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NO.2の育て方 vol.69 社長の言葉が社員に伝わらない理由

ビジョン、目標設定、新規事業の構想など社長が社員に伝えたいことはたくさんあるでしょう。

ところが、会議や朝礼など1対Nで社長が話しても現場の社員にきちんと伝わることは少ないです。

伝わったとしても、理解しているかは別ですし、行動に反映されないと意味がないですから、社長の言葉が社員に伝わらないというのは身近にある難問です。

どうしてこのようなことが起きてしまうのでしょうか。今回は社長の言葉を社員に正しく伝えるための話です。


■社長の言葉が社員に伝わらない理由

①社長の言葉が理解しにくい

社長自身にとって当たり前のことは省略してしまい、簡潔にし過ぎると聞いている社員には具体的に何が言いたいのかよくわからない状態になってしまうことがあります。

言葉遣いひとつとっても社長と社員との間では常識が異なりますから、カタカナの抽象的な言葉や専門的過ぎる言葉など、そもそも言葉の意味が分からないと社員には理解ができません。

また、社長の頭の中ではA→B→C→Dとすでにプロセスが存在していても、それを説明せずに結論や目標だけを述べると社員はどうやって?とモヤモヤしてしまいます。

限られた時間の中で大事なことを伝えるためには工夫が必要です。

②伝言ゲームで不正確な内容で伝わってしまう

会議や朝礼などに参加できない社員は上司や同僚などから社長の言葉を伝聞で聞くことになります。(そもそもその場にいない人にも伝えるというルールや仕組みがない会社もあるでしょう)

人によって言葉の理解、受け止め方は異なりますし、伝える人の恣意的な解釈も含んで伝えられた結果、社長が伝えたかった内容とはかけ離れた内容で伝わることになります。

伝言ゲームで誤った理解をされてかえって社内がまとまらないということも想定する必要があります。

③コミュニケーション手段の問題

多店舗展開をしている、リモートワークをしているといった環境だと社員が一同に集まるということは難しいので、社長の言葉がグループウエアやメール、LINEなどで伝えられることもあるでしょう。

文字で読む方が理解しやすい場合もあるかもしれませんが、そもそも社員が読んでいないことも普通に起こり得ますし、前述したように理解しにくい言葉でメッセージを送っても正確に伝わらない可能性があります。

また、社長がブログやSNSをこまめに更新していてそこにさまざまなメッセージを書いている場合もあります。そして、それを社員に読めと命令している社長さんもいらっしゃいますが、おそらく社員は誰も読んでいないのが実態だと思われます。

④信頼性の問題

社長が発するメッセージに自己矛盾が含まれていると社員は真剣に受け止めることはありません。

日頃から社長が言ってることとやってることの乖離が激しいと社員からは「どの口が言ってるのか?」と白けさせたり、怒りを感じさせることになります。

信頼関係のない人の話は素直に、真面目に聞けないというのは社長と社員の関係だけでなく人間としては当然の対応かもしれません。

社長は他人から指摘されない立場なので、なかなか自分の日頃の言動に問題があることを気づけないこともあります。

メンターを持つか、内省する習慣をつけるか、諫言役をあえて設けるなどしないとこの点については改善されることはないかもしれません。

⑤社長の自己満足

社長だから社員に発信し続けるという姿勢は素晴らしいですし、大事なアクションです。特に経営理念などは繰り返し繰り返し伝えていかないと浸透していきません。

ただ、気を付けないといけないのは発信するということが目的となっていて、受け手である社員に理解、納得してもらうための工夫が足りない場合です。

「自分は何度も何度も同じ話をしているのに社員がやる気がなくて馬鹿だから理解しない」と嘆く社長もいるかもしれませんが、どちらの責任なのでしょうか。(こういう社長さんは私もお客様にしたいと思いません)

自分が話したいように話して理解しない相手が悪いと考えるのであればお客様が存在するビジネス自体が危うくなってしまうのではないかとも思われます。

■社長の言葉を社員に正確に伝える方法

ではどうしたら社員に正確に考えや思いが伝わるのでしょうか。簡単に言ってしまえば、伝わらない原因の逆をすればいいということではあります。

伝わらない原因は以下のようなことでした。

・社長の言葉が理解しにくい
・伝言ゲームで不正確な内容で伝わってしまう
・コミュニケーション手段の問題
・信頼性の問題
・社長の自己満足

・言葉を選ぶ

まずは自分の言葉遣いに注意し、専門用語や抽象的な言葉を避け、簡潔な表現を心がけることです。例え話を入れるなどして具体的なイメージがわくように話すことで社員は理解しやすくなります。

社員に対してそんな面倒なことと思うかもしれませんが、そう思っている限り社員に理解や納得を促すことはおそらくできないと思います。

普段接する人の中にもこちらがわからない言葉で説明を続ける人がいるとしましょう。どんな気持ちになりますか?イライラしたり、途中から真剣に話を聞く気も失せるのではないでしょうか。

まして、自分がお客様にセールスする時などそういう姿勢で臨んでいたら売れるものも売れないと思います。

社員を身内と考えて、雑な話し方やついつい前提の話を省略してしまったり、共通言語でない言葉を使ったりしてしまうこともあるかもしれませんが、社員は「母さん、アレ持って来て」で通じる相手ではありません。大事な話をする時ほど丁寧にわかりやすく言葉を選んだ方が良いです。

