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【読書メモ】糖尿病が怖いので、最新情報を取材してみた

健康は人類共通の、個人としての永遠の課題である。健康寿命を有意義に全うするためにも、自らの健康管理に一定のリソースを割かなければならないことは明白だ。

本書はタイトルの通り、糖尿病に関する最新情報が記されている。自分の健康のためのリスク管理として、いくつかメモしておく。


糖尿病は「サイレントキラー」

糖尿病は怖い。その理由に「サイレントキラー」がある。自覚症状なく、健康診断などで初めて気づく。そして、一度糖尿病になるとなかなか完治しない。生涯治療を続けなければならないかもしれない。合併症を発症すれば、失明や足の切断、人工透析など深刻な事態に陥りやすい。

一方で、糖尿病は予防効果が大きい。糖尿病には食事や運動、睡眠など生活習慣の乱れが大きく関与しており、これを改善すれば防げる、あるいは現状をキープすることがができる。

糖尿病に対するインスリンの働き

糖尿病を一言で言うと、膵臓から分泌されるホルモンのインスリンが十分に働かないために血液中のブドウ糖(血糖)が増える病気である。

インスリンがなければ人間の体は血糖値を一定に保つことができない。インスリンがブドウ糖を筋肉や肝臓などに運ぶ(その後、エネルギー源として利用・消費される)。また余ったブドウ糖をグリコーゲンにして筋肉や肝臓に貯蔵したり、脂肪に変えたりする。アジア人はインスリンの分泌能が欧米人に比して低く、太るよりも先に糖尿病になりやすいそうだ。

なぜ血糖値が高いと体に悪いのか

飲食によって取り込まれた糖質は、小腸で分解されてブドウ糖となり、吸収される。そして血流に乗って全身を巡る。この血液中のブドウ糖(グルコース)が血糖であり、その濃度を示したのが血糖値である。血糖値は飲食のたびに上がり、約1時間後に上昇のピークを迎える。元の状態に下がり切るのは、食後2〜3時間後程度。食後に血糖値が上昇し始めると、膵臓からインスリンが分泌され、インスリンの作用によってブドウ糖は細胞に取り込まれ、我々の生きていくエネルギー源となる。血糖値が高いということは、この機能が損なわれていることを意味しており、高血糖は「酸化」と「糖化」を引き起こす。

老化の最大要因である「酸化」と「糖化」

血液中に糖が溢れ、血管壁の最内腔(内膜)を構成する内皮細胞に入り込む際、活性酸素を発生させ、内皮細胞を攻撃する。これが「酸化(細胞の劣化)」であり、全身の血管にダメージが蓄積し、動脈硬化などの血管の老化を早めるのである。

活性酸素は、呼吸によって体内に取り入れた酸素を用いて、エネルギーを作る過程などで発生する副産物で、酸素より強力な酸化力を有する。過食、激しい運動、ストレス、喫煙、炎症、紫外線、大気汚染、食品添加物などでも生じる。活性酸素は通常、体内に侵入してきた病原体などを殺すという、体に有益な働きをしているが、増えすぎると血管だけでなく全身の正常な細胞やDNAを酸化させる。酸化した細胞は本来を失い、老化を早めていく。

高血糖により糖が内皮細胞内のタンパク質と結合することを「糖化」という。糖化は細胞を焦げ付いたような状態に変質させ、臓器の機能低下をもたらす。空腹時や食後の高血糖状態を「糖代謝異常」と呼び、この状態でも血管の障害は始まっており、放置すると糖尿病の発症につながる。

高血糖が慢性化すると、血管にダメージが蓄積され血流が悪くなり、免疫細胞の活動が衰え、新型コロナウイルスなど感染症の重症化を招きやすくなる。

糖尿病の診断基準

下記4項目の組み合わせで診断される。

①HbA1c; 6.5%以上、②空腹時血糖値; 126mg/dl以上、③随時血糖値; 200mg/dl以上、④75g経口ブドウ糖負荷試験の血糖値; 200mg/dl以上

