生き恥

西日本に住む20代半ばの凡人。猫と旅と音楽が好きです。 文化と都市と旅、人間について書…

生き恥

西日本に住む20代半ばの凡人。猫と旅と音楽が好きです。 文化と都市と旅、人間について書こうと思います。 インスタ:@haj_photoworks

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  • 旅の思い出とハックなどです。参考になるような文章であったり、そうでなかったりします。

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最近の記事

その日は晴れ

父親が鳥取に来た。数年ぶりに会う。 昼くらいに着く特急に乗ってきて、 私は秋に買った車で駅まで迎えに行った。 仕事に慣れてきたこと、 車と一緒に買った冬タイヤが トーヨータイヤだったこと、 父がCDで持っていた山下達郎の「MELODIES」をレコードで買ったこととかを話した。 駅から10数分ほど車を走らせる。 トンネルを抜けると砂丘が見えてくる。  県外のナンバーで溢れる駐車場から 階段を登ると、空は高くて広かった。 雨続きだったのでこんな青空は久々だ。 「冬にこん

    • 僕が山下達郎の「コメント」に失望したワケ

      9日放送「サンデー・ソングブック」  数週間前の話にはなるが、山下達郎が自身のラジオ番組「サンデー・ソングブック」内で7月9日、あるコメントを発表。その内容についてはネット上で「大炎上」する事態となった。  私は個人的に、山下達郎の音楽が大好きだ。ソウルなどブラックミュージックの要素を取り入れつつ、心地よくて精巧なサウンドは、どの時代になっても、何度聴いても飽きることはない。  今年再発されたアナログ盤「FOR YOU 」「GO AHEAD!」は買ってしまった。死んだ父が

      • 「きれいな東京」に本当の愛はあるか

        東京が「きれい」になっていく  日本の首都であり、政治・経済・文化の中心地である東京。多くの観光客も訪れるこの大都市は、日々どこかしら工事をしていて、新しいビルが建ったり再開発が進んだりしている。  昭和に建てられた建物はガラス張りのビルに生まれ変わっているし、以前は「治安が悪」かったエリアはファミリーでも立ち寄れるスポットに変身している。  東京が「きれい」になっている。 歌舞伎町タワー  JR新宿駅東口を北に進み、西武新宿駅にほど近いエリアに歌舞伎町という場所がある

        • 熊本で見つけた「異空間」

          JR熊本駅と、下通や桜町バスターミナルといった熊本中心部の中間くらい。市電の河原町電停のそばに、古びた商店街がある。 多くの店がシャッターを下ろし、細い通りを歩く人の姿はない。 天井から吊るされた蛍光灯はなんだか心もとなく、廃墟のようですらある。 ほこりか土のにおいか、東南アジアの路地裏と同じにおいがして、少し懐かしかった。 少し進むと、女性たちが熊本弁で談笑する声が聞こえてきた。ここは決して廃墟なんかではない。 ここは「河原町繊維問屋街」。 昭和時代には文字通り繊維問

        その日は晴れ

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          5本

        記事

          黄泉原パーキングエリア

          夜の田舎の高速道路。 時速100キロの小部屋には、ハンドルを握る僕がただ一人。 前のテールライトを追い越すと、目の前はヘッドライトが照らす闇。 宇宙を一人、泳いでいるような感覚がある。 山道ではカーラジオも役に立たず、エンジン音だけの、心地よい孤独に包まれる。目的地まではまだまだ遠い。 もしも人生が、ジャンクションだらけの高速道路だったとして。乗ったときには永遠のように思える長さの高速道路だったとして。 そこから降りる前には、せめてパーキングエリアには寄りたいものだ。

          黄泉原パーキングエリア

          "考察系"の寒さ

          考察系  最近、やたら「考察」という言葉がやたら聞こえるようになった気がする。  文字通り、特に推理系とかサスペンス系の小説やらドラマやらのストーリーについて、「犯人は誰それじゃないか」とか「何話のエピソードが伏線になっている」とかそういうことを考えるアレだ。  小説を読んでいても、途中で別々に語られていたエピソード同士がつながる瞬間があって、まるで電球がピコーン!となったときのような"快感"を覚えるときがある。  小中学生のときだったか、ドラマの行く末を皆で考えたりとか

          "考察系"の寒さ

          カンボジアへの陸路入国はスリリングでエキサイティング

          あらすじ 2018年3月、当時大学2年生の春休み 私は、シンガポールからマレー半島を北上しつつ東南アジアを10日間ぐらい一人で旅していた。 マレーシアのパダン・ベサールから、タイ・バンコクへ向かう夜行列車の中で、日本人の女子大生、モエカと出会った。彼女は「ノープランで東南アジアを旅している」のだという。 そこで私は「僕、これからカンボジアに行くんですけど、行きますか?」。こんな提案に乗ってくれて、一緒にカンボジアを目指すことになった。 ところが、カンボジアの入国には

          カンボジアへの陸路入国はスリリングでエキサイティング

          街自体が”物語”のような場所、長崎

           街自体が”物語”のような場所が九州の西の端にあって、そこを人は長崎と呼んでいる。  私は20か国ぐらい巡ってきたが、こんなにも魅力がコンパクトに詰まっている街は世界中でもそう多くない。  観光地が市内中心部に集中していて、さながら街全体がテーマパークである。そして、カメラ好きとしては全てが「映(ば)える」のだ。  一方、それだけでなく、長い歴史の”悲しさ”を含んだ、軽くはない空気も漂っていると、私は感じる。    一時は、日本唯一の”玄関口”だった街。隠れキリシタンが発

