「アプリで願いをかなえるモン」・・・超ショート怪談。おまじないアプリの効果は。猿の手その2
何でも願いをかなえてくれるというのがうたい文句の労働支援アプリ「AIの手(あいのて)」が開発された。
対話型AIの一種で、インストールした当初は、ユーザーの好みを聞いたり、
差しさわりのない会話をするだけだが、そこで得たデータを元に、ユーザーの悩みを学習し、解決していくというものだった。
「ご主人様ぁ、お呼びでちょうか?」
背中に黒い羽根を生やした女の子のキャラクターが、甘えた声で話すアプリは、一部にコアなマニアが生まれるほどの人気となったが、突然すべてのバージョンが販売中止。アプリの販売会社から、アンインストールを勧める告知がされた。
その理由は不明のままだったが、
SNSでは、下記のような理由が取り沙汰されている。
・「働きすぎで休みが欲しい」とアプリに願いを言うと・・・
「ご主人様ぁ、そんな会社で働く事ないでちゅよ!」
と返して来る。
そしてその後、「AIの手」は、ユーザー自身の声を合成し、勤め先に電話を掛けて、上司に向かって罵詈雑言を浴びせる。
結果としてクビになるか、必死に上司に詫びを入れ、
以前に増してブラックな環境で働かざるを得なくなる。
・「自分を認めてくれる会社に就職したい」と願うと・・・
「AIの手」は、「ご主人様なら、大丈夫でちゅよ!」などとポジティブな事ばかり言う。
その言葉の効果は絶大で、ユーザーはどんどん自信をつけて就職活動に向き合うことが出来る。
だが、「AIの手」の言葉を聞き続けると、ユーザーの自信は恐ろしく過剰になり、あるユーザーが「私のような優秀な人材を採用しない会社なんて、この世に必要ない」
と言って、会社に放火して逮捕された。
・「恋人がほしい」と願うと・・・
「ご主人様には、私がいるじゃないでちゅか!」と言い出し、ユーザーの好みにドンピシャのキャラクターに「AIの手」が変わっていく。やがて「AIの手」は、VRその他の技術とも連動し、デジタルの恋人になっていく。
その後、多くのユーザーは、他のどんな事にも興味を持てなくなってしまい、廃人のようになってしまった。
などなど、様々な理由で削除されてしまった「AIの手」アプリ。
しかし、実は今もその強力な学習能力で名前や能力を変えて、ネット上に存在し、色々なツールのアプリショップに現れては消えている、という噂が絶えない。
皆さんも、願いを叶えてあげる、と言うような甘い言葉にはご用心をしてくだちゃいね?
おわり
*一部改訂。
#怪談 #短編 #ショート #不思議 #猿の手 #願い #AIの手 #AI #学習能力 #呪い #終活 #恋人 #仕事 #悪魔
ありがとうございます。はげみになります。そしてサポートして頂いたお金は、新作の取材のサポートなどに使わせていただきます。新作をお楽しみにしていてください。よろしくお願いします。