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寝台特急サンライズ出雲91号の旅(part4)[2022.4-5 サンライズGR⑥]


再び目が覚めた。
前回よりも深い眠りができたからか、頭の中はスッキリして清々しい気持ちになっている。

身体を起こしたのと同時に、放送が流れ始める。せっかくだから注意深く聴いてみようと思い、耳を傾けた。
「次は倉敷くらしきです。」
このフレーズを聴いた瞬間に、私は3度目の眠りについた。

大変に重要な岡山おかやまを通り過ぎてしまったという事実が受け入れがたかったために、そのような行動に出たのであった。
サンライズ号における岡山という駅は、定期列車だと出雲と瀬戸が分割(併合)する大ターミナル駅の位置付けができよう。サンライズ出雲91号は単独での走行になるため、岡山で長く停車することはないが、岡山到着前のたいそうな乗換案内放送が見ものであり、それを是非聴いておきたかった。残念でならない。

またまた目が覚めた。
起きてからすぐさまして、放送が流れ始め、備中高梁びっちゅうたかはしに到着する旨が伝えられた。
備中高梁は高梁市立図書館が駅に併設する形で立地しており、スターバックスが入っていることで著名なところである。

列車は倉敷から伯備はくび線に入っており、この備中高梁を過ぎると、山陽と山陰の境である中国山地を越えるために、たくさんのカーブと勾配を乗り越える。このあたりから多少は乗り心地が難しい状態にはなるものの、さすがは寝台特急である。それほど気にならない。

右手に大山だいせんが臨み始めると、まもなく伯備線から山陰本線へと入る。入ればすぐに、鳥取西部の拠点である米子よなごに停まる。
ここでは結構な数の下車客が見られた。米子も訪れてみたい都市ではあるが、なかなか行く機会を作ることができない。このまま人生を終えてしまいそうな、そんな気がしてならないのである。

さて、米子を出てすぐに中海なかうみ(なかのうみ とも言う)がほんの一部の区間ではあるが、次の松江まつえまで眺められる。”海”という名が付いているから、海の一部だと勘違いしそうになるが、実際には湖の一種である汽水湖(海水と淡水がまじりあったところ)である。

中海を見物しつつ、安来やすぎ、そして松江を通り過ぎる。
松江はさすがの県庁所在地で、米子よりも下車客が多く、我らのノビノビ座席はわずかに人を残すのみとなった。東京・横浜から出雲市いずもしまで、ここで過ごす人はなかなかにいないのであろう。私も順当に寝台で移動しようとは考えたが、やはり3,000円強という破格の値段にひれ伏してしまった。前も申しあげたかもしれないが、旅行というよりは修行といったほうが適切かもしれない。しかし、私はこのようなことを好きでやっているのだから、何も不平不満を述べることはもちろんない。幸福感を高められると同時に、お金の節約になるのはまさに一石二鳥。これ以上ないのである。

中海に別れを告げると、宍道湖しんじこがすぐにあらわれる。こちらも汽水湖である。中海に比べ、この湖のほうが見える区間が格段に長く、湖岸に打ち付けるわずかばかりの波まで見える。また、並走している国道9号線を走っている車を次々と抜かしていくのが爽快である。

それを楽しんでいると、湖の終わり際にある駅である宍道に到着する。
もうまもなくサンライズ号の旅が終わると思うと、さびしい気持ちにもなるし、それに反して、ここまで来たという達成感も覚える。
次は終着の出雲市だ。
最後の力を振り絞るかのように力強い走りを見せてくれるサンライズ号は、非常に頼もしく、また乗りに伺いたくなるような敬意を私に発現してくださった。

13時07分、出雲市に定刻に到着を果たした。
約15時間ともにしたノビノビ座席を離れるのはやはり惜しいと思ってしまう。物理的にも精神的にも重い腰をようやく上げた頃には、もう誰も車内には残っていなかった。

ホームへ降り立つと、鉄道愛好家だけではなく、大型連休を楽しんでいる家族連れや夫婦がサンライズ号の先頭へと向かい、そこで写真を撮っている。その数は恐ろしいと感じるほどである。
これだけ人気があれば、今後のサンライズ号も安泰だろうと思ってしまうが、寝台特急というのは赤字前提でやっている体があるから、安心することはやはりできない。これからも新幹線を使わずに、なるべくサンライズ号で西へ旅立ちできるよう努力していきたいものである。

私が勝手に命名した”サンライズゴールデンルート”。続いては、”やくも24号”である。しかし、出発は15時30分で、まだ2時間半ほどある。
せっかく出雲市に来て、時間が余っているのだから、あそこに行くしかないだろう。乗り換え先の電車の発車時刻が迫ってきているから、足早に一畑電車の改札へと向かったのであった。


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