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ボールの動きを制御することで生まれる現象【コーチングログ#12】

新シーズンがスタートし指導する学年も変更となりました。昨シーズンはU-8を指導していましたが今シーズンからU-10を指導することになりました。試合でのプレイヤーの人数が増えたり、ピッチサイズが大きくなったりと大きな変化があるので、以前よりもやや複雑なことを落とし込んでいかなければいけません。

今週の練習は熱波によってイギリスで気温が上昇した影響で、週2回あるうちの1回が中止となってしまいました。

普段は火曜日の練習を私がメインで指導し、木曜日の練習をもう1人のコーチがメインで指導する形で回しているのですが、火曜日の練習がなくなってしまったので木曜日の練習では2人で分担して行うこととなりました。木曜日の練習で私が担当したのはスモールサイドゲームと呼ばれる紅白戦のパートでした。今回のコーチングログでは練習で行ったスモールサイドゲームについて振り返りながらお話ししたいと思います。

練習メニュー

この日の練習は週末の試合の準備として4局面(ボール保持、ボール非保持、ポジティブ&ネガティヴトランジション)がテーマでした。特にボールを保持している時のオフザボールの動きがこのチームは課題としているので、どうやってボールホルダーに対して選択肢を与えてあげられるかに意識が向くような練習メニューを作りました。また、火曜日の練習が中止になったこともあり、少し強度の高い練習を意識して行いました。

1. ウォームアップ: ハンドボール(15分)

・2チームに分ける
・5回連続で手投げでパスを回した後にシューターへラストパスを出して、シューターは足でシュート。
・4つのゴールのどれかに決めれば得点。
・22×40ヤード

キーファクター
・ボディーコーディネーションの向上
・コミュニケーション
・パス回しの距離と立ち位置
・ボールを貰う動き

2. 高強度ロンド(20分)

①鬼(DF)1人
・2チームに分ける
・各チームから1人ディフェンダーとして相手チームに行き、ボールを奪う
・ディフェンダーがボールを奪ったら上下どちらかのミニゴールへシュートし、決めれば2ポイント
・ボールを保持しているチーム(アタッカー)はパスを5本回せば1ポイント
・30秒×6セット
・22×40ヤード

②鬼を2人に増やす
・30秒×6セット

キーファクター
・ファーストタッチ
・パスの質(精度、スピード、ゴロ)
・プレスの強度とスピード
・パスの角度
・認知と判断

3. 2vs2+1フリーマン(20分)

①条件なし
・2チームに分ける
・各チームから2人ずつ出てきてプレイ
・攻める方向のミニーゴールの間にいるフリーマンを味方として使うことができる
・攻める方向にある2つのミニーゴールのどちらかに決めれば1点
・ボールが外に出るかゴールが決まれば次の選手たちがプレイする
・22×40ヤード

②フリーマンを使ってからでないとシュートを打つことができない

キーファクター
・パス&ゴー
・数的優位
・オフザボールの動き
・1vs1
・チャレンジ&カバー

4. スモールサイドゲーム(35分)

・2チームに分ける
・44×40ヤード
・7vs7
・ピッチを4つのゾーンに分割
・10分×3セット

①&②前方へのパスは1つ前のゾーンにのみパスをすることができる。ロングボールなどでゾーンを飛ばすのは禁止。
③シュートは必ずダイレクト、①と②での条件は撤廃

キーファクター
・パス&ゴー
・追い越す動き(オーバーラップ、インナーラップ)
・運動量
・コンビネーション(ワンツー)
・パスの質(精度、スピード、ゴロ)
・パスの角度
・アタッキングサード内でのラストパス

良かったところ

まずは練習のテーマである4局面がどの練習メニューでも起こるような練習のレイアウトだったので、自然と4局面が繋がる練習ができたので良かったです。トランジションがない練習ではどうしても試合のリアリティが欠けてしまうので、試合の準備としてリアリティのある練習ができたことは良かったと思います。

