メルカリで教科書とモチベーションが届いた

メルカリで教科書を買った。大学の丸善で購入するよりも少し安く。うれしいおまけ付きで。

必修の語学の講義の初回ガイダンスで教科書が指定された。１年生の時に購入したけどあまり使わなかったものと同じだった。部屋を探したけれど、見つからない。誰かにあげたのかもしれないが、誰にあげたのか思い出せない。そもそも返せとも言えないし……

買うか、と思って丸善へ行ったが、教科書は絶妙に高い。

大学１年生の時に初めて自分で教科書を買って驚いた。小中高は学校から配られるもので、たしか「この教科書は、これからの日本を担う皆さんへの期待をこめ、税金によって無償で支給されています。大切に使いましょう。」と書いてあった。教科書の値段を意識したのも、一人暮らしの生活を成り立たせつつ授業に必要なお金を捻出しなければならないのも、大学生になってからの初めての経験だった。
他の講義の絶対使う指定書籍を買うとなると、語学の使わないかもしれない教科書を買うのは躊躇ってしまう。

教科書を譲ってくれないか何人かの友人に聞いてみたけれど、「なくした」「後輩にあげた」「そもそも買ってない」とのことだった。
友人に「メルカリは見た？」と言われ、初めてメルカリで購入する選択肢が出てきた。

あまりメルカリを使ったことはなく、一度絶版になった本をメルカリで中古で買ったくらいだった。その時に友人にやり方を教えてもらった。メッセージを送るときに友人に確認してもらったとき「自分の事情とかを書くとキモい」とテンプレを使うように言われた。（その時は、絶版の本でずっと探していたので出品してくれてうれしいです！のような旨を送ろうとしていた）
メルカリは取引のためのアプリであり、メッセージのやりとりをするためのアプリではない。メルカリは最低限のやりとりを淡々と行うのだと学んだ。

アプリを開き、検索窓に教科書の書名を打ち込む。あった。

写真は新品のように美品（実際に届いたのもおそらく新品だった）で、正規の値段よりも安い価格だった。そして商品説明に不思議な文があった。
「値引きはできませんが、ステッカーをおつけします」
出品者さんは同じような美品のテキストを出品していて、そのどれもに同じような文が書いてあった。おまけとしてつけてくれるステッカーの写真もあり、希望するものをコメントで伝えるようだった。

プロフィールやメッセージから淡々としたテンプレよりも、少しやわらかい文の方が良いと思って、自分で文章を書いて送った。ステッカーをリクエストされることはあまりないから嬉しいとおっしゃっていた。みんなしないのだろうか。
問題なくやりとりが終了し、丁寧に梱包された教科書とステッカーが届いた。購入のお礼が手書きで書かれたメッセージカードも入っていた。良い人なのだろうと思った。

いくつも同じようなテキストを出品しているのは、不要になったからというよりも、語学習得を応援するためにやっているように思えた。現代日本のインターネット（しかも治安が良くない場合があると聞いていたメルカリ）に、ここまで純粋な善意があることに驚いた。
（どうかこの先出品者さんがインターネットのやり取りで嫌な思いをしませんように！）

取引で今回のように感情を伴うものと、テンプレを使ってビジネスライクに淡々と行うのと、どちらが良いのかは分からない。望まない場合に、しつこくメッセージでの交流を求められたら、きっと不快だし危険だろう。
ただ、今回の僕の体験したものは嬉しいものだった。運が良かったと思う。

自分にとっては、”この単位を取らないと卒業できない”という消極的な理由で受講する講義の、使わないかもしれないけど買う高い教科書だった。
１年生の時はがんばるぞ！という気持ちだったが、語学習得の難しさにすっかり心が折れて、卒業のために単位をとることだけがモチベーションになっていた。
ただ、おまけのステッカーと出品者さん（僕の想像の中ではすごく良い人）のおかげで、頑張ろうと思えて授業に出ている。

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出品者さんまでこの投稿が届くなら、頑張ってますと伝えたい。
¡Muchas gracias!