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「謎のドリンク」・・・妻が買ってきたあやしい飲み物。ちなみにホラーではありません。


「ねえ。何の味だか分かる?」

妻が嬉しそうな顔をして、緑色の水が入ったコップを目の前に置いた。

町中で変なドリンクを見つけては私に飲ませるのが、妻の趣味なのだ。

私には、サド的好奇心を満たしているだけに思えるが、夫婦円満のために我慢をしている。もちろん「我慢」などと口にするのはご法度だ。ご機嫌が斜めどころか急降下してしまう。

多少変な味を我慢するくらいは何でもない。

と言っても、妻の味覚が異常という訳ではない。彼女の作る料理は本当に美味しくて、外食など考えられないほどだ。手前みそやのろけの類ではないことを宣言してから言うけれど、素晴らしく美味い。

さて、話を戻そう。

近所に「ハラル」のお店があることは知っていた。
中東で一般的な厳しい戒律によって定められた食材のお店である。

妻は、前々からそこに行ってみたかったらしいのだが、昨日買い物ついでに思い立ち、寄ってみたらしい。

一歩店に入ると、知らない食べ物や飲み物がずらりと並んでいたという。
そこで彼女はもう、「楽しい!」となり、好奇心がバク上がりしたのである。

手はじめに、日本では見かけない珍しい缶ジュースを大量に購入した。
写真は、その一部。右端から「パッションフルーツ」「ペニーワート」「グアバ」「ロンガン」だという。

パッションフルーツもグアバも分かる。
ロンガンは、以前海外で飲んだことがある、ライチに似た果実だ。

で、残るは右から二番目のペニーワートのジュース。
ペニーワートって何だ?
と思っているところに、冒頭のセリフである。 

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「ねえ。何の味だか分かる?」

こんな時、俺はまず飲んでみる。

友人の中には、レストランや居酒屋などで出された食事や飲み物でも、知らない物には、拒否反応を示す女がいる。正体が分かるまで絶対に口にしないのだ。
以前、そいつにチャイ(インド風の更新料を使った紅茶)の試飲をさせたことがある。
まだチャイが一般に知られていない時代。
会社で輸入して日本人に受けるかどうか、ニュートラルな偏見の無い意見を聞きたかったのだが、
彼女はかたくなに飲むのを拒んだ。

「食わず嫌いしないで、とにかく一口飲んでみてよ」

と言って、こちらの意図を伝えても、チャイを口にすることは無かった。
香りが受け付けないらしい。
ちなみに、その彼女は、付けているパフュームがきつめで、味が分からなくなるからと、すし屋から追い出されたことがある。

それはともかく、俺は何も考えず、とりあえず飲んでみることにした。
まさか飲んでお腹を壊すようなものを店が出すわけがないし、
妻もそのあたりは分かっているのだろう。

海外の飲み物、缶ジュースの例にもれず、とても甘い。
だが思ったより青臭くは無い。


「これ、ちょっとミルクに混ぜてみたら、どうだろう」

俺の提案に、妻は嬉しそうに頷き、冷蔵庫からパックの牛乳を持ってきた。
この程度の味変は、お互いに大好きなのだ。
予想通り、ペニーワートのジュースは良い感じの甘さになった。
抹茶羊羹やういろうのような印象だ。

「良いね」

二人で緑の缶ジュースを飲み干してから調べてみた。

ペニーワートは、「セイヨウチドメグサ(西洋血止め草)」。
出血時に、傷口に塗ると血止めの効果があるらしい。

実際の傷に効くかどうかは分からないが、
おかげで、夫婦仲に日々の刺激を与えてくれる。

変わった味の飲み物、食べ物は、我が家では、大歓迎なのだ。

         おわり


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