また、練習の強度も丁度良い高さで練習ができたと思います。2vs2+1の練習では縦幅と横幅がいい距離感でした。ピッチ内の選手の数は4人なので、これよりも縦に長いと負荷が高すぎてしまいますし、ボールを奪ってからのカウンターでも攻撃に時間がかかりすぎてしまうので、縦が22ヤードは良い長さだったと思います。

チームの課題であるオフザボールの動きですが、今日の練習では選手達が積極的に動かないとボールを貰えない、パスの出しどころが無くなるような練習の構造だったので多くのオフザボールの動きがありました。最後のスモールサイドゲームではピッチを4分割にして条件をつけたことで、周りの選手が動いて選択肢を作らないと攻められないような構造でした。

とりあえず1セット目は選手達にアドバイスをせずにやらせてみましたが、やはり上手くいきません。ですが、これは想定内で今のチームの現状です。そして、1セット目と2セット目のセット間で「どうしたら前進できるのか」、どうしたらボールホルダーに選択肢を与えてあげられるか」という話をしました。そこからはオーバーラップ、インナーラップ、ワンツーなど様々な動きが見られるようになり、全体が活性化しました。

最後の3セット目でシュートはダイレクトという条件だけつけてゲームをしましたが、後ろから追い越してボールを受ける選手がいたり、それを防ごうと前線の選手が長い距離をリカバリーしたりと攻守において相乗効果が見られました。

課題

今回は私がメインで指導したスモールサイドゲームでの課題についてです。まずは1セット目は選手達にアドバイスをせずにとりあえずプレイさせてみることにしましたが、上手くいかないまま12分(1セット)を使ってしまいました。コーチが簡単に答えを与えてしまうよりも、まずは選手達自身で攻略法を探すこと、自分たちで解決策を模索する時間は大切だと思っているので1セット目はアドバイスを送りませんでした。ですが、練習の質は落ちてしまっているので、考える時間と練習の効果を天秤にかける必要があると思いました。例えば、1セット目の時間設定を短めに設定して、上手くいかない時間を減らすなどの工夫があっても良かったと思います。

私の指導する上での一番の課題はフリーズでのコーチングだと思っていて、フリーズのタイミング、頻度、シチュエーション、伝える内容、簡潔でわかりやすい表現などはまだまだ磨き上げる必要があると感じています。フリーズでのコーチングは非常に影響力のあるコーチングなので、効果的に使うことができれば選手に良いアプローチができると思います。

このスモールサイドゲームでもいくつか気になったことがありました。例えば選手たちが隠れた立ち位置でボールを受けようとしていることやボール保持時に全体的に窮屈になっていたり、広がりすぎていたりとプレイを止めて介入した方が良かったかもしれない場面がありました。フリーズを効果的に使うために、プレイの観察力を上げることと直感的にフリーズを入れていく勇気が必要です。

総括

この日の練習はテーマ設定が上手くいき、テーマとマッチした一貫性のあるトレーニングを行うことができました。練習のレイアウトも素晴らしくスムーズに次の練習メニューに移行することができました。全体的に良い流れで練習を進めることができたと思います。

スモールサイドゲームでは引き出したかった現象が生まれたことは良かったと思います。狙って現象を引き出すことは難しく、思い通りにいかないことも多々ありますが、この日の練習ではレイアウトや構造がうまくいったので思い通りの現象を見ることができました。

チームとしてはまだまだ理想からは程遠いのが現状で、インサイドキックやファーストタッチなどの基礎技術の部分であったり、サッカーでは基本的な動く、味方を助ける、頑張って戻るなどのスタンダードが低いので、そういったエリアにもアプローチかけていく必要があると思っています。ですが、まだ私がこの学年を指導を始めて2週間なので上手くいかないのは当たり前で時間がかかると思います。焦れずにじっくり丁寧に時間をかけて1つひとつ身につけて成長していき、シーズンが終わる頃には素晴らしいチームになっていればいいなと思っています。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

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