見出し画像

「十字路」・・・あっという間に読める超ショート怪談。楽しいはずのドライブは。


彼氏との初めてのドライブデート。
絶景の観光地を巡って、美味しい郷土料理を食べて、
帰路についた。
そして、私たちの乗った車は、森の中の道を随分と長く走っている。
日が西に傾き始めて、少し霧が出てきた。

「また十字路ね」

言いかけた言葉を私は飲み込んだ。

ハンドル握る彼氏の顔が真っ青で目が血走っていた。

無理もない、
さっきから七回も、同じ十字路を通っているのだから。

この道から抜け出すことが出来るのだろうか、
霧がどんどんと濃くなっていく。

行き交う車もいつしかいなくなってしまった。

はたして道の上にいるのかさえも、も分からなくなった。

その時、私は気が付いた。
いつの間にか、この十字路に来れた事で、
ほっとしている自分がいることを。

「もしかしたら抜けられなくなってる?」

八回目の十字路で、耐え切れなくなった私は、ついに聞いてしまった。

彼氏がこちらを向き、
見たことも無いような笑顔を浮かべて答えた。

「え? 抜けるつもりだったの? イヒヒヒ」

         おわり

*「十字路」改訂版

#朗読 #ドライブ #怪談 #デート #彼女 #ショート #不思議 #小説 #十字路 #謎 #秘密 #霧 #抜け出せない

ありがとうございます。はげみになります。そしてサポートして頂いたお金は、新作の取材のサポートなどに使わせていただきます。新作をお楽しみにしていてください。よろしくお願いします。