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つなぐ言葉

 定年退職してから必死に勉強して、ようやく資格を取り、日本語教師として授業をしている。
 週に数コマの非常勤講師なので、いまだに試行錯誤の日々が続く。
それでも、様々な国から来る学生たちが、少しづつ日本語の文法や語彙、漢字を使えるようになっていく様子を見ると、「やりがいのある仕事だ」と思う。
 最初は全く話せなかったのに、1年近く経ってくると、同じクラスの異国の人と日本語で会話するようになる。
母国の事情はさまざまだが、お互いを理解しようとしている。日本語を通じて。
 こんな時、私は最高に嬉しい。(もちろん、常勤、非常勤講師の日々の積み重ねと、学生たち自身の努力の結果なのだが)
 
 これからどういう時代がやってくるか想像もつかない。もしかしたら高性能の翻訳機ができて、「外国語を学ぶ」必要なんかなくなってくるのかもしれない。
 それでも、アバターではなくて、生身の人間が発する言葉で人と人が理解し合うこと、そんな「つなぐ言葉」の威力を実感する日々である。

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