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寝台特急サンライズ出雲91号の旅(part3)[2022.4-5 サンライズGR⑤]


目が覚めた。
半身はんみだけ起き上がって窓を覗くと、かすかに空が明るくなっている。列車はちょうど減速をし始めて、駅に到着した。「米原まいばら」という文字が見えた。
京都の手前で起きているようにと事前に考えていたから、もう少し目を閉じることにしてみよう。

再び目が覚めた。
列車は快調に走行を続けていた。車窓は住宅街を映している。私は無知の極みであるから、今どこにいるのかが全く分からない。このようなときに頼りになるのが地図アプリだ。
さっそくアプリを開いてみる。GPSが示しているのは高槻たかつきの手前であった。高槻は京都と大阪のほぼ中間に位置するところだ。つまりは、寝坊したということである。絶望的な心理状況までにはならなかったものの、残念な気持ちが脳内を支配した。

しかし、過去のことでくよくよしていると、現在いまを楽しむのは不可能である。しっかりと気持ちを切り替えられるよう努めなければならない。
ようやくその感情が去った頃、大阪の一つ隣である新大阪付近に差し掛かっていた。車窓から少しばかり目を離して、ちらりと車内に目をやると、乗客の3分の1が荷物をまとめている光景が広がっていた。このノビノビ座席で、岡山や出雲市といった長距離を乗る人は少数派だと私は前々から思い込んでいるが、それが事実であることが少しずつ明らかになってきているといえよう。岡山でどうなるかは見物である。

6時04分、時間どおりに大阪に停車。大阪環状線の電車が隣に停まっているのが見え、本当に関西へ来ているのだという実感が湧いてくるが、まだ終点の出雲市までは半分もある。これからも良い景色が楽しめそうだ。

大阪を出ると、20分ほどで神戸の三ノ宮さんのみやに着く。ここではあまり下車客はいないようで、駅の放送は活発にアナウンスをせずに、再び動き出した。ちなみにだが、この三ノ宮と前駅の大阪は、まだ一応は深夜帯であるから、車内放送は全く流れない。その2駅で降りようとする人は自分でアラームを設定するなどして、細心の注意を払う必要があろう。

神戸の市街を抜けると、今走行している山陽本線は海沿いの区間を進むことになる。それが顕著にあらわれるのが、舞子まいこ付近だ。淡路島とを結ぶ明石海峡大橋が臨める。本土と島を結ぶ橋を眺められるということは、海がかなり近くに来る証左である。朝陽が海に反射して煌びやかで、少し眩しいくらいだ。

そのような風景を楽しみながら、西明石にしあかしまで来ると、”おはよう放送”が始まった。これからは再び車内放送が再開されるという合図である。”おはよう”といいつつも、早くから起きていた私にとっては二度寝をする時間で、すでに寝ぼけ眼になっている。先ほど朝陽をひたすらに浴びたのもあるかもしれない。
というわけで、少し仮眠を取ることにした。姫路が見られないのが少し残念に思えてくるが、岡山のほうが大事だから、また今度の機会にとっておくことにする。

サンライズ号はまさに字面どおりの光景の中を突っ走る。サンライズの旅はまだ終わらない。



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