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短歌など

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短歌連作 「コレクション」

鉛筆が捨てられないと泣いていたあの子は春の桶屋の下僕

食卓に堅揚げポテトが仁を成すこころの声を聞かせてご覧

バタフライ・エフェクトバタフライ・エフェクト羽ばたけばそら、羽ばたけば空

コメントが700いいねいくように見つめられたら笑うしかない

グレンラガン歯を犠牲にして見たけれど小松菜奈から暮れの伝言

猶予のU

王さまのお墓に刻む文字のようレンジでパスタ作れる容器

あなたは意気地なしなんじゃなくて賢いの王冠柄のズボンとスカート

瞼って字の右側が顔っぽい 笑って話すきみにふれたい

寝ているか死んでいるかを確実に見分けるために寝息はあって

石付きを落とせば軽い半夏生きのこのようにそこに座れり

吹いたらば音が天まで届くだろう道枝くんのまっすぐな骨

心から同情したい アラームに眠り続ける優しい夫

過去に作った短歌①

市バスから転がり落ちて立ちつくす家出を決めたぬいぐるみたち

大阪が一望できる窓辺にて通天閣がかわいく光る

体からアクセサリーを逃がしてく処刑前夜の王女みたいに

菜の花はとりわけ名前のない花で 無欲だ いいや いいや 無欲だ

ブランコがまあるく揺れる元気かと何度も聞かれほほえんでいる

あの姿からかさおばけみたいだな電信柱の陰で笑った

大雪が降ってうまれた国もあるチーズケーキを等分に切る

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平均台

糖質の低いアイスを作るため海行くくらい日焼け止め塗る

使うもの・捨てたら呪われそうなもの・使わないもの・捨てられないもの

手紙から匂いがどんどん消えていきついには消えてしまった手紙

暴力はみんなのものだエイズさえ笑いに変えるキャメロン・ディアス

ベランダが青紫に染まりきり雨ざあざあの有休消化

マコちゃんの刑務所

二十二の頃より増えた体重を不在届が追い越してゆく

空想は昼寝の中にあらわれて うさぎが二匹 子供はいない

昨日まで完璧な世界だったのに。夫が痰を吐く音きらい

マコちゃんは情熱大陸終わっても諦めないで空を見ている

目に見えているものだけが真実だよ いま、欲望のない世界へ

運命の息づかいが聞こえる

難しい道を辿ってきた
もっとやるべきことが 他にあったかもしれないけど
旗のような 電灯のような
高いところから
なにかに見下ろされている気がして

夢中になること
自分の存在を
だれかに知ってもらうために 声を出すこと

さみしさは心を滅ぼすだろう
でも もし心がなかったとしたら
梯子のない出口の前で
立ちつくすことを 選ぶだろう
見ていない景色のことは わからない

街の音が聞こえる
車がブレ

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chicken pot

だいたいのパーティーソングはラブソング弓の形に女を見立てて

逮捕しがいがなさそうだね太陽を浴びて育ったトマトみたいに

ポロシャツは貴族以外も着れるから百科事典はあてにならない

あら不思議ひも体質を改善するXbox 360ね

ショーケース貸してください貸してもらう前よりきれいにして返すから

おやすみが帰ってこない寝室で二匹のネコがダンスを踊る

信号を左に曲がると街中から嫌われているデリカ

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赤いレンズ

すり減るだけすり減っただけ、それだけの指を弔うiPhoneの月

虹彩の場所を必死で見せているどこから来たか答えられずに

玄関の明かりをつけて眠る夜 金魚は死んだら天国にゆく?

駅のない街の男に乳飲み子のごとく抱かれているアコーディオン

図書室で体のしくみ学ぶとき赤いレンズがこっちを見ている

夕暮れの電話ボックス訪ねれば受話器を伝う小さな世界

生まれなかったかもしれない日記

春は春に生まれて死んだ植物の花びらたちが流れ着く場所

乗り換えの人ごみに落ちているハンカチ助けたくても助けられない

夕飯を摂ったら眠るだけの家 この先もっと忙しくなる

一つ間違えれば成り代わられるだろう指紋だらけのスマートフォンに

とりあえず今日を終わらせればいいと繰り返す手に通勤定期

友達を増やそうとしても増やそうとしても触られたくないとこばっかりだ

永遠は誰も知らない所で燃える 死

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忘れたくないこと

雨雲が歩く気力を奪う日はビニール傘が私を運ぶ

車窓よりスカイツリーを見送って北総線の高さ思へり

人ごみを誰にも見つからないように泳いでいたいひとりぼっちで

誠実ということだけは伝わるが モデルルームで虹は見れない

吹けば飛ぶような景色に立ち止まりあなたは歌う旅人の目で

あの曲のデモ音源なのかもしれないひょうたん山を吹き渡る風

風が鳴る耳にイヤフォン押し込んでしばしあなたの音楽を聴く

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ハクビシン

駐車場に降り立って息をする風になれたらどんなにいいか

長距離ドライバーは不幸だ この先もずっと 長距離ドライバーは不幸だ

もろもろの愛しい車の窓辺からアイスピックで砕くビル街

ガードレールが水道橋に見えてきた ケセラセラ ぶっ飛ばしてけ

A4のすばらしい絵画の廊下カップくわえてほっつき歩く

金輪際チャリのパクりはあきまへん 鏡は銀河 雌ネズミ揚げ

ハクビシン夜になったらどの街もただの色

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