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【研修開発秘話】わたしたちができるダイバーシティ&インクルージョン支援

LITALICO発達ナビ「ALLIANCE PROGRAM」では、「障害のない社会をつくる」というビジョン実現のために、サービスの開発サポートだけでなく組織づくりも企画しています。

その一環として、1年半ほどかけて、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)をテーマに各種研修を開発、これまでに計4社様に研修をご提供してまいりました。

なぜLITALICOとして、D&I推進が必要だと考えて研修を進めてきているのかについてはこちらの記事をご覧ください。

このnoteでは、この度実施したD&I研修について、以下の点をまとめています。

・研修にこめた想い
・コンテンツ設計のポイント
・受講者のお声

組織内のD&I推進にご興味をお持ちの方はぜひご覧ください。

【研修をやる理由】組織に「多様性」は本当に必要か

こちらの動画で、白いTシャツを着た人はパスを何回しているか数えてみてください。



正解は、15回です。



ところで、動画の中にゴリラがいたことに気づきましたか?



有名な動画なので、ご存知の方もいらっしゃったかもしれません。
パスの回数を一生懸命数えていた方は、ゴリラがいたことが見えなかったのではないでしょうか。

人は何か物事を見る時に必ず「自分の視点」を持っています。
そして、それ以外の情報の中には「盲点」になっている箇所が必ずあります。これを「認識の盲点」と呼びます。

盲点になっている物事を、自分ひとりの力で見ることはとても難しい。
そしてこの「盲点」は、画一的な人材が集められた組織にも同様に発生します。「組織としての認識の盲点」です。

近年、社会は急速に変化し、不確実性が高まっていると言われています。課題は多様化し、新たな事業価値創造のためには、あらゆる小さな変化、小さな違いに目を向けることが求められるという話は、皆さん当然ご存知だと思います。

そういった時代には、あるひとつの「画一的な視点」だけでは、事業成長のためのアイデアを生み出すことはできません。
組織としての認識の盲点を補うように、多様な視点を組織の中に取り入れる、「認知的多様性」が必要なのです。

D&Iと聞くと、まだまだ「女性活躍」のことだと思われていたり、真の目的はわからないがそういう時代だからやるべきなんだという曖昧な理解がされていたりということも往々にしてあります。

ですが、D&Iは本来、女性のためにやるわけでも、国が言うからやらなきゃいけないわけでもないのです。組織内の「認知的多様性」こそ、これからの企業の価値創造に直結していて、D&Iは組織で働く全ての人に関係しているものなのです。

わたしたちLITALICO発達ナビは、あらゆる人の視点にたつことであたらしいアイデアがうまれたり、今まで取り残されていた課題に目をむけることが、全ての人にとって行きやすい社会に繋がるという考え方を持っています。

そんなわたしたちLITALICOだからこそつくれるD&I研修は何だろうと考え、この「認知的多様性」をキーワードにしながら、受講者のみなさまがなるべく自分事としてとらえられるような、役立つ研修設計に取り組みました。


【研修コンテンツ】D&Iを自分事に近づけるためのポイント

日々自分の職務を全うし、企業成長に貢献しようと努力している企業の社員さんにとっては、「生産性」と「多様性」は相反するように感じることもあると思います。

わたしたちは、そんな立場も想像しながら、
一方的な啓発ではなく、少しでもD&Iが「自分事」に近づくことを目指し、多数のクイズやワークを取り入れながら、研修を設計していきました。

わたしたちがとくにこだわった研修コンテンツのポイントをご紹介します。

1)真のインクルージョンはどんな状態?クイズで体感!

2)あなたの普通はみんなの普通?「障害」はあなたがつくっているかも

3)職場内ケースワークから、アンコンシャスバイアスを探し出す!

4)明日からできる、協力関係を築くためのコミュニケーション実践練習


1)真のインクルージョンはどんな状態?クイズで体感!

