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「どうしてロシアはウクライナに攻め込んだの?」

世の中の主婦の方がどれだけ時事問題に関心を持っているのか知らないが、うちのカミさんは毎日かなり熱心に新聞を読んでいるようす。ニュースについて話すこともある。息子たちにも関心を持って欲しいので、30年以上報道に携わっていた者としてなべくわかりやすく解説することを心がけている。しっかり答えられた際にはついドヤ顔になるし、的はずれな質問には「そんなこと俺に聞くなよ!」という気分になる。

今回のロシアによるウクライナ侵攻は、控えめに言っても「歴史的暴挙」だ。

カミさんに「どうして攻め込んだの?」と聞かれて、ハタと困ってしまった。「NATOの東方拡大に危機感を持った」「そもそもウクライナを自分たちの属国と思っている」「欧州各国もアメリカも参戦できないと見切った」「新ロシア派住民がテロにあうことを防ぐためという“古典的な口実”を使った」などの解説くらいはできる。しかし、いずれも「独立国家に対して全面的に武力侵攻する」という暴挙の説明にはなっていない。

「ウクライナ人だから気づいた日本の危機」という書籍を3年前に読んだ。


ロシアという国の恐ろしさを再認識させられたし、こうした国際政治の冷酷さに目を向けないことの愚かさを日本人に説いているのが素晴らしい。しかし、後半はかなり過激な論調が続いていて、とても在日ウクライナ人によるものとは思えなかった。日本の右のライターさんが書いているのではないか?外国人の論調が気になって仕方がない日本人の心情を見越してカタカナのペンネームを使ったイザヤ・ペンダサンやポール・ボネなどを思い出す。

さて、ウクライナ情勢。

圧倒的な軍事力の差があるとされたことから、当初は首都キエフもすぐ陥落すると思われていたようだが、本日のところは「ウクライナ軍が各地で激しく抵抗」という段階だ。ウクライナは加盟国ではないので、NATO各国は直接の軍事介入ができないし、それをやれば第三次世界大戦に発展しかねない、という危機感もよくわかる。国際決済システム=SWIFTからの排除という強硬手段が素早くまとまったが、ヨーロッパへのガス取引に影響が出ないようにするのではないかという観測もあって骨抜きになるかもしれない。そもそもプーチンはそんな手段があることも十分に計算していただろう。

日本もロシアに対する経済制裁に参加することを素早く表明した。日本が参加することにどこまでの実効性があるのかはわからないが、国際社会が団結することの意味は十分にある。そして、それは最終的にはこうした暴挙から日本を守ることにもつながるのだ。

ウクライナは日本人にとって決して馴染み深い国ではないだけに、日本人がどこまで深刻に事態をとらえているのかは不透明な気がする。しかし、国際社会がロシアを押し止められないことを見切ったら、中国は似たような口実と手段で台湾を一気に侵攻する可能性もあるし、尖閣諸島や沖縄だってどうなるかわからない。

息子にこう諭した。「ロシアがウクライナに攻め込んだ2022年2月のことはしっかり覚えておきなさい。きっとあとになって『ああ、21世紀の国際秩序の転換点はこれだった』って思うことになるよ」。

まったく他人事ではない。国とはなにか。国を守るということは何か。日本人としてしっかり考えるきっかけにしなければいけない。
(22/2/28)

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