大阪弁の女子高生のみずみずしさが感動的

この作品を読まれたのは、俳優の濱口みほりさん。

高校生のみずみずしい感じが出ていて、本当に感動的でした。
一緒に放課後の教室に居るような気分になりました。
お聞き逃しの方は、想像しながらお読みください。

「ラジオde怪談」来週もよろしくお願いします。

＊一部加筆しています。

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「生活シンクロ・放課後のお告げ」

私たち西高水泳部のシンクロチーム６人は、
どこへ行くにも何をするにも、いつも一緒だ。

それは、チームワークを最も重要視するシンクロナイズドスイミング、
今はアーティスティックスイミングと呼ばれる、
このスポーツに携わる者たちの常である。

「競技中だけやないで、日常生活もシンクロさせるくらい
プライベートでも一緒に体を動かすんや。
お互いの所作や筋肉の使い方、可動範囲の限界などを理解せなあかんぞ」

コーチは毎日のように、『共に生きろ』と口にし、
女子高生だった私たちは、それを真面目に実践した。

放課後のクラブ活動や授業で教室を移動する時、果てはトイレに行く時まで
タイミングを合わせ、６人の間には奇妙な緊張感さえ漂い、
同級生も声を掛けずらい雰囲気だった。

ついには、授業中に先生に差された時に６人が同時に立ち上がって答え、
６人とも試験で同じ解答を出すようになってしまった。

さすがにこれは、先生の間で問題になり、コーチともども行き過ぎた練習だと追及され、生活でのシンクロ活動は禁止されそうになった。

しかし、私たちは怯まなかった。

「お願いします。大会までの間だけ、もう少しだけ続けさせてください」

先生たちの前で、チームのシンクロ度がかつてないほど高まっている事や
もうこの機会を逃すと次が無い事を説明し、
授業に影響が出ない範囲で、という条件付きで許して貰った。

その後、私たちの生活シンクロは少し大人しくなった。
授業中は目で合図を送り合うくらいにして、
休憩時間や放課後に限って、共に過ごすようにした。
合わせる時間の少なさは、微妙な違和感を生んでいく。
私たちは焦り、練習に力を注いだ。

そんなある日、プールの清掃が入るという事で練習が休みになり、
放課後、ぽっかりと時間が空いてしまった。

コーチからは

「休みの時は体をしっかり休めろや」

と言われたが、私たち６人は放課後教室に集まっていた。
ただ練習もせず、ぼーっと休んでしまえるほどの余裕は、
６人には無かったのである。

「ねえ。せっかくやから、みんなで心を一つにする事せえへん？」

私はポケットから十円玉を取り出した。

「何すんの？」

「こっくりさんや」

「え～怖いやん」

「いや、オモロイわ。オモロイけど、ウチやった事ないで」

「大丈夫やて、やり方は簡単やから」

こっくり賛成派の美穂、ひまり、芽以、そして私が
気乗りがしないと言う澪夏とリンを説得し、
チーム初のシンクロこっくりさんをやる事になった。

難しいことはしない、
A３サイズの画用紙に、五十音表と０から９までの数字、
Yes Noを書き、その上に十円玉を置いて全員が人差し指を置いて
聞きたいことを尋ねるというオーソドックスな方法だ。

五十音表の上に十円玉を置いて、私は言った。

「ほな。皆ええか？　心を一つに合わせるんやで」

６人は手をつなぎ、呼吸を合わせた。
初めてのこっくりさん。誰も緊張しているのが分かった。

以前は互いに主張が激しく、息を合わせるのが難しかったが、
ここ数か月の訓練の賜物で、自然と呼吸のタイミングを合わせる
癖がついている。

『これなら、大会も大丈夫かもしれない。
練習の為に生活をシンクロさせていると、どうしてもストレスが溜まる。
だから、時々遊びや楽しいことを一緒にするのが良いと思ったのだ。
今日放課後に、みんなで残ったのは正解だったかもしれない』

私は大会への手ごたえを感じていた。

その気持ちが通じたのか、みんなの顔を少し紅潮して
心がときめいているように思える。

「さあ。いくで。３，２，１」

私たちは一斉に手を伸ばして、十円玉に指を乗せようとした。
しかし、十円玉は、６本の指が乗るには小さすぎた。

真っ直ぐに伸びるように指先まで鍛えぬいた６人の人差し指は、
ガチガチガチッとぶつかり合い、ある指は別の指と絡み合い、
ある指は弾けるように画用紙の上を滑り、
全ての指が十円玉から外れてしまった。

「いった～い」

「何やってんのよ～」

「おっかし～」

「なんで今まで誰も気づかへんの～。
こんなちっちゃいコインに指６本も乗る訳ないやん」

「アホやな～ウチら」

「バハハハハ」

私たちは大笑いした。

もうこっくりさんなど、どうでも良かった。
不思議な事に、気持ちはすっきりとしていた。

そして、これからは今まで以上に心が通じ合っていくような気がした。

その時、私はひとり、五十音表の上の十円玉が気になっていた。

誰も触れていない十円玉が、五十音表の上をさささっと動き、
ある言葉を提示したような気がしたのだ。

その文字は、

『ゆ・う・し・よ・う』だった。

優勝かな、それとも友情かな。

どっちでも良い、そんな事に頼らなくても
私たち６人は最強なのだから。

　　　　　　　　　　　　　　　　おわり

怪談、というより、青春。
怖いだけじゃないんです。
読み手のキャラによって、とても

この作品、ラインアップを紹介する時に、MCの清原さんも、私もなぜか、「生活アプリ」だとタイトルを勘違いしていて、
一部にはそのまま出てしまったのもあるのですが、
本編もMCトークも、語りはちゃんと「生活シンクロ」で読んでいるのに
全く不思議です。

では、来週も。ラインアップなどは
清原愛さんのフェイスブックなどでご確認ください。

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