谷口真美さん著「ダイバーシティ・マネジメント」の中には、Inclusionに至るまでの4つのステップが示されています。

難しいのは、違いをそのままにしている状態ではインクルージョンとは言えない、ということです。

例えば、
女性向けプロジェクトに安易に女性社員だけをアサインしたり、
ひとりの女性に女性代表の意見を求めたりするようなシチュエーション。
あるいは、
障害者雇用をある特定の部門のみで行っていて、一般部署には全く障害者はいないというパターン。
これは実際によく起こっているのではないでしょうか。

そしてそのような会社の社員さんに聞くと大抵の場合は、
「うちはD&Iを推進できている」というのです。

もちろん、その社員さんが望んでいたり、強みが最も活かされる配属である可能性もあります。

ただ、いくら会社の中に多様な人がいようとも、属性の違いだけでアサインを判断したり、カテゴリーごとの垣根がある状態というのは、本当のインクルージョンとは言えません

これを真に理解することは、慣れない人にとってはとても難しいことです。
そこで、わたしたちの研修では、よくある企業のシチュエーションを例にあげて、これはInclusionに至るまでのどのステップなのかをクイズ形式で考えながら、D&Iの意味の理解や、誤解に気づいてもらうようにしました。

2)あなたの普通はみんなの普通?「障害」はあなたがつくっているかも。

わたしたちLITALICOは、「障害は社会の側にある」と考えています。
障害の「社会モデル」という考え方です。

ここで言う障害とは、身体障害や精神障害のような診断名のことではありません。

・子どもがいるとなかなか出張に行けなくて活躍の機会がない
・足が不自由だが、リモートワークがないので毎日の出社が大変
・部長に男性の育休を理解してもらえず出世が遅れると言われた

これらの体験は全て、周囲が作っている「ハードル=障害」によるものです。

こういった職場のハードルは、多くの場合、そこにいるマジョリティ層によって無意識につくられているもので、その人たちはそれがハードルになり得ることに気づきません。いつのまにか「普通」としてすべての人に押し付けてしまっている可能性があるのです。

そうすると、その「普通」に加われない人にとっては、活躍の機会が奪われたり、本来のパフォーマンスが発揮できなかったりします。
この状況がD&Iを阻害する要因になるということです。

D&Iを推進するためには、全員が、自分が当たり前だと思っている価値観を疑えるようになることが必要です。

ただ、自分が普通だと思っていることをあえて自覚するのは至難の業。
わたしたちの研修では、反対に、自分が過去~現在に「これっておかしいのでは?」と少しでも感じたことのあることを思い出して、グループで共有するワークを通して、自分と人との価値観の違いに気づいてもらうようにしました。自分自身がマイノリティだったときの感情も思い出すことで、いろいろな立場を想像する訓練にもなります。

3)職場内ケースワークで、アンコンシャスバイアスを探し出す!

ここまでD&Iの概念や、必要な考え方を学んだところで、
いよいよ職場での実践編にうつっていきます。

前述した、"あなたにとっての普通・当たり前"に通ずるものとして「アンコンシャス・バイアス」というものがあります。
自分自身では気づいていない、偏ったものの見方のことです。

このアンコンシャス・バイアスには様々な種類がありますが、代表的なものだと以下のようなものがあります。

こういったバイアスは、どんな人にも無意識にそなわってしまっているものであり、それ自体が問題なわけではありません。

大切なことは、自分自身が無意識にバイアスを持っていることそのものに、できるだけ自覚的になることです。

例えばもし、ある管理職が、自分のバイアスに自覚的にならずに、自分自身の価値観だけで部下と接し続けたらどういうことが起こるでしょうか?

