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「バームクーヘン」 けっち

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Photo by Josh Hild on Unsplash

ラジオを聴いていたら「助六」の語源について知ってる? とDJが話していました。そういえば妻がスーパーで助六をかうときに「どうして海苔巻きといなり寿司がはいってるのを助六っていうのかな」と呟いていた(未解決のままだった)ので、おっ! と真剣に聴きました。

諸説あるそうですが、昔の女役者に「アゲマキ」という美女がいたそうで、そのアゲマキの恋人の名前が助六だったそうです。そういうこともあって、彼女の舞台がはじまると、ファンたちが一斉に弁当のフタを開けるのですが(昔の芝居は弁当を食べながらみるのが普通だった)、その幕があがるとき(まさにアゲマキ)の弁当の名前を「助六」と呼べばおもしろいじゃないか、という流れだったらしい。

ラジオの又聞きなので、今回Googleで調べていませんが、僕はこの話がおもしろいな、と思いました。こんなマニアックな逸話、ほとんど誰も知らないんじゃないか。それなのに、スーパーでもコンビニでも「助六」とシールに貼って売ってますし、「ああ、助六かってきてよ」と普通に使ったりする。でも誰もそれが「アゲマキ」の恋人の名前だったことは知らない……。なんだかおもしろい話だなあ、と思います。

語源を知ると、その食べ物にたいする愛着や関心がちょっと深まるもので、僕なども近々スーパーで「助六」をみかけたら食べたいなあ、と思っているわけですが、同じように昔「バームクーヘン」のことを知ったときのことも懐かしんでいます。

バームクーヘン。カタカナで書かれていたらなんでも「アメリカ語」だと思っていたことがその昔ありました。でもこれはドイツ語なんですね。たいていの大学生はドイツ語を第2言語として初級クラスを受けたことがあるかもしれません。僕は第2言語を中国語専攻だったので、大人になるまでバームクーヘンがドイツ語だということすら意識したことはありませんでした。

結婚式の引出物や、なにか祝い事や贈り物によくもらうイメージがあるバームクーヘン。その語源は「木の(バーム)ケーキ(クーヘン)」らしい。たしかに年輪みたいにみえるいくつかの層が重なっていて、言われてみたら切り株そっくりですよね。でも、そんなことを意識するまでは僕の中ではシフォンケーキもバームクーヘンも心のなかで同じような「ケーキ」でひとくくりでした。

ところが「木のケーキ」という訳語をたまたま知って以来、これが日本ではどこにでもあるありふれたお菓子だけど、本場のドイツでは「めったに食べられることがない、つくるのが大変な珍しいお菓子」というエピソードもあわせて知ったのですが、それ以来、なんだかバームクーヘンの自分における立ち位置がすごく上になりました。

そしてなんといっても、バームクーヘンを決定的に「ごちそうケーキ」までブーストしたのは妻が買ってきたクラブハリエのバームクーヘンです。子どものころに僕がたべていたバームクーヘンはどちらかというとメロンパン的に口のなかでパンが喉を圧迫する印象だったのですが、クラブハリエのバームクーヘンを食べたときの、しっとりとした口どけに本当に驚きました。

ただのケーキだったのが、「木のケーキ」というイメージが湧いて、なんとなくお菓子の家に住みたいなあと思っていた幼年時代の願望と「木の切り株をたべるんだ」という語源があわさって、今は「バームクーヘン」と発音してみるだけでなんだかすごくバームクーヘンが食べたくなる気分になるうえに、クラブハリエの「極上しっとり」を知ってしまったものですから、バームクーヘンを妻が買ってきたりすると、おお今日はバームクーヘンだ! と嬉しくなります。今日もありがとうございます。


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