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レースエンジニアが辿り着いたフィクション小説を読む理由

こんにちは
ドイツレースチームでエンジニアをしている山下です。
僕は今でこそ読書家と言われますが、20歳まで全く本を読まない人間でした。そんな僕が、数年間かかってラスボスである ”フィクション小説" を攻略した、少し変ったロジカルストーリーです。いやー、子供の頃から読んでおけばよかった!!泣笑

*本記事は一度公開した記事に加筆、修正を加えたものになります。

(1) 本を読まなかった小学生-大学生時代

僕は子供の頃から活字情報を、理解、認識することがあまり得意ではないです。小中学生の時は興味も湧かなくて国語のテストの長文が読めないことも多かったです。学生時代の読書感想文の宿題は、次の公式を使い対応してました。

読書感想文 = 裏表紙の概要説明 + おもしろかった!

先生ごめんなさい・・・笑

何より僕は文章を読むのが苦痛で、苦労してまで本を読む理由が見つかりませんでした。そのため読書の楽しさにも気づかずに大学を卒業しました。

(2) ビジネス新書と伝記を読む理由ができた。でもフィクションは読む理由がない

僕は将来、自動車レースエンジニアになることを決めていたので、工学系の大学院に進学しました。大学院1年生になり就職活動が始まる頃、大好きだったマンガの最新刊を買うため僕は本屋に行きました。漫画の新刊コーナーで確認していると、「就活生に伝える人事部長の視点 (タイトルうろ覚え) 」というビジネス新書も横に積まれており、漫画と一緒にその新書を購入しました。

当時、僕には絶対に入社したい会社がありました。それはモータースポーツの最高峰 F1 に参戦している本田技研工業 (HONDA)です。

当時の僕は本は嫌いでしたが、目的があれば読むことが出来ました。例えば、大学に合格するための参考書、プラモデルの改造本などは読めました。今回は就活という目的があったので、そのビジネス書を購入しました。

実はこの本は、僕が初めて完読できた文庫本でした 笑
僕の感想は「他人の視点を学べてすごく役に立つし、おもしろい!」でした。この時に初めて基本的なことに気づきます。

「本には賢い人たちの視点、人生をかけて体験したことが書いてあり、読書により、それを学ぶことがで学ぶことが出来る」

この気づきと就活企業研究にもなるため、僕は創業者、経営者の伝記を読み始めます。

本田宗一郎(HONDA)、盛田 昭夫(ソニー)、土光敏夫 (IHIと東芝)、松下幸之助 (Panasonic) etc...

内容は楽しかったのですが、最初は読書に慣れておらず時間がかかりました。確か1冊読むのに2週間ほどかかりました。それでもなんとか完読することが出来ました。
その中でも「本田宗一郎 夢を力に-私の履歴書 (日経ビジネス人文庫) 」を読んで彼の生き方に感銘を受けました。今でも僕の考え方に大きく影響している本です。

このような理由で、僕はビジネス書と伝記は読めるようになりました。大学院の研究のゼミや学会発表の機会も多く、個人的に説明が下手なので「人に伝わるプレゼン方法」のような、良くあるビジネス書も1年でも30冊くらいは読みました。

(3) 僕が推理小説 (フィクション)を読む理由

大学院卒業後、僕は外資系メーカのモータースポーツ部門でエンジニアとして働き始めました。この時には本嫌いではありませんでした。ただし、推理小説などフィクションのため読む価値はないと思ってました。

なぜなら僕は現実を生きているからフィクションの世界に時間を使うのは無駄なのです! (フィクション好きな皆さまごめんなさい。今は僕も大好きです・・ 苦笑)

就職して2年目、当時僕の部門には憧れていた先輩がいました。その先輩は20歳年上で前職ではWRC (World Rally Championship)という F1 と並ぶレースの世界最高峰のレースで働いた経験のあるエンジニアした。
僕は当時 F1 を目指していたので、その先輩 (の技術レベル) に早く追いつきたくて仕方ありませんでした。システムや製品知識は努力で詰め込み、先輩に負けないレベルになりました。しかし業務を通して、レース現場における経験値の差を痛感することも多かったです。

例えば仕事の一例として、エンジンベンチ(試験場所)でエンジンがトラブルで回らなくなった場合、原因の可能性としては非常に多くの可能性が考えられます。

① 燃料が十分に供給されているか
② 各センサに故障は無いか
③ 各システムに電力はきちんと供給されているか
④ エンジンハードで部品破損や組み違いなどは無いか
⑤ ECUなどソフト系のプログラムやセッティングは間違ってないか
etc...

その中から現時点の状況を考慮し、原因に近しい箇所から順に確認していき真因の目星をつけていきます。このようなプロセスで上述①-⑤などの可能性の洗い出し、現状況と各可能性の判断はやはり経験値がモノをいいます。過去に似たようなトラブルがあった場合はさらに目星がつけやすくなります。このプロセスはお医者さんの診断にも似ている気がします。

経験を積むには時間がかかります。そして僕が経験を積めば先輩も同様です。これではいつ追いつけるか分かりません。

「先輩に追いつくため、経験値を補う能力は何か?」

僕はずっと思考しました。

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僕が導き出した結果は「想像力」です!

つまり上述のプロセスの中で経験不足の場合には、現場で持っている状況、自分の持ちえる知識からトラブルの発生状況を想像して補完するしかないです。

では想像力を鍛えるにはどうしたら良いのか、どんなトレーニングが最適か?
僕はもう一度、考えました。

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「それは推理小説の場面をイメージしながら読んで、犯人をあてる!」

そう、これです、そうなんです(ほんとかよ!?)。
テレビやマンガとは異なり小説は活字以外の情報がありません。圧倒的に情報量が少ないです。限られた情報から状況をイメージして犯人を見つけるプロセスは、上述したトラブルシューティングに似たところがあると思ったのです。

そんな理由で僕はエンジニアとして想像力を向上させるために、推理小説を読み出しました。最初は有名どころの東野圭吾さんの小説から読みました。

結果は
「想像力鍛えるために読んでみたけど普通に楽しい!もっと読みたい!笑」

そこから単純な僕は推理小説にハマり、想像力トレーニング?も兼ねて数ヶ月で100冊以上は読みました。その内50冊くらいは理系作家の森博嗣さんの小説です。「すべてがFになる」はアニメ化もされましたが、何より小説で読んだ時のインパクトはすごかったです。理系の中二病を拗らせた僕にはすごくハマった作家さんです。正直、数冊読み終わったあたりからは想像力はどうでも良くなりました 笑

現在ではフィクション、ノンフィクション関係なく色んな本を読みます。正直、まだ純文学系は苦手で「吾輩は猫である」に挫折しました。それでもいつか読めるようになりたいし、読書は面白いです。読書が好きになって思ったのは、

「自分が創った深い想像の世界に浸ることは楽しい!」

画面、音、文字など情報の多いYoutube、テレビで動画を見ているとこの世界には到達することは難しいです。流れてくる情報量が多すぎて咀嚼する時間がないためです。読書は自分のペースで読める点も良いところだと思います。

僕は回り道をして、ようやく読書家の皆さんが知っている世界にたどり着きました。仕事もあるけど、これからもっと沢山の本を読んでいこうと思います。

おわり


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