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ナンバー2人物史 黒衣の宰相 太原雪斎

今川義元に参謀として仕え、若き頃の徳川家康に教育を施した太原雪斎。戦国時代がお好きでないとご存じない方も多いかもしれません。

臨済宗の僧侶にして、今川義元の参謀という異色の存在です。後世では、黒衣の宰相、名軍師、名参謀と呼ばれていますが、太原雪斎とはどんな人物で、歴史にどんな影響を与えたのでしょうか。今回は一般的には有名ではないナンバー2、太原雪斎の話です。

■今川家との関り

今川義元というと桶狭間の戦いで織田信長に敗戦した今川家当主で、この戦を制したことで織田信長は天下人への道を邁進する大きな転機となったことで有名です。

さて、太原雪斎(タイゲンセッサイ)ですが、参謀、政治家、僧侶という三足の草鞋を履いた人物で、両親の家系は今川家の重臣であり、今川家と深い縁を持って生まれてきました。(武田信玄の部下、山本勘助とは親戚関係にあります)

家督の後継者候補ではなかった雪斎は小さい頃に仏門に入らされ、僧侶としての修行に励みますが、雪斎の秀才ぶりが当時の今川家当主今川氏親の目に留まり、五男の芳菊丸(のちの今川義元)の養育係の要請を受けました。雪斎24歳、義元4歳の時でした。

■今川家後継者争いで義元を当主にし、自らは参謀として君臨する

雪斎は五男の義元が今川家の当主になるとは夢にも思っていませんでした。今川氏親が亡くなると嫡男の氏輝が今川家当主に就きますが24歳の若さで亡くなってしまいます。その後、今川家では後継者争い(花倉の乱)が起き、結論からいうと雪斎が推薦する義元が当主となります。

義元が幼い時から教育を施し、その義元が当主となったのですから、雪斎の立場は重みが増しました。

雪斎の代表的な功績に以下のようなことがあります。

・今川義元を今川家の当主にしたこと
・今川家の人質になるはずだった松平竹千代(のちの徳川家康)が織田家に拉致されたのを救出したこと
・度重なる戦に総大将として参戦し勝利したこと。
・武田信玄が武田家当主になるために深謀を練ったこと
・武田氏、北条氏、今川氏の甲相駿三国同盟を結んだこと
・幼い頃から竹千代(徳川家康)の教育をしていたこと

これら以外には僧侶として臨済宗の普及を広め、領内における寺社、宗教を統制し、政治家としては在来商人を保護する商業政策なども行い、今川家の最盛期を作り上げました。

■徳川家康への英才教育

雪斎は参謀、軍師として人並外れて優れていましたが、僧侶としての立場も忘れることはありませんでした。

「僧侶としての本分はこの世に生きる人間の本当の幸福を願うこと。そのためにはいい政治が前提として必要であり、いい政治が実現するためには立派な政治家が出現しなければならない。」

「今川家の参謀役を担っているのは今川家が人材不足で、僧侶である自分がたまたま当主の苦手なことを得意としているだけのこと。」

そうであれば将来を託すに足りる人物を見出し、育てなければならないと考えていたところに今川家に人質として連れてこられた竹千代(徳川家康)に天下人としての素質を見出し、8年に渡り、教育を施したそうです。

太原雪斎は織田信長との決戦である桶狭間の戦いの数年前にすでに亡くなっていましたので、もし雪斎が生きており、総大将として参戦したならば今川家の敗北はなかったのではないかとも言われています。

その後、家康は今川家を見限り、織田信長に仕え、最終的に天下人となり、江戸幕府を開いたことは誰もが知っていることで、家康の代表的な愛読書に鎌倉幕府の正史である「吾妻鏡」、「孟子」、中国の兵法書である「六韜三略」がありますが、雪斎の教育の影響が大きかったと言われています。

今川義元を今川家当主に導き、武田信玄を武田家当主にするため画策し、徳川家康に英才教育を施した太原雪斎。彼の存在がなければ歴史は変わっていたと思います。

■歴史の陰に優れた補佐役の存在

人は歴史を見る時に有名な人物の表面的な活躍や出来事ばかりに注目するばかりで、その陰に隠れた存在を知ることはほとんどありません。

織田信長にも、豊臣秀吉にも、そして徳川家康にも雪斎のような歴史に隠れた有能な人物が必ず存在します。

実績を作った人物の陰には必ず有能な参謀や補佐役がいることを知らずに、成功した有名人の表面的な話ばかり信じて、真似しても大成することなどありませんし、その人物の才能を過大評価して近づくと痛い目を見ることも世の中に少なくありませんのでご注意を。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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