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時代が人を作る! 「手紙 届かなかったラブレター」(作・演出=得丸伸二)


「手紙」の文章でドラマを語る、というのは比較的よく使われる手であるが、この作品は登場人物の小さな家庭的な話題に終始するだけではない。
昭和25年から現在(もしくはそれに近い時間)までの大きな歴史のうねりに翻弄される「男と女の無垢な魂の記録」であり、男女の「人格形成」がなされていく過程が手紙の朗読の中で如実に描かれていく作品である。
それは、ある意味「この国の人格形成」を見せられているようにも思えるのだ。


さらに言うなら、人は年表のように綺麗に成長していくわけではない。早く歳を取る瞬間もあれば、ゆっくりと成長する時間もある。
二人の役者は、それら「人生における選択の結果」と「人としての成長スピードの違い」を、心地よい朗読の切り返しで見せてくれる。


時に相手を下から支えるように、時に上から檄を飛ばす様が、互いを思いやりながら関係が入れ替わっていき、物語を引っ張る力が生まれていた。
時折唐突と思える展開も「人物の成長や転機はセオリー通りには行かないもの」と思い至れば、至極当然に見えてくる。


終演後に出演者が「このご時世に、危険を冒してまで観に来て頂きありがとうございます」と語った挨拶が、まさに今の時代を象徴し、物語に引けを取らないドラマのエピローグになった、と感じるのは私だけだったろうか。
「人の人格とは、多くの困難に立ち向かい、あるいは立ち向かわなかった無数の選択の結果である」と言われる。時代の困難が人を作るとしたら「今」はどんな人を作り未来を作るのだろう。


荻窪 オメガ東京にて、TBスタジオ企画「手紙 届かなかったラブレター」(作・演出=得丸伸二)は、出演者が毎回変わるという趣向で、21日月曜日まで。

蛇足であるが、このオメガ東京という会場、1階がダイニングになっていて、定食や丼物もあり、安くて美味い。芝居が無い時でも是非訪れて頂きたい。

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