見出し画像

愛車のデンチャで銭湯へゆく、10分間の「親子時間」

「はなちゃんも、車うんてんしたい!」

「車を運転するためには、免許がいるんだよ。免許を取るためには、ひらがなが読めないといけないよ」
「じゃあ、ひらがなおぼえる!!!」

そう言って、幼稚園に入る前にはひらがなもカタカナも覚えたらしい私は、20歳のときに念願叶って(?)車の免許を取った。

そしてそれ以来、ハンドルを握っていない。
いわゆるペーパードライバーである。


あれれ、おっかしーなぁ……


更新のたびに、キラキラ光るゴールドが私を見つめる。ま、まぶしい……

「マイナンバーカードも持ってるし、身分証としての免許証もそろそろお役御免かな……」

そう思いながらも、「いつか乗るかも」を捨てきれず、時期が来ればまた私は免許を更新するのだろう。




「娘と夜のドライブに行ってきました」
「●●県まで家族で車で行ってきたよ!ぶどう狩り楽しかった〜!」

ママ友さんのそんな報告を見て、羨ましいなんて思わない、……訳がない。

いいなぁ。車が、あればなぁ。
いや、車はなくてもいい。
私が車を運転できたら、どこへでもいけるのに。

今私が車で出かけたいと思ったら、夫に頼んで、夫に運転してもらわないといけない。そもそもうちには自家用車がないから、車を借りてチャイルドシートも2台セットしてもらう必要もある。

「はなちゃんも、車うんてんしたい!」

免許はある。免許はあるけど、なんていうか、今やもう免許しかない。



「ママ、温泉いこう」

たまに出る、長男の「おねがい」。
タイミングが合えば、なるべく叶えている。

でかい風呂そのものも面白いのだろうが、ママと温泉(でかい風呂は全部こう呼んでいたが、最近「銭湯」と区別して使うようになってきた)へ行くと、ママを独り占めできるし、場所によってはジュースやアイスもあるから楽しいのかもしれない。

事前に計画してあちこち回ることもあるが、夜突然言われたときなんかには、近所のお風呂屋さんに自転車で行くことが多い。

子乗せが前後についた電動自転車は、私が運転できる唯一の乗り物。大事な足である。

「運転手さんになったきぶんになりたいから、前に乗りたい」と言って、ふだんなら次男が乗っている前の座席に座る長男。

自転車を漕ぐ私の目の前にいることになり、距離近め。後部座席と違って、しゃべっている内容は全て私のところに届く。でも、顔はよく見えない。そんな位置だ。

「ママ、今日ね、保育園で、●●ちゃんが泣いちゃったの」
「園内で、遊んだんだよ」
「◯◯先生は、長男くんのことが大好きなんだよ!」
「まえにも、自転車で温泉に行ったよね〜」

……保育園から帰ってきて、ほらご飯だよ、ほらお風呂だよ、さあ寝ようねとバタバタしている毎日。

彼の話をこんなふうにゆっくり聞ける時間なんてほとんど取れていないのではないか、ということに気付かされる。

最近は夜寝る前に「今日楽しかったことを1つずつ発表しましょう〜!」みたいなことをしているけれど、そのときも「1つ」では収まっていない。

元々起きてる間ずっと喋ってますみたいな子だったが、その内容は明らかに変わっていっていた。

保育園のことを自分から具体的に報告できるようになったことも驚きだし、嫌なこともちゃんと言葉にして「こういうことがあったんだよ」と言えていて、嗚呼、これが幼児クラス……

(2歳クラスのときはこっちがいくら聞いたってお友達の名前すら「わすれた」「みんな知らない子」と言っていたのだ……)

銭湯までのたった何分かの道のりだ。
でも、だからこそ、いいのかもしれない。

きっとこれからもっと、こういう時間って必要だろう。この子が、今日のことを、思ったことを、話す時間。

そして、私がドライブでしたかったことって、かなりこれに近いような気もしていた。

車より、行ける範囲も狭いけど、これはこれでいいかもしれない。街並みを見ながら、ああでもないこうでもないと言いあうのもまた、よきである。

親子2人だけで、いつもとは違って見える街並みのなかを「ドライブ」しながらゆっくり話す10分間。

特別な時間を共有すると、心もほどける。

そしてそのメンタリティのまま2人で入るでかい風呂も、そのあとのお楽しみタイムもまた、言うまでもなく至高なのである。

いい湯だね。そうだね。またこようね。



私は、車を運転できない。

息子たちとドライブしたい!という願いは、少なくても私がペーパードライバーを脱するまでは叶わないだろう。

でも、こういうのも、ありかもね。

「電動自転車」というゴッツイ、気を抜いたらすぐ車体が倒れて起こせなくなる我が愛車。

どこまでも行ける!!!とまでは行かないまでも……まぁ、1時間圏内くらいなら行けるんじゃない?(大きく出てみる)

2人を子乗せに乗せなくなったら、またその時は考えましょう。その頃には息子たちと銭湯にも入れなくなるし、めちゃくちゃ寂しいけど、その頃にはまたなにか別のなにかがあるでしょう。

どんなかたちでも、どんな方法でも、君たちとの「特別な時間」は作っていこうと心に誓う、母なのでした。

いつもお読みいただきありがとうございます! いただいたサポートは、銭湯巡りで息子たちと瓶牛乳飲むときに使わせていただきます🐄♨️