閉会式を100倍楽しむ方法。過去の閉会式には何があったのか?
過去のオリンピックの五輪閉会式ってそこまで注目されていなかった。ただでさえ他国開催の五輪開会式だって地上波生放送で1回、再放送で1回程度の放送。閉会式については再放送も無い場合がある。全部3時間超えのものばかり。しかし今回は地元東京開催ということと、スキャンダルも加えて異常な注目度だ。そしてみんな「自分たちの国のアピール」度合いを自己評価しまくる。果たしてこんなに毎回注目コンテンツだったのだろうか?
そもそも「閉会式」って何をするのさ?そして過去の「閉会式」って何をしていたのさ?観るべきポイントを整理して過去の出来事をまとめた。
ちなみに私は開閉会式すっごく好きなので、がこれを語るには膨大になるので、本気で興味がある人はオリパラの開閉会式の110本の動画リストを作ってみたので是非観てください(笑)ああ、各回の解説したい。。。
閉会式をざっくり言うと「感謝と未来を示し、聖火を消す。」そして「その炎は、貴方の心の中にあるのです。」とビッグマザーが少年にささやく様に終わるのだ(笑)閉会式のポイントを5つにまとめてみた。
それぞれを過去になにが起こったかを解説するが、先に注目は【5】「聖火を消す」だと言っておく。長文だがお読みいただければ。
【1】開会式と閉会式との繋がり
これは何を言いたいかというと、五輪の開閉開式は実はセットだということ。演出家やプロデューサーが一緒であることがほとんどであり、今回の東京大会はオリンピックとパラリンピックの開閉会式4つの共通コンセプトとして“Moving Forward”。そして閉会式は“Worlds we share”を掲げている。これを表現すべき演出はどのようになるのかに注目したい。色々評論や感想もネットでは転がっているが、個人的な感想としては、開会式は正直その裏のゴタゴタ地獄絵図で本当に五輪憲章に則った簡素なものを想像していただけに、思った以上にシンプルながら訴えたいことはしっかりしていた。色々な体制変更があっても、野村萬斎さんの聖火台の「日出ずる国」というconceptに向かっていた。「困難な状況下にあっても一人一人の種を、日本という国で太陽が登ることで、花を咲かせる」種、ヒマワリ、富士、太陽、選手というストーリー要素があった。さあ、この文脈が活きていくのか?それが楽しみです。
せっかくなので他国例で"開閉会式の繋がり"という意味で言うとバンクーバー冬季五輪でこんな面白いことがあった。開会式の聖火点灯の時。4本の氷柱が出てきて4人の選手が点火する。という演出だった。しかし実際には機械トラブルで3本しか氷柱は出てこなく、1人の選手は直立するだけで点火はできなかったのである。この大会の閉会式がスタートするときに1人のピエロが出てきた。場内には聖火台があり、トラブル時と同じ様に氷柱は3本しか出ていない。そこでピエロがオープニングで機械を修理して、出てこなかった氷柱を出現させ、そして点火できなかった選手を連れてきて点火させてあげるという演出から閉会式はスタートした。トラブルを逆手になんと心温かい演出なんだろう。
【2】ネーションズパレード 戦ってきた選手達が仲良く入場。そのルーツは東京?
各国の選手達は閉会式にぞろぞろと入場してくる。正直、もう国もバラバラでごちゃっと出てくるのが近年では当たり前。まさに各国の選手達がある程度はまとまっているとはいえ、やはり世界の人達が仲良く混じっている絵は心地よく思えるのではないか?争いごともあるけど、やっぱ「世界は一つ」感なのだが、これは実は少し裏話があるのだ。なんと閉会式のこの自由な入場は前回の1964東京五輪の閉会式から始まったものだ。
前回の1964年東京五輪では5000人近い選手や大会関係者が閉会式に入場。選手達は自分の競技が終わっても東京に残って観光などで残っていたらしく予定人数以上の入場となった。その際に酔っていた(不明)外国人選手達が日本の旗手を担ぎ始めたのだ。一気に列は乱れ、混じり合い和気藹々とした閉会式の入場になったのです。詳細は下記のNHKの記事を是非。
ただ・・・残念ながら今回の東京2020では選手は競技後48時間で原則は帰国しなければならない。この入場については今回は旗手だけの入場になる(1960年のローマ大会以前のスタイル)になる可能性が高い。
下記の記事。さらに映像(2分35秒頃)をご覧ください。
【3】歌と踊り。音楽の祭典!