・伝言ゲームにさせない工夫

伝言ゲームになってしまう恐れに対しては、

・文書で残す
・文書で残す際にも資料を添えるなどして理解しやすい工夫をする
・誰でも読み返すできるように回覧やグループウエアなどに残す
・社員からの確認は社長の意図や考えを理解している経営幹部にさせるなど信頼性の高いルートを確立する
・理解しているかどうかを社員に確認する

こうした対応が有効です。

伝える内容にもよるかもしれませんが、その場で聞いた言葉をずっと覚えているというのは難しいものです。大事なことほど記録に残すべきです。

・コミュニケーションツールの活用方法を見直す

コミュニケーション手段の問題に対しても同様の工夫が必要です。

・既読かどうかがわかる方法を選ぶ
・リアクションさせるとしても簡単にする
(「承知しました」とかスタンプにするなど)
・読んで欲しいメッセージがあるなら、どこで読めるのかを明確にする
・社員全員が利用しているツールを利用する
・不明な点を確認する問い合わせ先を作る

さて、ここまでは業務的な連絡や指示を想定した対応を述べてきました。

・信頼関係と社員に対する向き合い方を見直す

ビジョンや組織作りなどマインドに大きく関わることを伝えるためにはもう少し工夫や努力が必要になってきます。

その根幹にあるのは、

社長と社員との間の信頼関係社員に対する向き合い方です。

社員から見て信頼できない社長というのは言ってることとやってることが異なります。

・ビジョンやお客様や品質の大切さを説いていても、結局は売上のことしか興味がないのが丸わかりなこと
・社員に求めることを自分は守らないこと
・社員に空手形ばかり切って約束を守るつもりがないこと
・社員の意見に全く耳を傾けないこと
・必要な情報を開示しない、共有しないこと
・必要な経費をケチること
・法律を守らないこと
・社員を大切にしないこと
・挨拶ができない、間違った時に謝れない、感謝できないこと

どうでしょうか。社長にとっては耳の痛い話かもしれませんし、会社員の方には社長あるあるかもしれません。

社員に大事なことを伝え、理解してもらう、行動してもらうための前提条件として信頼関係を築くというのは当たり前のことのように感じられますが、なかなかどうしてこれができない社長は多いです。

信頼できない人の話をちゃんと聞かない理由は、心理学的にもいくつかの要因が考えられます。

信頼の欠如
信頼できないと感じる人に対しては、その人の話を信じることが難しくなります。過去の経験や行動によって信頼性が低くなったり、嘘をつく傾向があると認識している場合、その人の話を受け入れることが困難になるでしょう。

認知的バイアス
人は、自分と同じ意見や価値観を持つ人の話を受け入れやすい傾向があります。信頼できない人とは異なる意見や情報を持つ場合、それを拒絶しやすくなることがあります。これは「同調圧」や「認知的一貫性の原理」として知られています。

防御機制
信頼できない人の話を受け入れることで、自分自身が傷つく可能性や不快な真実に直面する可能性があると感じることがあります。このような不快な感情から逃れるために、無意識のうちに防御機制が働き、その人の話を無視したり、否定したりすることがあります。

とても不思議なことのひとつに、業績がよくビジネスの才能は長けているのに社員に対しては手を抜く社長です。

ビジネスの才能がある社長はマーケティングをよく理解されています。

・見込み客に関心を持ってもらい、その数を増やす方法
・クロージングする方法
・リピーターとなってもらう方法

こうしたことは顧客心理を理解し、さまざまな手段、方法を用いて実現できることですが、なぜ社員の心理は読まないのか、適切な手段、方法を考えないのかということです。

そこには雇用に基づく上下関係があり、身内意識があるからだと思いますが、社員も見込み客と同様に赤の他人ですから、「くどくど言わなくてもわかるだろ?」はやっぱり通用しません。そこには無意識で社員に対する甘えがあるのかもしれません。

そして、繰り返しになりますが、前提として信頼関係が必要です。

逆に、伝え方が拙くても、多少雑でも、信頼関係があれば社員の方から積極的に意図を読み取ろうとするものです。

・経営幹部に通訳してもらう

社長の言葉を社員に正確に伝えるための方法をお伝えしてきましたが、もうひとつお伝えしたいことがあります。

「自分の意図や計画、ビジョンを社員に伝えるにはもうひと工夫必要だというのはわかったけれど、これらを自分ひとりでやるのか?忙しくてとてもできない」という疑問に対してのアドバイスです。

簡単に言うと、経営幹部に通訳してもらうことです。

社長と密接に関わっている経営幹部であれば、社長の意図することを正確に理解できるでしょう。

彼らに社長の言葉足らずの部分を補ってもらい、現場の社員に理解しやすい言葉に置き換え、ルールやツールの活用も併せて任せてしまうことです。

ただし、注意する点があります。

社長の意図することは理解できても、社長の代わりに上から目線で社員に伝えるようなことがあれば社員からの反発が起きますので、経営幹部のうち通訳を任せるのも人選が必要ということです。

「社長がああ仰ってるのだから、お前らわかったな」みたいなどこかのブラック企業の茶坊主ではダメだということです。

理想は、現場の状況を把握したうえで、内容によっては社員にとって厳しい話であっても希望や期待を持たせて努力させる言葉を使える人を選ぶことです。

そして、また疑問が浮かんできたと思います。

「そんな経営幹部はウチの会社にいない」

だからこそ経営幹部を育てることを考えてみて欲しいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございます。


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