
暁さん:一方で、自分の手を動かしたことによって、逆にプロへのリスペクトが引きあがってるんですよ。
ーープロへのリスペクトが引きあがる、ですか?
暁さん:自分たちが手を動かして実際に作ってみたがゆえに、自分たちには到底できないこともわかって、プロってすごいなと。ここまでは自分でできるけど、こっからは無理みたいなところが、ハンディとやる前よりもはっきり見えるようになった。
ーーなるほど。そういう気づきも生まれるんですね。
暁さん:それで無理ってなって、SOS出すときも、顔が見える関係になってる人たちばかりなので、安心して相談できる。
園生さん:まずは自分で作ってみる。すぐに電話しないっていう親の姿を見て、子どもたちにもいい影響あるといいなぁ。マンションに住んでいたときは、大金はたいて買ったっていう思いがあるから、すごい消費者マインドだった気がする。ちょっと不具合が出たら、住宅メーカーに対してがっかりしたときもあったけど、この家に住んでからは自然とそういうのがないよね。まずはやってみてますね。
ーー家づくりに関わらず、そういう寛容な気持ちって大切ですよね。
加藤:家なんてしょっちゅう作れるわけでもないし、一緒にDIYする機会も限られていたりするんですが、その経験をすることで、家に対する見え方とか価値観とかが、大きく変わること自体が「価値」なのかもしれないですね。見え方が変わるだけでも、きっといい住まい方ってできるんだなって、お話聞いていて思いました。嬉しいですね。
家づくりはまだまだ終わらない 今後も住み継いでいく
四ツ屋:僕からも質問があるんですけど。
暁さん:はいはい、何でしょう?
四ツ屋:この家に対する、次の野望はありますか?この後、ここをつくり変えてみたいとか。
暁さん:それで言うと、奥に蔵があって、まだ手つかずなんですよ。曾祖父が残した蔵書が150箱分くらいあるのをどうにかうまく残したい。まずは本の整理からになりますが、ライブラリーを作れるといいなと思ってます。
四ツ屋:それは素敵ですね。外の人も入れるようにするってことですか?
暁さん:大々的に外の人にも開こうとは思っていないのですが、半開きくらいにはしたいなと思ってます。僕は、この家においては、あくまでも「管理人」でいたいなと。そして、この家を次の世代、次の時代に受け継いでいきたいという思いがあるので、どうまた新しい息吹をもたらしたら面白いかとか考えていきたいですね。
(写真) 庭を眺められる贅沢な空間
加藤:自分の家だけど立ち位置は「管理人」なんですね。面白い。ここから先、さらに90年持つような仕様や構造にしたので、それこそあと2世代くらいは住めますよね。うまーく循環しながら住み継いでいけるといいですね。
変化をし続けるハンディに今後どうなってほしいか
ーーハンディは結成10年ですが、今後、ハンディにはどうなっていってほしいですか?
暁さん:僕は、ハンディが新しいフェーズで、仕事や働き方にどんな変化を生み出していくのかが非常に興味があります。
ーー働き方ですか。同じ思いを共にした個人事業主の集団っていうのも、通常の会社形態とは違った感じですよね。
暁さん:そうですね。ハンディと知り合った頃、バンド仲間みたいだなって思ったんですよね。仲良しバンド(笑)。一緒にイベントを開いたときに、会場に行くまでの道中、僕が運転して、当時まだ20代の創業メンバーがすごく楽しそうにしょうもない話を後ろでしていたんです。仲が良い気の合うロックバンドのツアー中みたいな雰囲気でした。その感覚で仕事もしていて、立場は対等で、お金の分け方も対等で、自分で手も動かしていて。すごくシンプルだし、かっこいい働き方だなって思ってたんですよね。それが株式会社になって、メンバーも20人を超える人数になって、これからハンディはどうなっていくんだろうって興味があります。
園生さん:いつも軽やかそうでいいなって見てました、私も。
(写真)結成当時のメンバー
ーー私みたいな建築とは無関係な業界で働いてきた広報の人間も雇いましたしね。
暁さん:その建築とは関係なくやってきた人を雇ってみるっていうのもハンディらしさの根本かなと思いますね。変化を恐れず、こだわらないっていう意味で。僕はサラリーマンも経験して、会社のしんどさとか、組織の中で自分が変わっていくことも理解していたので、組織が大きくなったハンディはどうなっていくのかなって楽しみです。あの頃感じたバンドマンたちの軽やかな感じっていうのも残っていってほしいし、でも、30人、40人で残すのは難しいと思うので、どう変わっていくのか。興味津々で見ています。
加藤:僕たちも、家づくりと同じくらい働き方も大事にしています。働くことが苦しくなると絶対いいものはできないと思っているので。もしかすると、創業メンバーがハンディを抜けて、若い建築家たちが受け継いでくれているみたいなことになっても面白いかも。ハンディの家づくりに対するマインドが受け継がれて、それが全国に広がっていくようなことが実現できたらという思いはありますね。
暁さん:うんうん、いいね。ぜひ頑張ってほしいです。
ーー今日はありがとうございました。
壊れても直せる。相談できるプロが身近にいる安心感。作り変えながら、さらに次の世代へと住み継いでもらえる家にしていく楽しみ。オーナーさん自らが家づくりに対して積極的に参加することで、いくつもの新しい価値観が生まれているように感じました。家づくりを主体的に行うことで、その後の暮らしがワクワクするものに変わるのであれば、ぜひ私も実践してみたいです。
取材・文 石垣藍子
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