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「24分のX」・・・6 親友。連続超ショートストーリー

○「24分のX」(6)

「美晴~ランチ一緒に食べよう~」

幼馴染で親友のユキが20メートル向こうから声を掛けてくる。

ユキは、昔からこうだ。何も隠さない性格なのだ。

美晴は手を振って、自分の座っているベンチを少し空けた。

ユキは付き合う彼氏を
すぐに美晴に紹介し、
告白から初デート、初のお泊まりまで逐一報告してきた。
それは、プロポーズから結婚するまでも同じだった。

そして、結婚後の愚痴も。

「最近、ウチの旦那、どうも怪しいのよね。夜遅くまで帰らないことが増えたし、スマホもよくいじってるし。心配だわ…」

ユキは、お弁当の包みを膝に乗せながらぼやいた。

美晴はいつもと同じように笑いながら答える。

「そうなの? まあ、浮気相手が分かったら、こう言ってやれば良いのよ。
『泥棒猫なんて絶対幸せになれないわ』てね」

「いいわね、それ」

「もっとあるわよ。『私のお下がりで喜んでるなんてレベルが低いわね』
とか、『懺悔の値打ちも無い。一生リサイクルの墓場で生きていけ!』とかね」

「キャハハ。リサイクルの墓場って可笑しい! ありがとう。美晴はいつもそうやって助けてくれるから好き。
私の悩みに寄り添ってくれるただ一人の親友。私と出会ってくれて
本当に感謝してるわ」

「いつでも話を聞くから。何でも言って・・・」

美晴は思っていた。

彼女は出会ったことをいつか後悔するだろう。
そして、今日教えた悪口を、ユキが私に言う日が来る。

せめて、その日まで、彼女と仲良く過ごそう。
幼馴染として、親友として、彼女を支えよう。

「さあ。食べよう。今日は好きなものばっかり詰め込んで来たんだ。
美晴も好きな物があったら食べてね」

「うん。好きな物頂くわ」

そう言ってから美晴は自分の言葉に戸惑った。

『今の言葉、過去形で言うべきかな。もう既に...』

それは匂わせすぎだろう、と思って止めた。

ユキが弁当箱の蓋を開けた。

課長と同じ赤い弁当箱の。

(つづく)

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