記事一覧
【禍話リライト】つながりの部屋
昭和の時代の話らしい。
とある会社で、新入社員の教育のために過激な研修を行なわれていた。当時からして、連帯を強めるだとか、愛社精神を育むだとかの名目の、体罰とも紛うような理不尽な社員研修は珍しくなかったのだろうが、そこは若干カルトじみたものになっていた。
とりわけ成績の悪い、あるいは従順でない社員に対しては、「周囲との関わりを断つ」といって、監禁まがいのことをしていたとのことだった。
食事
【禍話リライト】乳歯の山
就職が早々に決まった先輩と、酒を飲んでいた時のことだ。
夏ということで、心霊スポットにでも行こうという話になった。とはいえ、近頃目をつけて行ったスポットはやたら電灯が整備され明るいとか、道が潰れてそもそもいけないだとか、どうにも外ればかりだった。
「何かないの、確実なとこ。せっかくの思い出作りだし」
先輩がそんなことを言っていると、一人の女子、仮にAが、怖いスポットではないかもですけど、と話
【禍話リライト】死人の来る家
ヤバい場所というのは、例え死んでしまうとかそういったことがなくても、何かに魅入られてしまう。
それが霊感のある者とは限らないし、かといって全く心霊を信じずバカにするような者とも限らない。
全ては、向こう側のさじ加減なのだ。
Aさんが大学四年生の頃の話だ。
Aさんは、夏頃に早々に地元で就職が決まっていた。所属のゼミには卒論はなく、単位もきちんと取っていたため焦って授業に出ることもない。あ
【禍話リライト】隔離小屋
「普段は車無いし、他の奴におんぶに抱っこで連れてってもらってるんだけどさ、そこだけは誰も行ってくれなくてさぁ」
皆気持ち悪がっちゃって。だから連れてってくんない?
Aさんは友人の廃墟写真マニアに、そんな風に話を持ちかけられた。
初めこそそりゃ断るだろ、と拒否したものの、「昼なら!昼ならどう?」「ガソリン代も出すからさぁ」と、ガソリン代にしても些か多い額を提示され、Aさんはうっかり話に乗って
【禍話リライト】赦された夢
Aさんには、小学校五、六年の頃からずっと見ている夢があったのだという。
行ったことのない、古ぼけた石段を登る夢だ。
登っていくうちに、それが神社の境内に向かう階段であることに気がつく。頂上に近づくにつれ、朱塗りの鳥居が見えてくるのだ。
その神社というのは、大したことのない小山、いわばドラえもんに出てくる裏山のような、そんな場所にあるイメージだった。
そして、石段を登り終えてそこから境
【禍話リライト】……の家
そこは両親に何かあったとかで、孫をおばあさんが引き取って育てているような、そんな家だった。
小学校にもしっかり通わせ、二人の仲も悪くない。親がいないとはいえ、傍目に見ても問題のない家だった。
一つだけあるとすれば、二時間サスペンスか何かをずっと家で流しているのである。孫の年齢からすれば、特撮やらアニメやらが見たかったのかもしれないが、おばあさんの趣味なのか、サスペンスものや刑事ドラマば
【禍話リライト】お嬢様の窓
関東某所にある、病院というか、療養所のような廃墟の話だ。
そもそもこの廃墟、成り立ちからして不自然なものであった。
地域の外から来た人々が、山の麓に建てた四、五階の建物であり、そこにナース服や白衣を着た人が出入りしている。療養所といった風体ではあるものの、地元民はそこを利用することはなく、病院のように看板が出ることもなかった。
そんな場所であるから地元民は、ここはきっとどこかの金持ちか、
【禍話リライト】男一、女二
廃墟に行って、ゾッとするような体験をするのが好きなKさんという女性がいる。
そのKさんが、とある田舎の廃墟に行った時の話だ。
そこは、おそらくはキャンプ場だと思われる施設だった。Kさんは日中のうちにさしあたり周辺を全て見て回ったのだが、これは夜泊まってもそんなに面白くない、全部見たら帰ろう、とその施設に見切りをつけていた。
その中に、宿舎のようなスペースをKさんは発見した。恐らく、その施
【禍話リライト】真っ暗な洞窟の夢
とある地区の子供だけが同じ夢を見ると、騒ぎになったことがある。
小学校の時分、いつの事かも混然としてはっきりしない頃のことだ。
しかし、絶対に何かしらの記憶が混ざっているのは間違いない。
「だって、そうでもないとこんな事起きちゃいけないでしょ」
そんな、訳の分からない、気持ちの悪い話だ。
Aさんは、もうじき学校で山登りの遠足があるという頃、夢を見た。
自分が、真っ暗闇の中を進んで
【禍話リライト】まことくん
片桐さんには、大学時代に嫌な思い出がある。
彼女は大学入学後、とあるサークルに入ったのだという。
所謂「飲みサー」で、一応対外的に何か発表するような活動はするものの、実態としてはふわっと勉強した後皆でお酒を飲んだり遊んだりといった程度のものだ。
適当に選んで入った所ではあったが、雰囲気も良く、そこで片桐さんは大学生一般が経験するような遊びを覚えた。
七月に入ると、そのサークルは毎年夏
【禍話リライト】桐の箱
A君が久しぶりに田舎に帰った時の話だ。
法事でもなく、急に思い立って帰省した割には、幼い頃に遊んだ懐かしい面々が集まり、酒盛りとなっていた。
童心に帰り、懐かしい思い出を語るうちに、ふとこんな話題になった。
「そういや昔、肝試し行こうとしたことあったよな」
「そうそう、あの神社な」
ところが、その神社に行こうとすると何をやっても怒らない祖母が、烈火の如く怒るのだ。何なら、財布からお札を抜
【禍話リライト】朗読おばさん
地域をすり合わせるのはやめましょう、と言われた話がある。
決して夢ではないのだが、見間違いとか集団幻覚ではないかという昔の記憶が、Aさんにはあった。現在になって禍話を聞くようになり、私それでようやく腑に落ちました、とAさんは言う。
Aさんが学童保育にいた頃の話だ。
その頃両親は共働きで、Aさんは学童保育にいる子供たちの中でも特に遅くまで残っているような子供だった。
ある時から、学童
【禍話リライト】中の叫ぶ顔
実在しない洞窟と石仏の話と、同地域で語られた話だ。
当時小学生だったAさんの近所にはもうすぐ取り壊されるアパートがあった。
Aさんの友人にはそのアパートに住んでいるお兄さんがいたのだが、同じ地域に実家があるのだという。
大学生のお兄さんはどうやら一人暮らしをしてみたかったとのことだが、どうにも意味がない。Aさんは子供心に、家族と折り合いが悪いのだろうか、と思っていた。
そんなお兄さんの