みうら はぎ

好き→バスケ/読書/クジラ/ナマケモノ 苦手→いそぐこと/話すこと '97

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好き→バスケ/読書/クジラ/ナマケモノ 苦手→いそぐこと/話すこと '97

最近の記事

丹塗の円柱とキリギリスにアンダーライン

わたしは小説が好きだ。 しかし、本を読むのが遅い。 だいたいの作品は、最低でも読み切るのに一日はかかる。 読むことに時間がかかる理由は、たぶん、心理描写やセリフの意味を納得がいくまで考えてしまったり、情景描写の隅々まで想像しようとしてしまったりするからだ。 でも、そういうふうに読まなければ気が済まなくなった原因がある。 話は9年前、わたしが高校生だったころに遡る。 そのころ、現代文の授業で芥川龍之介の『羅生門』を読むことがあった。 その授業でわたしの、小説というものに対

    • バスケットボールがくれたもの〜自分が好きでいられる自分

      小学4年生のころからバスケットボールを習っていた。中高と部活を続け、大学では迷わずバスケのサークルに入った。 わたしは青春時代の全てを、バスケとともに過ごした。 しかし、「わたしがバスケにもらったものってなんだろう」と考えたとき、これといったものが何も浮かんでこなかった。 どうしてこんなに思い入れがあるバスケのことなのに、何一つとして浮かんでこないのだろう。 そう考えているうちに、気が付いた。 わたしがバスケにもらったものは、全てだったからだ。 全てというのは、いまわ

      • 勝負所でわたしを咲き誇らせてくれた曲

        3年前の夏。 わたしは人生の大事な局面を迎えていた。 それは、就活だ。 それまでのわたしは、面接試験から逃げることだけを第一の目的として進路を選択してきたのだが、就活ではそうもいかない。 精神的にはあまり追い込まれていないつもりでいたけれど、体は正直だった。 面接の前には必ずお腹が痛くなったし、 会場へ向かう朝の電車のなかで気分が悪くなり、うずくまってしまったこともあった。 第一志望の面接の日も、例外ではなかった。 その日は、実家から片道1時間半をかけ、高速バスで面接

        • 「何が好きか」を褒められたい

          「いいっすね。スポーツ好きですね」 これは、わたしが入院していたときに、ある若い先生が掛けてくれた言葉だ。 なんだかとても嬉しくて、心に残っている。 わたしが最初に入院したのは夏だった。 病院でレンタルできるパジャマみたいなやつを着るのは、ザ・病人という感じがするから嫌で、バスケをやっていたときに着ていたTシャツやバスパン(緩めのハーフパンツ)を身につけていた。 「バスケやってたの?いいですね。スポーツやってた人は回復早いですよ」 その先生は、初めて顔を合わせたときに

        丹塗の円柱とキリギリスにアンダーライン

          世の中に絶えて桜のなかりせば〜青空と桜とドラえもん〜

          世の中に絶えて桜のなかりせば 春の心はのどけからまし                     by在原業平 毎春、朝の情報番組やワイドショーで桜の開花予測が流れ始めると、この歌が頭に浮かんでくる。 日本人みんなが、いまかいまかと桜の開花を待っている雰囲気は、なんだか面白い。 全国ニュースではもうとっくに桜の時期は過ぎてしまったようだけれど、わたしの実家のある地域では、いままさに桜が満開だ。 北日本の桜シーズンはまだまだこれからが本番。 ようやく、長い長い冬が終わる。 ど

          世の中に絶えて桜のなかりせば〜青空と桜とドラえもん〜

          『ゲド戦記』がすき

          3週連続ジブリ祭り! 夏はジブリ! 秋はジブリ! 冬もジブリ! 金曜ロードショーの次回予告でいちばんわくわくする文言である。 わたしはジブリ作品のなかでゲド戦記がいちばん好きだ。 …いや、アシタカとサンも好きすぎるし、 ハクが本名を思い出すシーンも泣けるし、 かぐや姫が最後に地球を振り返るところも胸が張り裂けそうになる。 トトロがくれるどんぐりの包みも ジジを助けてくれる犬も バルスも、ナウシカも好き。 ハウルもバロンもポルコもかっこいい。 言い出したらキリがない。

          『ゲド戦記』がすき

          出会いは風の音

          『アイネクライネナハトムジーク』春は、出会いの季節。 出会いという言葉で、思い出した小説がある。 伊坂幸太郎さんの『アイネクライネナハトムジーク』だ。 日常を生きる人々に起こる、ちいさな奇跡を描いた短編6作品が収録されている。 伊坂幸太郎さんの作品はどれもそうだが、登場人物たちがみんな魅力的でユーモアがあり、愛に溢れている。 この作品は特に、なんでもないような日々を舞台に描かれているので、心配事が何かと多い春の心を癒してくれる。 収録された作品のひとつ、「アイネクライネ

          出会いは風の音

          優しいゴリラの逆鱗に触れてしまった話

          わたしの2番目の兄は、ゴリラに似ている。 有名人でいうと、漫画スラムダンクにでてくる、山王高校のセンター河田(兄)にそっくりだ。 家族(特に父とわたし)は、兄のことを「丸ゴリ」と呼んでいじり倒した。 兄は寛容で、自ら携帯の待受を河田(兄)にしたりしていた。 わたしは兄と同じ高校に通っていた。 学年でいうと4つ離れているので、在校生としての時期が被っていたわけではない。 しかし、兄がお世話になった先生たちが何人か残っていた。 1年生のとき、そのうちのひとりM先生が、わたし

          優しいゴリラの逆鱗に触れてしまった話

          「常識ないなあ」に込められた思いについて考えてみた

          「常識」という単語に続く文言として、ぱっと思いつくのは何だろう。  ・常識に縛られる  ・常識を打ち破る  ・常識を超える どうやらわたしは、「常識」というものにあまりいい印象をもっていないらしい。 たしかに「常識」は、個性を奪うもの、革新的なやり方を阻むもの、というようなイメージがある。 さらに、「常識」を求められることで、ある種の生きづらさが助長される気がする。 例えば、「知り合いに会ったら挨拶をする」というのは常識と言えるだろう。 しかし、とてつもない人見知りで

          「常識ないなあ」に込められた思いについて考えてみた

          10年経って、ふと思い出したこと

          「ここって、どうやって行けばいいか分かりますか」 ある日の部活終わり、2つ下の後輩が遠慮がちに話しかけてきた。 中学3年のはじめ、東日本大震災が発生して1ヶ月か2ヶ月がすぎたころだったと思う。 彼女が手に持っていたのは紙の地図だった。 わたしと、近くにいた同学年の2人がそれを覗き込んだ。 地図の目的地にあたるところには、学習塾の名前が書いてあった。 「ここからまっすぐ行かないと、時間に間に合わないんです」 後輩の彼女はそう言った。 その日の部活は学校ではなくて、学校か

          10年経って、ふと思い出したこと