寂しいっていってるでしょ?

恋人に、遠距離が寂しくて寂しくて
仕方ないことを電話で伝えた。

2時間ほど親身に相談にのってくれた。

「一人だからこそ時間を使って何かにチャレンジしてみたら?」
「趣味に没頭するのもいいよね」
「寂しくて仕方なかったらペットを飼うのもいいと思うよ」などなど。

私が寂しさから抜け出せるように、
様々に案を出して伝えてくれた。

とても優しい彼だ。

彼はいつも私が困った時にはスマートに道筋を示してくれる。
仕事でつまづいた時、何度も助けられた。
かっこいい。
頭が良くて、好き。

でも、そうじゃない。
打開策を相談してるんじゃない。
打開策が見つかって寂しい気持ちが紛れるのであれば、電話が苦手な彼に電話なんかしない。

だから、そうじゃない、という気持ちで、
音だけの相槌を繰り返すしかなかった。

そんな相槌が更に元気なくみえたのか、
彼は最後に、
「かわいそうに。
 早めに寂しさから抜け出す方法を
 見出せるといいね。」
と言った。

その瞬間、私の心のシャッターは下りた。

もう、だめだ、と諦念が襲った。

彼には私の不安定な感情に
目を向ける繊細さはないんだ、と。

そして電話を切った後、
何度も目を背けていた二人の間の根本的な違い
にしっかり目を向けてみようと物思いにふけた。

思えば彼は以前、
「音楽や芸術にあまり心を動かされない」
と言っていた。
好きな曲、思い出の曲は?と聞いても、
出てこない。
そもそも歌詞を自分なりに深ぼって、想いを寄せて歌に染み入るという楽しみ方をしないのだ。
むしろ、歌詞を自分で適当につけて、
ふざけて歌うことが多い。

場内が鼻水を啜る音で塗れる感動映画、
エンドロールが終わって彼の方を向くと、
彼はいつも、笑ってる。

「寂しい」とか「虚しい」とか
「侘しい」とか「儚い」とか。

そういう類の心情に対するセンサーが、
彼と私では大きく違うんだろう。

私はそんな不安定な心情にこそ
人間の生きる"美"を感じるくらいなのに、
そんな感性の世界を彼に伝えたところで、
わかってもらえないんだろう。

これこそ寂しい。
でも、逆も然り。

彼は京大卒ですごく頭がいい。
何か困難にぶち当たった時、
虚しさや寂しさを感じる前に、
自分で打開策を考え、
虚しさや寂しさを最小限に抑えられるよう行動してきた。

一方で私は、人並みの人間。
何か困難にぶち当たった時、
解決することより受け入れて、
虚しさや寂しさをどう楽しもうかと考え行動してきた。

これはもう、これまでの生き方の違いだから、
どうしようもない。

たった一本の電話だったけど、
そんな二人の違いが露わになった電話になってしまった。

私はただ、寄り添って欲しかっただけだった。
「僕も寂しいよ。一緒だね。会いたいね。」
と、ただ、そう言って欲しかっただけだった。それで二人で、心がジンと柔らぐのを、繊細に感じ合いたかっただけだった。

ただそれだけのことなのに、
どうして分かってくれないの?

、、、と居た堪れない気持ちになるけれど、
同時に、そいうことを、
私も普段から彼に感じさせてしまっているのだ
と思い、ハッとした。

無い感性を捉え、掴んでいくこと、
大切にしたい。


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