エキシビションの一部ではあるのですが、やはりサプライズの多いのが開閉会式。大物が登場する傾向にあります。ロンドン五輪閉会式なんかは非常に豪勢でしたね。スパイスガールズが再結成登場したり、モンティ・パイソンのエリック・アイドルがAlways Look on the Bright Side of Lifeを披露したり。ジョージ・マイケルはこのとき復活したし、アニー・レノックスもMUSE、THE WHOだ、ペットショップボーイズだと大爆発でしたよ。解説していたNHKの解説が「うるさい!」という批難記事が出ていたな。
ちなみにロンドン五輪閉会式では、ここでも「イマジン」が演奏されています。イマジンなんてダサい!と東京2020で言った方は知らないと思うのですが五輪の開閉会式では実は定番なのです。
前回のリオ五輪閉会式では、それこそ南米音楽&ダンスのオンパレードです。さすがカーニヴァルの国。サンバだのなんだので皆踊る踊る。コロナ禍だったら絶対不可能なやつです。
閉会式は誰が出演するのか?その国のアーティストが出ることは間違いは無いです。(自国のアーティスト以外も出る例も過去はあり、楽しみですね)ただコロナ禍なので、盛り上がりに限界はあるのでテレビで楽しみましょうか。ちなみに過去の長野五輪では、萩本欽一さんが司会で出てきたのは内緒です(笑)杏里さんが「ふるさと」を歌い、最後は「WAになっておどろう」で盛り上がってましたね。
【4】次の開催地の「フラッグハンドオーバー」パート
各閉会式では五輪フラッグの引き継ぎがあります。その後に約20分間、次の開催地のプレゼンテーションが行われるのです。皆さんの記憶に新しいのはリオ五輪閉会式での安部マリオ演出ではないでしょうか?MIKIKO先生+ライゾマ+椎名林檎さんなどなど東京2020でも編成されていたクリエイティブチームで非常にかっこいい!と話題になりました。東京パートは下記の1:48:30頃です。
あの演出で個人的に気になったのは実は「君が代」の編曲で三宅純さんが手がけたもの。非常に格好良かった!
直近で言うと、半年後に始まる北京冬季オリンピックは平昌五輪の閉会式でプレゼンテーションが行われました。演出は2008年の開会式で総監督を務めた張芸謀(チャンイーモウ)です。もう余裕、貫禄の演出。フィールドへのプロジェクションは当然、自走型透明ディスプレイとダンサーが絡むという驚きの演出でもありました。これは北京へ期待したいですね。
そして今回の東京2020閉会式では次回の開催地パリのパートがあります。ちなみに現在わかっている情報だとパリ2024ではスタジアムではない「パリ市内中心部の屋外」で「革新的な開会式に挑み、新たなモデルを提示したい」と表明している。他の報道ではセーヌ川の上で開会式をやるとのこと・・・果たして!
【5】聖火をどのように消す?宇宙人が聖火を持っていく?