・同じパフォーマンスを発揮しているはずなのに、部長と距離が近い社員のほうが評価がされやすい
・子育て中の女性社員を、よかれとおもって出張の機会から外す
・男性社員に日頃から責任感やハードワークをもとめるコミュニケーションをとる

こういったひとつひとつの管理職の行動が、チームの自己効力感を低下させ、パフォーマンスを落としていくことに繋がりかねません。

それを防ぐために、あらゆる人、特に組織への影響力をもっている管理職層は、自分自身の「アンコンシャス・バイアス」に気づけるようになることが必要です。

わたしたちの研修では、「部内MTG」「採用面接」など、実際の職場でのシチュエーションを想定し、バイアスに基づく発言を見つけ出すケースワークを取り入れています。
D&Iの一般的な意味を理解しても、自分の日々の行動に潜む「アンコンシャス・バイアス」にまで自覚しないと改善できませんので、具体性の高いワークを通して、「この発言もしかして自分もしていたかも・・・!」とハッとしてもらう設計にしています。

4)明日からできる、協力関係を築くためのコミュニケーション実践練習

職場や、自分自身に潜む危険なバイアスへの感度を高めたら、最後は一歩進んで、良いコミュニケーションのあり方を学んでいきます。

D&Iが実現している組織には、「心理的安全性」が最も大事といっても過言ではありません。

組織に心理的安全性があれば、多様な事情をもつ人々がそれぞれの立場からおそれることなく意見を出し合い、協力関係を築いていくことができます。そうすることで、違いが活かされ、新しいアイデアもうまれていくのです。

そこでわたしたちはコミュニケーションにおける「否定」「真のYES」という二つをキーワードに、心理的安全性をもたらすコミュニケーションのあり方を学ぶコンテンツを導入しています。

ただここで大事なことは、コミュニケーションはテクニックで全て解決するものではないということです。

一番大事なことはやはり、これまでで記してきた通り、
自分自身の当たり前や普通を疑い、相手の立場や意見をまずうけとめるという姿勢です。

それを理解していただいたうえで、相手が安心して発言できるようなターンの渡し方など、日々のコミュニケーションの支えになるようないくつかの話法をお伝えし、ペアで練習をしてもらう設計になっています。

【研修実施事例】受講者・研修担当者の感想

本研修を受講いただいた方の気づきや感想を一部取り上げたいと思います。

ステレオタイプ脅威によって自己効力感が低下すると言うお話は非常に大事で、自分たちが気づかないうちにやってしまっていないか、これからやらないように気を付けるべき内容であること、それをみんなで共有できたことは大変意義があったと思います。

「認識の盲目」はチャンスロスであり、新しい発想に繋がらない。立場*人種*性別の違いを積極的な傾聴で取り入れることが新しい進化に繋がるものだと認識できた。

自分自身の考え方には多くのbiasがあり、今回の研修でそれに気がつくことができました。

ステレオタイプで物事を考えていると側面があり、自分の考えを改める必要があると認識できた。また女性・ママだと気を使い過ぎて、成長の機会を提供しないのも良くないのだと感じられた。

自分自身が気が付いていない「ものの見方や捉え方の偏り」がある事を学びました。会議や面談、日々のCommunicationにおいて相手の話を良く聞き、言いたい事の本質をしっかりと掴むように心掛けたいと感じています。


【最後に】インクルーシブな組織づくりに向けて私たちができること

各社ではSDGsへの取組も加速し、経団連では2030年までに女性役員比率を30%以上にすることを目標に掲げる取り組みもスタートしており、ますますD&Iへの関心・意欲は高まっています。

冒頭に述べた通り、D&I推進は決して属性の多様化にとどまる話ではありませんが、こういった動きが、これまでの「普通」に加われなかった人々への機会創出になり、「認知的多様性」が実現された組織づくりにつながっていくと良いなと思っています。

社会側がつくってきた「障害」に向き合ってきたわたしたちLITALICO発達ナビだからこそできる形で、いろいろな会社様のD&I推進のご支援をしていけたらと思っております。

研修コンテンツは、各社様の状況に応じたカスタマイズも可能です。
わたしたちの研修に少しでも関心を持ってくださった方は、
ぜひ一度、お問い合わせください。

▼発達ナビ企業アライアンス お問い合わせ
h-navi-ad@litalico.co.jp
 


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