①は血液中の赤血球に存在するタンパク質のヘモグロビンが血液中の余分な糖と結合したもの(糖化ヘモグロビン)。②は朝食を摂らない空腹状態(8時間以上の絶食)、③は食後から時間を問わず測定したもの、④は一時的に高血糖状態にして一定時間後の血糖値である。ただし、上記はあくまで万人向けの指標であり、この基準値は政府や製薬会社のロビー活動で変更されることもある。個人の診断結果から、自分に合った指標を設定しよう。

糖尿病になりやすい人の生活習慣

食事の回数や時間が不規則、早食い・大食い、ご飯や麺類を好む、スイーツや甘いものを好む、糖分を多く含む清涼飲料水をよく飲む、お酒の過飲傾向がある、起床・就寝時間が不規則、慢性的な睡眠不足、喫煙習慣、運動不足、ストレスが大きい

該当項目が1個以上あると、糖尿病体質に移行しやすいという。現代人で1つも該当しない人は少ないのではないだろうか。

血糖値スパイク

血糖値(グルコース・スパイク)スパイクとは食後、短時間に血糖値が急激に上昇する現象のことである。本来インスリンが分泌されるはずが、糖尿病やその予備軍の方は分泌が間に合わず遅れ、血糖値が急上昇する。その後分泌されたインスリンにより、今度は血糖値が急激に下がっていく。急激な血糖値の変化は血管にも悪影響を与え、放置しておくと血管が痛み、動脈硬化が進みやすくなる。血糖値スパイクが常態化すると、老化を早める糖化はどんどん進んでいき、糖尿病(や心筋梗塞)の原因となる。

肥満と糖尿病

摂取カロリーが消費カロリーを上回ると余分なカロリーは脂肪として脂肪細胞に蓄積される。皮膚と筋肉の間に蓄えられる皮下脂肪(女性型)と、皮下脂肪に蓄えることができず胃や腸など臓器の周囲に付着する内臓脂肪(男性型)がある。内臓脂肪が増えすぎるとインスリンの効きが悪くなったり、炎症が引き起こされる。しかし皮下脂肪ではこの炎症は起こらない。

血糖値の経時モニタリングにトライ

本書を読み終えた後、自分の血糖値レベルと、食後に血糖値がスパイクするかを検査してみたくなり、血糖値の経時変化モニタリングにトライした。FreeStyleリブレセンサーというものを体に埋め込んで使ってみた。これは糖尿病患者の体内のグルコースをリアルタイムで計測するために用いられる医療機器だが、一般の方もワンクリックで入手できる。

こちらはその一例である。緑の枠内が正常範囲内で、12:00頃の昼食の後、20:00頃の夕食の後でグルコース値が上昇している。

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一方、夕食に麺類とご飯ものと言う炭水化物コンボの誘惑に負けてしまった結果がこちら。20:00頃の夕食後に数値が急上昇しており、血糖値スパイクが起きている。糖質の過剰摂取や飽食、悪食に明け暮れると、結果が目に見えて表れるのが面白い。

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すなわちこれを使用することで、自分の体にあった正しい食事というものが可視化できる。多様性が叫ばれる今の時代、正しい食事も当然人によって異なる。体に良いと喧伝されている食べ物が、実は自分の体には合っていなかったということが数値で判断できるのだ。ウエアラブルという言葉が跋扈しているが、時代は装着を超えて埋め込みになろうとしている。

所感

全ての健康に繋がる話であり、食事や運動、睡眠など一番基本的なことが一番大切だということだ。食べる順番(野菜→タンパク質→糖類)や、運動の強度や時間、枕の種類や起床後の日光浴、就寝前のスマホ禁止など、細かいことも書かれており、参考にしてみることも悪くないだろう。ただしそれが自分の体に合っているかどうかは、自ら人体実験をして試してみるべきだ。そしてどのように予防するかも大事だが、まずはなぜ糖尿病になるのかを理解し、自分の生活習慣管理に努めよう。

なお、著者の堀江貴文氏が発案した予防医療プロジェクトにおいて、安価な価格で簡易検査キット(胃がんの発がん物質のピロリ菌検査や、糖尿病リスク検査)が提供されている。これを使って定期的に検査しつつ、グルコースモニターを使って自分に合った食材を見つけていこう。





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