さあ、これが最後です。この閉会式の一番の目玉は聖火を消すというクライマックスです。今回の東京2020では富士の上にある玉が太陽になって、それを灯すという流れ。どのように消えるのか?は楽しみですね。
この消す演出は過去の大会で色々なものがありました。まずはシドニー五輪の聖火は「お空に飛んでいく!」ものでした。聖火台の前で少女(ニッキー・ウェブスター)テーマ曲が歌う。彼女の歌が終わったら空に轟音が響く。なんとF-111戦闘機が会場をアフターバーナーを出しながら夜空を飛んでいく。その瞬間に聖火は消えている。つまり聖火は空の彼方に飛んでいくという演出でした。
ロンドン五輪の時も素敵でした。ロンドン五輪の聖火台は本当に美しく参加国の数の花びらが結集し1つの炎になるというもの。最後は不死鳥のシンボルの下でそれぞれが花びらが今度は分散し、静かに消えるというものでした。そのあとのTHE WHOの演奏まで観てほしい。かっこいいんんだ。
アテネ五輪閉会式の時にはやはり少女が出てきます。そして最後は「ふぅ〜っと吹いて消す」のです。(下記映像の2:30:00ぐらい)
前回のリオ五輪の消え方は非常に素敵でした。リオ出身の歌手マリーザ・モンチが「Pelo Tempo Que Durar(時の続く限り)」を歌う。その間に雨が降るんです。人工の雨だったのですが会場には実際に雨が降る。そして雨によって静かに消えていくのです。
★この件については別途noteを2016年に自分が書いていました(笑)映像も張っていますので、是非お時間あればお読みください。
この聖火が消えた後が良いのです。雨は「恵みの雨」なんですよね。それこそブラジルはアマゾンの自然を育ててきた。聖火が消えた後に今度は大樹が生えていく音楽パートの演出があるのです。リオ五輪は環境問題をテーマにしていただけに会全体のコンセプトが貫かれていました。
聖火を消した後の流れという視点で言うと、非常に面白いものがあります。オリンピックの商業化が始まったと言われる1984年ロサンゼルス五輪の閉会式です。聖火は司会で俳優のRichard Basehartがギリシャの詩人の詩を読む中で消えていく。そしてアナウンスで3カウントをすると観客席は懐中電灯を灯し真っ暗な会場がまさに星空のようになる。有名な「ツァラトゥストラはかく語りき」のイントロ部分が流れ、そしてスタジアムの側からUFOが出現する!レーザーが飛び交う中演出は展開され、スタジアムには宇宙人も登場するのだ。まさにアメリカンエンターテインメントで面白い!
最後に
様々な閉会式にまつわるエピソードを書き、気づけばnoteを書き慣れていないこともありえらく長くなってしまったが、全然、書き足りない(笑)やはり世界中の人達が集まって、しかもスタジアム規模の演出ともなると色々語るべきエピソードは多い。
東京2020の閉会式はどうなっているだろうか?
すでに案はメディアに漏洩して、体制批判は起こっている。犯人捜しも続くであろう。反省は私も必要だとは思う。が、現在、限られた環境で現場の人達やクリエイター達は戦っているに違いない。今回、色々なスキャンダルがあったが、それも含めてその国の国力だと思う。過去に叩かれなかった式典は存在しない。またコロナ禍という時代ならでは事情はあるが、過去に冷戦などで色々な展開を式典の演出は反映している
上記の映像は、開会式前にSNSに流されたものだ。現場での様子が垣間見える。やはりこれだけのものは多くの(観ている私たちを含め)人達でできあがっているのは事実なのだ。「国の恥だ!」という人こそ、他の式典をしっかり冷静に観てほしい。表現されるものは、共和・調和・繋がり・寄り添い・仲間意識・・・などを訴えるものばかりだ。そんな中で私たちは興味という名で、犯人を捜しあって、何をしようとし、どこに向かいたいのか?どうしても自分の足を食べている感じが残るのだ。
当然商業化に染まった五輪はいかがなものか?と言うのは理解できる。その面は絶対あるのだが、私たちは進化できることを信じたい。次回はパリ。その後はLos Angelesとブリスベンが決定しているが、またこれまでと違う時代に、新しい表現と大会があることを期待としたい。そして閉会式がどのようなものであれ、この数多くの熱戦を届けてくれた多くの人々への挑戦と感謝の想いを胸にしませんか?と思う。それが五輪閉会式の本質だと思う。
最後の最後にアテネで聖火を「ふぅー」と消した少女のその後の映像を張っておく。彼女は今は大学で医学に向き合っている。人間は成長できる。そのことを実感できる閉会式を望みたい。