          街自体が”物語”のような場所、長崎

          【Diggin' Report】名盤ばかり集まってくる4月

          レコードは増える レコードを掘り始めて早4ヶ月。 週末にレコード屋に行くと"""必ず"""掘り当ててしまい、あれもこれもとレコードが指数関数的に増えている。 そろそろしっかり「記録」しないといろいろと危ないことになる…。 そこで、月内にdig(掘)ったレコードを覚えておく意味でもここにまとめておくことにした。三日坊主、いや”一月坊主”にでもならなければ来月もやる。 中身は100%個人の感想なので悪しからず。 なお、購入店はいずれも福岡市周辺。店名は公表しない。 Ta

          【Diggin' Report】名盤ばかり集まってくる4月

          オタク2人でブダペストを旅行したら満足度が高かった

          YOUは何しにブダペストへ 2019年2月、大学3年生の春休み。 同学年がやれ就活だなんだとやっていた時、私はわけもなくヨーロッパにいた。 ウイーンから乗ってきたRailjetという国際列車でハンガリーの首都・ブダペストに着いた。 Nyugati駅で赤い車体から降り立つと、ドイツ語圏とは違う空気を感じた。 さて、今回ハンガリー、いや、ヨーロッパに来たのはある理由からだった。 私のベストフレンドであるI、もう名前出すわ、イノウエがヨーロッパ某国に留学していた。端的に言えば

          オタク2人でブダペストを旅行したら満足度が高かった

          消え行く北の鉄路

          2016年夏。 私は北海道の「増毛(ましけ)駅」という、非常に縁起の良い名前の駅に降り立った。 函館本線の旭川寄りにある、深川駅から分岐する「留萌本線」の終着駅だ。 駅の周りは北海道ののどかな漁村という感じで、全国的に有名な観光地があるわけでもない。 強いて言うなら、この"増毛"という名前の町や駅そのものが観光スポットである。一度訪れれば、この先髪の毛で悩むことはないはずだ。 さようなら留萌本線 そんな増毛駅だが、今はない。 その年の冬、留萌本線の留萌~増毛間が廃

          消え行く北の鉄路

          七隈線が那珂川を渡った日

          天神南駅に「博多」の表示を出した電車がやってきた。今日、地下鉄七隈線が博多駅まで延びたのだ。 これまでは、九州最大の歓楽街・天神の南側にあるこの駅が終点だった。 黄緑色の電車が、那珂川を渡る。 ふかつての城下町「福岡」と、港町で商人の街「博多」を分けていた川である。 途中には「櫛田神社前」駅も設けられた。 櫛田神社は、キャナルシティと川端商店街の中間にある博多の象徴のような場所。川を渡れば西日本最大の夜の街である中洲という位置だが、そこには静けさがあって、博多の歴史を

          七隈線が那珂川を渡った日

          シティポップブームは”昭和レトロ趣味"の延長か

          シティポップブーム  ご存じの方がほとんどだと思うが、2010年代後半から「シティポップブーム」が起こっている。1970~80年代に発売された日本のポピュラー音楽、ニューミュージックの中でも特に洋楽の影響を受けたシティポップへの注目が高まり、若者の間で流行しているのだ。  2020年前後の盛り上がり方に比べると少し落ち着いたような気もするが、それでも未だに人気は根強い。  そもそも何をもってシティポップとするか、つまり「シティポップとは何か」という定義づけは音楽マニアた

          シティポップブームは”昭和レトロ趣味"の延長か

          「東横線の渋谷駅」が消えて10年

          さよなら”カマボコ” 渋谷の街を走っていた東横線が地下に消えてから、3月15日で10年だった。 今は無きこのカマボコ型の屋根の駅舎は、かつて渋谷東口のトレードマークの一つだった。現在は渋谷スクランブルスクエアというしゃれたビルになっているらしい。 10年前の渋谷といえば、やっとヒカリエが出来たくらいだった。 私にとって、遠い子供のころの記憶に残っている”東横線”は、この薄汚れたターミナル駅から発車していた。 何なら、その記憶の中の東横線の行先は「桜木町」行きで横浜駅

          「東横線の渋谷駅」が消えて10年

          男女ツインボーカルブーム到来?

           2021年前後、男女ツインボーカルの曲を個人的に聴きまくった記憶がある。  たとえば、メジャーどころでいえばAwesome City Clubの「勿忘」がヒットしていた。  別にそれを真似てというわけではないだろうが、なんとなくこの1、2年の間でそうしたバンドがじわりと人気になってきている気がする。それを勝手に、"ツインボーカルブーム"と呼んでいる。  ツインボーカルといえばある種の"掛け合い"みたいなのがあるのが魅力だ。場合によっては一曲の中で男女別々の視点で物語を展

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          北九州にある"接客しない"カレー屋さん

          若松にあるカレー屋さん 石炭輸送で栄えた北九州市若松。 かつて筑豊で採れた石炭は鉄道で運ばれ、ここで船に積み替えられた。 ランドマークになっている若戸大橋の足元には、石造りやレンガの建物がいくつかあり、当時の面影も残る。 石炭輸送の街を支えたのは、ここJR若松駅。かつて賑わっていたであろう筑豊本線のターミナル駅は、現在は静かなローカル線の終点になっている。 そんな若松駅前に、私の大好きなカレー屋さんがある。 店の名前は、カレー専門店「アラジン」。 駅の真ん前にあって、

          北九州にある"接客しない"カレー屋さん